予告

インテリさんのアインは黒。
「所詮人間は闘争本能を捨てきれないのさ」

心優しいツヴァイは白。
「私欲のために争うなんて、獣だってやらないよ」

やんちゃ坊主のドライは黒。
「どっちだっていいんじゃないの?楽しければさ」

おっとりさんのフィーアは白。
「争いや破壊は、何も生み出さないのに…」

ちょっとアブないヒュンは黒。
「逆らうやつはみんな黒こげにしちゃうから~!!」

真面目で無口なゼクスは白。
「……………野蛮だね」

ロマンチストのジーベンは黒。
「破壊があって創造があるのです」

甘えん坊のアハトは白。
「み、みんなぁ、ケンカはやめてぇ…」

怒るとこわーいノインは黒。
「…奇麗事だけじゃ、世の中渡っていけないよ」

仕切り屋さんのツェーンは白。
「あいつら、絶対天罰が下るよ」

「助けてください…とにかく…もう私の手には負えないんです…」
組んだ両手を額に当てて沈鬱に溜息をつくと、エルフの女性はそう言った。
名前は、ルーイェリカ・ゼラン。真っ白い肌にストレートの綺麗な金髪、エルフ特有の長い耳とうっとりするような美貌を持った女性である。
ルーイは目の前の冒険者に、悲愴な視線を投げかけた。
「あの子達を…止めてください。このままでは…街の人々にも危害が及びかねません」

ヴィーダ市街にその居を構える、「ゼラン魔道塾」。
正式な魔道学校ではない。だが魔道の知識を教えるものとして、きちんとギルドにも承認されている塾である。
通う生徒は様々で、いずれは我が子を魔道学校にと願う親がまだ義務教育も終えない我が子を通わせていたり、軽い回復魔法や明かりの魔法などを実用的なものとして習う主婦や、魔道学校に通うほどの金はないが魔道の勉強はしたいと願う社会人など。年齢も性別も種族も様々だ。
今回、その塾の創設者であるルーイが冒険者に依頼したのは、その中でも特に少年少女を扱っているクラス。それも、「白魔法クラス」「黒魔法クラス」と銘打っているクラスのことだった。
といっても、魔道に白と黒、という分類が正式にあるわけではない。ギルドが行っている属性による魔法の分類も、それはそれでギルドがそう言っているだけだという話なのだが、この場合はもっと狭く、ルーイが単純に「回復系の魔法」「攻撃系の魔法」という意味でそう名前をつけただけなのだ。
ところが、最近になって急に、その白と黒のクラスが、互いにいがみ合うようになったらしい。
原因はわからない。だが、お互いがお互いを「魔道を志すものとしてあるまじき存在である」と言い、争い合うようになったというのだ。
ともに授業をすることすらまったくなかった者達が、である。
そして彼らはついに、実力行使に及び始めた。中途半端に身につけた魔道の力を使って、相手を攻撃し始めたのである。
ルーイはほとほと困り果てて、風花亭に依頼の告知を出した、というわけだ。

「本当に、私にすら手がつけられない状態なんです。忠告をしようとした先生達まであいつらの味方だと言って攻撃をするような有様で…授業もほとんど、今は自分達でやっているんです。実践と称して相手を攻撃して…今はまだ塾の中だけで被害が済んでいるからいいものの、いつ街の人にまで危害が及ぶか…そう思うと気が気でなくて…」
ルーイは、そう言ってまた溜息をついた。

「お願いします。彼らがいがみ合っている原因を突き止めて、あの争いを止めさせてください」

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