Happy New Year!!
「ミケさんミケさん、見てくださいこれ!カニさんが水槽の中踊ってますよ!」
「あーはいはい、よかったですね」
「もー、何でそんなにつれないんですかミケさん!キューティクルですか?!このキューティクルがあなたをそうさせるんですか?!」
「髪を引っ張らないでください訳がわかりません!つうかいい加減帰ってくださいよ、チャカさんはどうしたんですか!」
「あらん、ミケさん妬いてるんですか?」
「妬いてません!ここであなたを焼き魚にしてやりたいですけどね!」
「うふふ、だいぶ壊れてきましたねミケさん、酔ってます?」
「あなたがさっき僕のウーロン茶とウーロンハイをすり替えたんじゃないですかー!!」
酒の入ったミケとリリィの漫才を、レティシアが傍らでハラハラしながら見守っている。
もうすぐマティーノの刻。新年の鐘が鳴ってしまう。
外からは花火の音が聞こえ、通りの喧騒も一段と高まっている。
どん、どどん。
花火の音が鳴るたびに、焦りを増すレティシア。
しかし、リリィに気後れをしてしまって、どうしても一言がかけられないでいる。
そんなことを言っている間に。
どん。
ひときわ大きな花火の音が、窓枠がカタカタと揺れるほどに響き渡った。
それが引き金となったように。
「も………いいから……表に出ろーーーーーっ!」
ミケが険しい表情でネクタイを緩め、敬語さえ忘れてリリィに向かって怒鳴りつける。
ごーん……ごーん……
と同時に、新年の鐘が高らかに鳴り響いた。
「あ………あああぁぁ……」
がくり、と膝をつくレティシア。
リリィはにこりと微笑むと、ミケの手を引いて入り口に向かった。
「はい、望むところです。じゃ、ミケさん、お外ででぇとしましょうね〜」
「デートじゃありません!」
「はいはい、判りましたから。私達のデートは、いつも攻撃魔法の応酬に始まって終わるんですよね」
なおも言い争いをしながら、入り口から出て行く二人。
「そ……そんなあぁぁぁ……」
後には、がっくりとうなだれるレティシアが残された。
「……うん…?…寝ていたのか…」
「……大丈夫?」
アルディアが体を起こすと、窓際にいたジルが問いかけた。
「ああ、少し酔ったかもしれない。もう、新年になったのか?」
「……まだ、だよ……今、花火が鳴ってる」
窓から外を見るジルに倣って、傍らに行き、同じように空を見上げるアルディア。
「ほう、綺麗なものだな」
後ろから何やらケンカの声が聞こえるが…アルディアとジルは静かに大空に咲く大輪の花を見守った。
ごーん…ごーん…
やがて、新年の鐘が鳴り響き、同時にちらちらと雪が降り始める。
「………」
「………」
ジルもアルディアも、ただ無言でそれを見守った。
外で何やら爆発音のようなものも聞こえたが、2人は動じることなくじっと雪を見ている。
「………エレーナ……」
ジルがポツリと呟き、アルディアがそちらを向いた。
「うん?何か言ったか、ジル?」
ジルは窓の外を見たまま、うわごとのように言った。
「……ううん、なんでもない…」
そして、アルディアの方を見て。
「…あけまして、おめでとう」
「…ああ。新年おめでとう」
無表情の2人の表情が、ほんの少しだけ緩んだ。
ごーん…ごーん…
新年の鐘に誘われるように、裏口から外へ出たコンドルは、降り出した雪を放心したように見上げた。
「あ……雪だ……」
「よっ、コンドルさん。あけましておめでとう」
と、横から声をかけられ、驚いてそちらを見るコンドル。
「け、ケイトさん……」
「料理ももういいだろ。ちょっと休もうかと思ってねえ。
風が冷たいと思ってたけど、降り始めたねぇ……ホワイト・ニューイヤーだね」
豪快に笑うケイトに、コンドルは控えめにはにかむ。
ケイトは店の中から持ち出したであろうグラスを空に向かって掲げると、上機嫌で言った。
「ハッピー・ニュー・イヤー!
新年に乾杯♪ってね」
そうして、そのままそのグラスを呷る。
コンドルはそれを笑顔で見守って、そうしてから手を組んだ。
「いい年になりますように」
祈るようにそう言って。
へちゅっ。
唐突にくしゃみをしたコンドルに、ケイトが笑った。
「寒いからね。さ、風邪引かないうちに戻って休もうか」
「そ、そうします」
再び、2人は裏口から真昼の月亭に戻っていった。
エピローグへ
全体マップに戻る