プロローグ -クルム-
「クルムは、年末年始は家に帰らないの?」
食事の片づけをしているときに不意にそんなことを訊かれ、クルムはきょとんとした。
手際よく食器を洗いながら訊いたのは、クルムがヴィーダで下宿している「ネルソン商会」店主の娘、アリシア。一児の母ながらも若々しく家内を切り盛りする、気風のいい肝っ玉母さんだ。
クルムは言われたことを飲み込むと、にこりと微笑んだ。
「うん。オレの家…いや、家って言っても正確には育ててくれた師匠の家なんだけど…
イストーク様は、年末は兄弟子たちと一緒に付き合いのある魔道士たちのパーティーに呼ばれたりして忙しくて、館にはいないことが多いんだ」
「はぁ~、大変なのねえ。魔道士っていうのも」
縁が無い世界だからか、判ったような判らないような反応を返すアリシア。
クルムは頷いて、続けた。
「うん。だから、年末年始はこっちにいて、イストーク様の様子が落ち着いたら、年始のご挨拶に伺おうと思ってる」
「そう。じゃあ、40日のバザー、ちょっと手伝ってくれないかしら?」
「40日のバザーっていうと、新年祭の?」
「ええ。うちの店も出店するから、私がマルセルを連れて行くつもりなの。予定が無いなら、ちょっと手伝ってもらえないかしら」
「もちろん。じゃあ、その日は予定、空けとくね」
「ありがと。ああそうだ、私今からニューイヤーカードを書くけど、クルムもどう?」
突然方向転換したアリシアの話に、再びきょとんとするクルム。
「ニューイヤーカード?」
首をひねるクルムに、アリシアは水仕事を終えた手をタオルで拭き、そのまま近くにかけてあった小物入れから一枚の紙を引き出す。
「そう。新年祭の前後に、今年を共に過ごした感謝と、来年を共に過ごすことへの希望の気持ちをカードに書いて送るのよ。ヴィーダ市街ならすぐ届くし、遠くでも最近は魔術師ギルドで転送サービスをしているそうだから、今から出せば間に合うんじゃない?」
「…間に合う、って…?」
アリシアの言葉の意味を量りかねて問うと、アリシアは意味深な笑みを浮かべた。
「テアに。今年一年、お世話になったでしょう?」
「テアに…」
テア…システィア・フォルナートは、クルムと同じく、ここで下宿して魔道学校に通っている少女である。つい先日、故郷の村に里帰りしてしまって、ここにはいない。
アリシアの含みを持たせたような言葉もクルムにはあまり通じていないようだった。素直に微笑むと、頷く。
「そうだね。テアにも…お世話になったみんなにも出すことにするよ。カード、余ってるのある?」
アリシアは自分の含みが通じなかったのを少し残念そうに苦笑すると、小物入れのカードの束を取り出した。
「ええ、クルムの分も取ってあるわよ。さ、書きましょうか」
プロローグ -ミケ-
「そうか……もう、年末なんですね」
ミケは町並みを眺めながら、ふ、と目を細めてマフラーを巻き直した。
冒険者として依頼を受けるのとは別の、アルバイト先での買出しの途中。
年の瀬に追い込まれるように、あちこちを駆けていく人の波。
新年の準備にと、さまざまな商品を売り込む人々の声。
それだけのことが、不思議と心を浮き立たせる。
「ニューイヤーパーティー、エミリーちゃんとマーくんも呼んでね!絶対よ!」
「はいはい。じゃあ、パーティーの飾り付けを買いに行きましょうね」
「ケーキの予約もするの!あとねえ、あとねえ……」
嬉しそうにはしゃぎながら通り過ぎていく親子連れ。
寒いのに、目に映る光景はとても幸せそうで。暖かそうで。
そうして、彼はふと、何かを思いついたように目をしばたたかせ。
楽しそうに、微笑んだ。
その日の夕方。
真昼の月亭に一枚の張り紙が張り出された。
新年会のお誘い
みんなで一緒に、新年を迎えてみませんか?
真昼の月亭で、大晦日の夕刻よりスタート。
バイキング形式で料理と飲み物は用意します。
参加費銀貨2枚。一品持ちよりで。
何か一芸披露できるとなお結構です。
また、料理と準備のお手伝いも募集します。
……この場合は参加費無料で。
是非是非、ご参加ください♪
参加希望の方は、この張り紙の下にメッセージをお願いします。
ミーケン・デ=ピース
プロローグ -リィナ-
「よーっと!うん、これで完了~っ。新年の準備、ばっちりだね!」
最後の飾りをつけ終えて、リィナは満足そうに微笑んでてをパンパンとはたいた。
脚立の下のロッシュが、にこりと笑って例を言う。
「お手伝いありがとうございます、リィナさん。これで、こちらの準備はあらかた出来ましたね。お疲れ様でした」
「ううん~、居候させてもらってる身だし、これくらいはしないとね!」
元気に返事をすると、ロッシュはまたにこりと微笑む。
リィナが居候している「白銀のイルカ亭」。冒険者よりも行商人が多く集まるこの宿は、新年祭には大勢の行商人でごった返すことだろう。そのため、新年の準備を早く済ませておく必要があった。
40日に先駆けて新年の準備を終え、あとは新年祭を迎えるのみだ。
「リィナさんは、40日はお知り合いとパーティーがあるのでしたね?」
「え?ああうん、なんか夕方から夜通しって感じみたいだけどね」
ミケからのニューイヤーカードをごそごそと取り出して、パーティーの詳細を確認する。
「そうですか。当日はここも忙しくなると思いますし、リィナさんは賑わった町でも歩いてきてはどうですか?いろいろ、出店なんかも出るようですよ。中央公園ではバザーもやるそうですし」
「え、ホント?そうだな~、んじゃそうするね!」
リィナはうきうきと、やがて訪れる新年祭に思いを馳せた。
プロローグ -アルディア-
「パスカ病の治療薬…か。これは、なかなか骨の折れそうな仕事だな。新年に間に合うかどうか…」
アルディアは、依頼書を見て嘆息した。
「そこを何とか、お願いしますよ。ディストさんにしか頼めないんですよ、こんな仕事~」
依頼を持ってきた青年は、そう言って情けなさそうな笑みを浮かべる。
「どこも新年の準備で忙しいってのに、こんなに手に入りにくい薬を年内に作ってくれってんだもんなぁ…もうどこ行っても断られて、ディストさんが最後の頼みの綱なんですよ!お願いします!」
ぱん、と手を合わせられ懇願されて。そういえばこの青年はナノクニの出身であったな、などとどうでもいいことが頭に浮かぶ。
依頼の詳細が書かれた紙を見下ろし、ふぅ、とため息をついて。
「…判った。何とかやってみよう。39日までに薬草の採取を終えれば…また、森に入る必要があるが」
「ホントですか?!いやー助かりました!ここを落とすとウチも痛いんすよねー。どこも世知辛いもんす」
安堵して胸を撫で下ろす青年。アルディアは苦笑すると、傍らに置いておいた胴当てを取った。
「そうと決まれば、早速材料の調達に行ってこよう。ぎりぎりの仕事だ、薬が出来たら私が直接依頼主の元へ届けるが、それでいいな?」
「はい、もちろんす!そのあとに、こちらにも連絡をいただければ」
「無論だ。では、行ってくる」
慣れた手つきで胴当てを体に装着すると、アルディアは颯爽と宿を後にした。
プロローグ -コンドル-
「し、新年会……が、あるんです、か…?ミーケン・デ=ピースって…えと、ミケ、さん…」
逗留先の真昼の月亭で、掲示板に張られていた張り紙を見ながら、コンドルはアカネに言った。
ミケは先日依頼を共にした仲間だ。あまり親しくしたこともなかったが、明晰な頭脳と大胆な行動力はコンドルにとっても信頼を置くに十分な人物である。
「はい、そうなんですよ~」
アカネは嬉しそうに頷いた。
「ミケさんが主催で、ここを貸切で。食べ物は持ち寄りで、一芸披露とかもあって。楽しいものになりそうですよ~」
「え、えと……食べ物か……ぼ、ボク、料理できないし、ど、どうしよう…」
困ったように言うコンドルに、アカネはにこりと微笑みかけた。
「注文してくだされば、私が作っておきますよ。こういうのは、参加しようっていう気持ちが大事なんですから」
「そ、そうですか…?じゃ、じゃあ、とろとろオニオンスープと……カスタードパイだったものを…」
「コンドルさん、それ好きですね」
「え、えへへ……」
プロローグ -オルーカ-
「マターネルスの第40日に…です、か」
目の前の依頼主から言われた事を、多少面食らった様子でオルーカは反復した。
きっちりとした調度品が揃い、本人もきっちりとした服に身を包んだ、清潔そうな印象のある紳士。それが、今回のオルーカの依頼主だった。
レスター・ウィルウッド。男爵の地位を持ち、貿易商としての実績も高い。文句なしの貴族だ。
彼はゆっくりと頷いた。
「…はい。仕事の方が立て込んでおりまして…年末は新年の準備で家のものも忙しいですし、里帰りをするものもいて…あの子の…レオナの面倒を見る者が必要なのですよ。
母親のいないあの子に、不自由や寂しい思いをさせたくないのです」
「ウィルウッドさん…」
ならば、誰よりもあなたが側にいてあげるべきでは?
喉まで出かかった言葉を飲み込むオルーカ。
彼はそれを察したのか、少し寂しげに苦笑した。
「仰りたいことは解ります。本来なら、私が共にレオナと過ごすべきなのでしょう。
しかし、妻からあの子を託された以上、私にはあの子を何不自由なく養う責任がある。
その為にも、私が仕事を放棄するわけには行かないのです」
彼の言うことはもっともだ。
しかし、オルーカの思うこともまた、人として当然のことなのだと思う。
が、これ以上依頼主に食い下ががっても意味は無い。彼の代わりに、自分が彼の娘に愛情を注いであげればいい。
オルーカはゆっくりと頷くと、言った。
「……わかりました。マターネルスの第40日、ご自宅にお伺いします」
プロローグ -ケイト-
「いやー、ホントどこも満室でさあ。やっぱりヴィーダの新年祭は違うねえ!
久しぶりに来たはいいけど、宿のベッドにもありつけずに凍えるところだったよ!」
宿帳に名前を書きながら、ケイトは上機嫌でそう言った。
アカネはにこにこと、宿泊手続きを済ませていく。
「ケイトさん、お久しぶりですね。どうしたんですか、わざわざヴィーダまで」
アカネの問いに、ケイトは苦笑した。
「いやね。相変わらずあっちへふらふら、こっちへよろよろの根無し草でさ。でも、ちーっと寒くなってきて、さすがにケイト様も人恋しくなってきちまったわけさ。
だから、ま、賑やかなヴィーダの新年祭で、明るく楽しく新年を迎えようと思ってね?」
「なるほどー。じゃあ、ケイトさんも新年会、どうですか?」
「新年会?」
「あれです」
アカネの指差した先に、一枚の張り紙。
「なになに…新年会、とね。幹事は…ミーケン・デ=ピース…見たことのある名前だね」
「ミケさんをご存知ですか?」
「ミケさん?あ、そうじゃないか、ミケさんの名前だよ!いや懐かしいねえ!」
ミケとは、マヒンダの人形がらみの依頼で顔を合わせて以来になる。
ケイトは嬉しそうに、チラシの続きを見た。
「ふむふむ、料理と準備のお手伝いも募集……よっしゃ!ひとつあたしも一肌脱ごうじゃないか!
炎の料理人として腕が鳴るよ!」
ケイトはそう言って、豪快に袖を捲り上げた。
プロローグ -ジル-
「……寒くなって、きたな…」
ふる、と身を震わせて、ジルはひとりごちた。
もうすぐ1年も終わり。新しい年を迎えるための準備に街が活気づいている。
一人取り残されたような気がしてため息をつけば、白く空に消えていく。
ジルはなんともなしに、公園のベンチに腰掛けた。
と。
「おねえちゃん、これ、きれいね」
突然足元から声がして、ジルはそちらを見た。
すると、いつの間にいたのだろう、小さな少女が、彼女の腰から下げられた剣をものめずらしげに見ていた。
精巧な細工の施された剣。剣という以上に、工芸品としても人の目を引くものがある。
「これ、おねえちゃんの?」
少女が問うと、ジルは苦笑した。
「……いや。私のじゃない…でも、大事なものだよ」
「おねえちゃんの、おともだちのもの?」
さらに少女が問うと、ジルの表情が翳った。
「友達………私は……そう、思ってる…けど」
急に表情を曇らせたジルを、少女が心配そうに覗き込む。
「おねえちゃん…?」
エレーナ……
心の中でつぶやいた名前は、空に白く残ることもなく、消えていく。
ジルは、そのまましばらく虚ろな表情で空を見つめていた。
プロローグ -アッシュ-
「マターネルスの第40日…か。もうすぐだな」
徐々に活気づいていく町並みを感慨深げに見渡しながら、アッシュはぼそりと言った。
過ぎ去る年に思いを馳せつつ来たる年へ希望を抱き、誰もが浮かれているように見える。
所詮、公転周期を一巡りしたに過ぎないにもかかわらず、人は暦を新しくすることで、あたかも今日と違う明日が来るかのように自らを錯覚させる。
過去から未来へ流れゆく時間の中にあり、どこから来てどこへ行くとも知れぬ我が身を思えば、せめて区切りをつけなければやってられない、ということではあるのだろうが。
「…だが、忘れてもらっては困るな。
変えようとしなければ、世界は決して変わらない」
暦が変わっただけでは、世界も人も変わることはない。
科学者とは、世界を変える意思を体現する者。かつて神々より火を盗み、地上にもたらした英雄の末孫。科学の名において、市井の民の手に、古の魔道王国の名だたる貴族と同じ特権を授ける者。そして、その罪を問わるることあらば、甘受する覚悟を持つ者。
「もうすぐだ……準備を、急がねば」
アッシュはそう言って、帰路を行く足を速めた。
プロローグ -レティシア-
「レティ。手紙だ」
「え。あ、ありがとエール兄ちゃん」
ひら、と一枚のカードを差し出したエリオットは、酷く不機嫌な顔をしていた。
くり?と不思議そうな表情で首をかしげ、ひらりとカードをめくって差出人を確かめるレティシア。
その緑色の大きな瞳が、驚きと喜びに見開かれた。
「……ミケ!!み、ミケから手紙っ?!えええうそうそホントよね?私を引っ掛けるために盛大などっきりってことじゃないわよね?」
カードを持って飛び跳ねながらわけのわからないことを言う。
レティシアの傍らのベッドで横になっていた青年が、薄い笑みを浮かべた。
「…ミケさんっていうのは、レティの話にたびたび出て………いや、たびたびじゃなくてほとんど出てくる青年のことだね。
ニューイヤーカード、レティに送ってきてくれたんだ」
まるで自分のことのように嬉しそうな青年……幼い頃から病弱で、今日も朝からベッドを離れることが出来ない下の兄のルティアに、レティシアも嬉しそうに頷き返す。
「うん!んも~、ミケったら手紙で愛の告白~?どうせなら直接ドラマチックに言って欲しいのにミケの照れ屋サンっ♪」
上機嫌のレティシアに、上の兄エリオットの渋面はますます深くなる。
レティシアは気にせず、カードの文面を読んだ。
レティシア・ルードさま
こんにちは、お元気ですか?里帰りすると言っていましたが、無事に着いたでしょうか。
子どもじゃないので、大丈夫だと思いますが……少しだけシェリダンの件があるので、心配しています。
「んもう、ずいぶん昔のことをよく覚えてるなぁ」
シェリダンで人買いにさらわれ、ミケに助けてもらったときのことを思い出して苦笑する。
久しぶりの実家はどうですか?この間お会いしたエリオットさんやお話に訊いている他のお兄さんはお元気ですか?
きっと久しぶりにお友達とかにもあったりして、楽しく過ごされていることと思います。
それとも、年末ですから……ご実家の食堂の方が忙しくてお手伝いをしているのでしょうか。
結局僕は実家には帰らずに、ヴィーダで過ごすことにしました。一応、手紙は出しておきましたけれど。
いつか、あなたのように実家に帰れたら良いなぁと思います。
あ、そうそう。
せっかくなので、新年会を開いてみようと思っています!どうせなら大人数でやった方が楽しいかと思って、真昼亭に張り紙を出してみました。レティシアさんがいたらもっと楽しかったなと思うんですけど、またお会いしたときにその様子をお話しますね。
そちらのお話を是非聞かせてください。楽しみにしています。
ミーケン・デ=ピース
「…新年会……?」
手紙に書かれていた言葉に、硬直するレティシア。
「ミケと…ミケと、新年会……っ?!
ミケと2人っきりで、新しい年を迎えるの…っ?!」
大人数で、と書いてあるはずなんですが。無視ですかそうですか。
「ああっ、なんって素敵なのっ?!まさに恋人たちのメイン・イベントじゃない!」
恋人…?というツッコミは、もはや意味を成すまい。
ぴきぴき。エリオットの青筋が増えていく。
それに気付いてか否か、レティシアはすごい勢いで2人を振り返った。
「ごめんね兄ちゃんたち、私こうしちゃいられないわ、今すぐヴィーダに行かなきゃ!!」
「本気か、レティ?」
渋い表情のままエリオットが言い、レティシアは頷いた。
「うん。エール兄ちゃん、年末は店を手伝うって言ったけど、できなくてゴメン」
そして、くるりと振り返ってルティアのベッドの傍らに跪く。
「ルティア兄ちゃん、もっともっと外の世界のことを話してあげたかったけど、できなくてゴメンね」
ルティアは少し寂しげに、しかし先ほどと変わらぬ笑顔で頷いた。
「構わないよ。レティのしたいことを思いっきりしておいで」
「ルティア兄ちゃん…」
旅に出たときと同じ、暖かい言葉。胸が熱くなる。
家族の暖かさに、決意が揺らぎそうになるけれど。
レティシアは目を閉じて息を吸い、決然と面を上げた。
「私、行くわ。兄ちゃんたち、ゴメンね。」
ぱたん。
ドアが閉められ、花を見送った兄弟2人の表情が、少しだけ寂しさに沈む。
「また…行ってしまったな。」
エリオットがしみじみ言うと、ルティアが苦笑して彼を見上げた。
「よく行かせたね、兄さん。兄さんなら行かせないかと思ったよ。」
弟の言葉に、彼もまた苦笑する。
「…まあな。前の俺なら行かせなかっただろうけどな…。一生懸命頑張ってるレティを見て、考えが変わったんだよ。
心配は尽きないけど、止めることもしないさ。」
ふぅ、とルティアがため息をついた。
「兄さんが羨ましいよ。頑張って、生き生きしてるレティを見ることが出来るんだから。」
「まぁ…な。でも、自分の手から巣立っていくってのは…寂しいもんだぞ。」
「いいじゃないか、レティが幸せなら。ここから家族みんなでレティの幸せを祈ろうよ。」
「そう……だな」
会話の途切れた部屋に、沈黙が静かに流れていく。
妹がいないことがもたらす静寂は、それ自体よりも重大な意味を持っているのだと、彼らは改めて感じていた。