予告

「文化祭………?」

また何を言い始めたのかという顔で、カイは掲示板の張り紙を見上げた。
事務局が書いたであろうきれいな文字で、文化祭の概要が淡々と綴られている。
「一日魔法教室、図書館開放、各種模擬店、ステージ…後夜祭、か」
「魔法教室とか以外はふつーの文化祭ねぇ」
隣にいたパスティも同じように張り紙を見上げる。
「あたしは普通の学校行ったことないけど、そうなの?」
「そうよぉ。パスティねぇ、ジュニアハイでやった文化祭で、カフェをやったのよ。お客さんいっぱい来て、楽しかったのー」
「へえ。カフェ。ほかにはどんなことをやるの?」
「そうねぇ、お化け屋敷とかー、フリマとかー、クレーブ屋さんとかー、手作り雑貨屋さんとかー、コスプレ喫茶とかー」
「あっもういいです。…ステージって言うのは?」
「ステージよぉ。お芝居やったりー、お歌うたったりー、漫才したりー、ダンスしたりー、オタ芸したりー」
「おたげー?」
「ミルカちゃんに訊いたら詳しく答えてくれるわよー」
「その一言で聞く気なくしたわ。なるほどね。後夜祭っていうのは何をするの?」
「お祭りを振り返って余韻に浸るみたいな?キャンプファイアーやってフォークダンス踊るのが一般的だと思うわー」
「ふむ」
カイはひとつ唸って、率直な感想を述べた。
「魔法学校なのに魔法関係ないね」
「まあたまにはこういうのもいいんじゃなーい?パスティ、楽しそうだと思うわよぉ」
対するパスティはうきうきした様子で張り紙の続きに目をやる。
「学外参加OKだってー」
「学外参加?お客さんとして来てくれるんでしょ?」
「ううんー、原則として自由参加だからー、やる側も、お友達とかの協力を求めていいんだってー。
冒険者とかを雇うのも、予算と裁量の範囲内でOKらしいわよー」
「へえ、それはちょっと珍しいね」
それを聞いて、カイの表情がちょっと興味深げなものになる。
パスティはそれを見逃さず、カイに微笑みかけた。
「うふふ、カイちゃん、パスティちょっとやってみたいわ?」
「しょうがないね」
カイは苦笑して、校舎の方を見た。

「ちょっと、みんなに声かけてみましょうか」

フェアルーフ王立魔道士養成学校で行われる文化祭。
魔法とはちっとも関係なさそうなこのお祭りで、何かが始まってしまう……かも、しれない?

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