予告状

「次の満月の夜、あなたの一番大切なものを頂きに上がります」

近頃、ヴィーダを賑わせている、一人の女性がいた。
といっても、彼女の顔も、名前も、誰一人知る者はいない。
女性である、と言うのも、満月を背にした美しいシルエットから見る者が勝手に判断したようなものである。
彼女は正体不明、神出鬼没。どこからか華麗に現れては、幾十人の警備網を煙に巻いて目当ての物を奪い去って行く。
大胆不敵な予告状。
華麗であざやかな身のこなし。
そして、謎のヴェールに包まれた素顔。
決まって満月の夜に現れる彼女を、いつしか人々はこう呼んだ。

「怪盗…ムーンシャイン?」

王宮御用達の貿易商人のもとに突然舞い込んだ予告状。
彼は自分の宝を守るために、自警団ではなく腕の立つ冒険者を雇った。
「自警団はあてにならんからな」
彼はそう言うが、彼が自警団を雇わないのは、何か別の理由があるらしいようで…

冒険者たちは、彼の宝を守りきることが出来るのか?
貿易商人の家に隠された秘密とは?
そして、怪盗ムーンシャインの正体は?
彼女の目的はいったい何なのか?

「…んふふふっ。楽しみにしてたのよ、アナタ達と遊ぶの♪」

…そして、最も手強い敵が、冒険者たちの行く手に立ちはだかる。

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