Happy New Year!!
まだ太陽がその姿を現しておらず、山が少し白み始めたか、というその頃。
ほとんどの者たちがまだ夢の中を漂っているその時が、料理を生業とする者たちの活動開始時間である。
中央公園のほど近く。大通りのすぐ脇に、生鮮食料品ばかりを取り扱う問屋街はあった。
マティーノの刻がライラの刻に変わる頃に店を開け、ルヒティンの刻にはもう閉めてしまう。一般の客でなく、店を持ち商売をしているものを対象とした店たちだ。
「それにしてもケイトさん、今日は早起きでしたね」
まるでそこだけ別世界のように活気溢れる町並みを歩いているのは、真昼の月亭の看板娘、アカネ・サフランと、昨日から滞在しているカトリーヌ・ウォン・カプラン。
小柄で華奢な、どこから見ても普通の少女であるアカネと、大柄な体にさらに大きなかごを背負い、赤褐色の肌に特徴的な「炎の爪痕」が走るケイトが並んで歩く様子は、どうにもアンバランスな心地がする。
アカネの言葉に、ケイトは嬉しそうに頷いた。
「そりゃあそうさ!皆さんが来る新年会とあっちゃ、酒に酔った体で料理をするわけにはいかないからね!」
「ああ、そういえば昨日はお酒を飲んでなかったですよね」
得心が行ったように、アカネ。
ケイトはうんうんと頷いた。
「そうさ。料理は買い出しから!いい材料を見極めて安く仕入れるのも、料理人の腕のうちさね。仕入れをサボってうまい料理を作れる訳がないよ!」
「ふふふ。ケイトさんのお料理、楽しみにしていますね」
アカネとケイトは楽しそうに連れ立って歩きながら、さまざまな食材を仕入れていった。
「おっちゃん、今日で店仕舞いだろ?もうちょっとマケてくれたってバチは当たらないんじゃないかい?」
「これ以上負けるのかい?そんなこといったらうちぁ年越せなくなっちまうよ」
「そんなこといったって、これが売れ残ったら丸損だろ?ちっとでも負けてくれりゃその分の金は入るんだ。勉強しとくれよ〜」
「ん〜姐さんにゃかなわないね!じゃあ…大負けに負けて銀貨2枚!」
「銀貨1枚銅貨5枚!」
「おいおい、そりゃあんまりだろ。銀貨1枚と銅貨9枚!」
「銀貨1枚銅貨8枚!これ以上は譲れないね!」
「あーもう、姐さんには負けたよ!持って行きやがれ!」
やけくそ気味に言って、野菜をケイトのかごの中に入れる主人。
「いや〜悪いねぇ♪んじゃ良い御年を!」
ケイトは上機嫌で代金を払う。
アカネが感心したようにため息をついた。
「はぁ〜…すごいんですねえ、ケイトさん」
「このくらい朝飯前さ。なんだい、アカネさんは仕入れで値段交渉したことないのかい?」
ケイトが訊くと、アカネはにこりと笑った。
「そうですね。だって皆さん、私が何も言わなくても……………れば…………てくれますから」
「…えっ?すまないね、ちょっと周りがうるさくてよく聞こえなかったんだけど」
「さ、じゃあ行きましょうケイトさん」
「ちょ、ちょっとアカネさん?肝心なところが聞こえないといろいろ想像してヤなんだけど、アカネさーん?!」
ルヒティンの刻・真昼の月亭へ
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