予告
フルーの第15日。
この日は年に一度、水の女神フルーがこの世とあの世を繋ぐ河を作り出し、その河を通って死者が帰ってくる日なのだという。
死者の魂は蝶の姿を取り、河を通って帰ってくる。生前親しかった者を訪れ、平穏に暮らしていることを確認してまた死者の世界に帰っていくのだ。
と、言われている。
「もうすぐ、洸蝶祭だね」
その女性は、どこか遠い目をして、そう呟いた。
窓の外では、洸蝶祭の準備だろうか、花のランプを飾る人々の姿があちこちに見られ、まもなく訪れる祭りの気配に浮き足立っているように見えた。
「あなたは蝶になって現れるのかな。それとも……」
その言葉の続きは、言葉に出されることなく空に消えていく。
何かを諦めたような、諦めきれないような、切なげな表情で。
彼女は何かをじっとこらえるように目を閉じていたが、やがておもむろに目を開き、くるりと踵を返した。
ぱたん。
無人の部屋に、ドアを閉める乾いた音だけが響く。
彼女は半ば駆けるような足取りで、大通りへと向かった。
大通りの中央、たくさんの冒険者が集う、「風花亭」へ。
人を探しています
半年前、モンスター退治の依頼を受けて出発したまま、
行方がわからなくなった男性を探しています。
彼の後を追い、生死を確かめてください。
生きているなら、可能であるならば、連れ戻してください。
死んでいるのであれば、その証を持ち帰ってください。
どちらの結末であるにしろ、報酬はお支払いします。
チェル・ハイナ