予告

あなたに瓜二つの 生物が
わたしの子宮から 出てきたら
バンドを呼び集めて 舞い踊り
その子の誕生を 喜ぶわ

「…その人形を手にしてから、彼女は心を無くしてしまったんです」
地人の男性は、美しく整った瞳を哀しげに曇らせて、そう言った。
「毎日毎日、まるで自分の本当の子供のようにその人形をあやしては、
出もしない乳を与える仕草をする。
それまで何の代わりもなく接していた家族や恋人の言葉も全く耳に入らない。
食事もしない。
眠りにもつかない。
驚くほどにやせ細りやつれ果てて、それでも彼女はその人形に子守唄を歌っているのです」

あなたのように わたしを捨てないように

「その人形は、魔道国家マヒンダで買い求めたもののようなのです。
ですから、私がここに呼ばれました。
今まで数々の事件を潜り抜けられた冒険者様たちと共に、この事件を解決するために」
にこりと微笑むその仕草はとても静かで、彼に年齢以上の落ち着いた雰囲気を与えていた。
「依頼の内容は、私と共にマヒンダに渡り、
この人形についてを調べ上げ、その呪いを解くこと。
これだけ強力な呪いです。何が関わっているかわかりません。
ひょっとしたら強力な力を持つ魔物が関わっているかもしれない。
だから皆さんにお願いするのです」

鉄の柵で作った 檻に入れて眺め
乳を与えあやして いつもいつも見てるわ
壊れるくらい 愛してあげる

「…申し遅れました」
地人特有の褐色の肌に尖った耳。くすんだ緑色の髪の毛の間からブラウンの瞳が優しげに微笑んでいる。
「私の名はフィズ・ダイナ・シーヴァン。マヒンダの魔道学校で学んでいる生徒です」

あなたのように わたしを捨てないように
 
 「ベビーベッド」作詞・作曲:こっこ

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