予告

洸蝶祭、という祭りがある。

フルーの第15日。
この日は年に一度、水の女神フルーがこの世とあの世を繋ぐ河を作り出し、その河を通って死者が帰ってくる日なのだという。
死者の魂は蝶の姿を取り、河を通って帰ってくる。生前親しかった者を訪れ、平穏に暮らしていることを確認してまた死者の世界に帰っていくのだ。

人々は、フラワーランプと呼ばれる、蝶の寄ってくる花をかたどったランプを軒先に飾り、死者の魂が迷うことなく自分の家を訪れることが出来るようにする。街中が色とりどりの花のランプで彩られ、帰ってきた死者をもてなすために美味しい料理が作られ、幸せであることを示すために楽しく歌い、踊る。

しかし、この世とあの世が繋がるということは、あの世から死者の魂だけでなく、異形の魔物もやってきてしまう、ということだ。
人々は魔物の狙いから逃れるため、魔物の装束を着て街を闊歩する。
自らが魔物になれば、魔物に狙われることはない、という寸法だ。

フルーの第15日。
人々は花のランプを飾り、魔物の装束を着て、賑やかに歌い、踊る。
街はランプの明かりと美味しい料理の屋台であふれ、一晩中、楽しい祭りの音楽が響き渡る。

死者の魂が姿を変えた、はかなく光る蝶の宴。
年に一度、この世ならぬ世界と繋がる日。

この日、一体あなたに、何が起こるのだろうか。

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