リアルタイムで書いていたあとがきは「黄金に捧ぐ乙女」までなので、これ以降は移設時書き下ろしのあとがきになります。あまりレア感はないな(笑)

「黄金に捧ぐ乙女」が結構消費カロリーの多いシナリオだったので(笑)なんか軽いのをやりたいなーと思ったんですよね。
というのと、「洸蝶の宴」みたいな、自分のPC設定が色濃く出せるシナリオがやりたいなというのがあって。

洸蝶の宴では、結構PC側NPCのオンパレードで、通常のシナリオではチラ見せしかできなくてかえってなんだかわかんないキャラクターをがっつりと描くことが出来、それが結構好評だったと記憶しています。だから、似たようなことが出来ないかな、と。
でも単純な二番煎じでも面白くない。そこで引っ張り出してきたのが「夢」でした。
PC側NPCと、PCのこれまで、裏事情、内部設定を「夢で見る」シナリオ。一夜ではかなく消えてしまう、だからこそ美しい「夢」を描いてもらおうと思いました。

ということで1回完結の、一晩寝て夢を見るだけのシナリオ。夢を見るんだから舞台はホテル。それも、「当人の深層心理が一番望んでいる内容を夢で見せられる」という、普通ではないホテルでないといけません。そんなのが普通に表通りにあったら大変そうなので、あるかどうかもわからない、都市伝説のようなホテルがいいと考えました。

そこまで怪しいホテルは、やはり支配人にも怪しくいてもらわなければなりません。ということで、支配人は夢魔。その名の通り「ナイトメア・ホテル」と銘打ち、道に迷った旅人が泊まると会いたい人の夢を見ることが出来る、という触れ込みのホテルにしました。そのホテルに泊まり、丁寧なもてなしと美味しいお食事を食べながら、「会いたい人」の前フリをしてもらう。で、寝ると前フリを受けての夢を見る。という構成にしようと。

支配人のアルヴは、まあこれもエスタルティにしても良かったんですけど、どうしても夢魔にしたかったので、カーリィのお友達ということにしました。夢魔そのものはあんまり強いイメージはなくないですか?(笑)
ホテルの支配人なのでむちゃくちゃ言葉が丁寧ですが、これは今の職場に入ってコールセンター用の接客用語というものを覚えて、やけくそで使ってやれと思ったようなうっすらとした記憶があります(笑)日付見たらドンピシャなのでたぶんそう(笑)「さようでございますか」とか、今の職場に来なかったら一生口にすることのない言葉だったわー(笑)
辞書にも書いてますが名前の由来はドイツの夢魔です。めがてんを始めとするいろんなゲームに出てくるアルプは大体セクシーな女性悪魔ですが、アルプはそもそも女性の夢の中に出て精気を吸う男性悪魔なんだそうです。トロゥムはたぶんDreamですね。イメージはまんま黒執事ですがあんなに強くないです。アルヴ結局一度も描いてないんですよね、そのあと半月にも出たしラスセレにも出たのにね。マスターと絡んでるところとか描いてみたかった。いや今からでも描けるんですけど(笑)カリアルよりは結構アルカリで推していきたい。どーでもいいですよ。

という感じで始めたナイトメア・ホテルでしたが、お客様は5名。このあたりから、シナリオも少なくなって、参加者も少なくなってきたなあという印象ですね。それでもよくいらしてくれたと思います。感謝感謝。

一応、「前フリ」の部分は、みんなで食事でもしながら語ってもらうことになりますが、あんまり自分の事情を大っぴらに話したくない人は別部屋でアルヴに対して喋ってくれてもいいですよ、という風にはしてました。結局そういう方はいなかったので皆様で順番に自分のことを話していただく形になりましたけど。
こういう、「自分のことを喋ってくださいね」という大前提があるトークはやりやすくていいですね(笑)なんか、普通のシナリオで、NPCが辛い境遇にあるっていう話をしてる時に「俺漏れも」「我も我も」「いやいや我こそがダークな境遇」とかやり始めるともうそれ「隙あらば自分語り」ってやつになっちゃって一歩間違えるとただの痛い人なんで、痛い人にならないようにPCやNPCに水を向けてもらったり、ギャグシナリオならもういっそ痛い人扱いしちゃうところなんですが。どのシナリオとは言わないけど。読み返すと頑張ってるけど不自然なところとかあって、うんうん私頑張ってたなあと思っちゃいます(笑)
そこ行くとこのシナリオは「自分の裏設定を思う存分披露する場」なので、多少の痛さも中二病感も許される優しい世界です。晩餐で軽く自分の境遇や会いたい人の話をして基礎知識を読んでもらった後で、個別の夢に入る。もうあんまり覚えてませんが、シナリオのあとがきを見る限り、そんなに私からの無体な注文はなかったようです。

ただ、「過去と同じ夢を見るというのは、そこで自分の記憶とは違う何かに遭遇することにこそ意味がある」という示唆はしたようですね。これは確かに今もそう思います。
半月の時に、「自分の過去の思い出を話して聞かせるだけ、というのは、終わった話であり、悪いけど印象に残らない。それを『今』の話として積極的に印象付けるためには、何らかのイベントに絡めて読者を引き寄せる必要がある」というようなことを言いました。
それと同じように、「懐かしい夢を見る」だけならば、それは「自分のキャラ設定の披露」でしかない。その夢が、「何か自分の心を、そして読んでいる人の心を動かす」ためには、記憶の通りのものではなく、そこから違う何かに遭遇してもらう必要がある。意外性は印象に残ります。
洸蝶と違い、現実ではなく、ある意味自由に変えられる「夢」だからこそできることをしてほしい、おそらくはそういう示唆をしました。

ユキさんはいつものお師匠様のお話!って感じの話でしたね(笑)私の示唆の通りなのか、「リグを見た最後のタイミングで何も言えなかった」ことを後悔している描写を晩餐で行い、そして夢ではそれをひっくり返して乗り越える、という構成になっていてすごく素敵でした。

フィリーさんは参加し始めたばかりなのでふんわりと境遇を騙る感じでしたね。相棒さんの名前すらも出てこない。こちらは他の方々とは真逆で、過去の記憶ではなく、親しい人を登場させた架空の記憶を全面的に捏造してました。これはこれで、おそらくは幸せな境遇ではなかったであろうフィリーさんが、なんでもない、当たり前に幸せな子供時代を渇望していたことが伺えてかえって切ない作りになってて良かったです。

ミアさんは謎が謎を呼ぶ感じで、結局最後までその謎が明かされることはありませんでしたが、追及してったら面白く描けそうな感じでしたねー。実は相川GMの「輝く日々」でのピノンくんの境遇がちょっとダブって見えて、そこらへんで何かが明かされるのかなって期待してたんですが(笑)

ミケさんの話を改めて読み返してて、あれっ?と思ったのが、ミケさんがグレシャムさんを「泣きもしないし笑いも……いや、フッ、って笑ってたかな……いつも無表情に近いような怒っているような感じだった」と言っていて、ラスセレで出した時には温和で天然な感じだったのでちょっと描き方間違えたかなと…いやどっちですか?(笑)割とアクションの通りに描いた気でいたんですが(笑)
夢では子供の時の曖昧な記憶を改めて大人目線で見て、当時は気づかなかった真実を知る、という作りになってて面白かったです。誰よりもクローネさんのところでほろっと来た。いつも笑顔のムードメーカーが見せるギャップってずるいよね。

それでいくとンリルカさんですよ!これこそが、「いつも笑顔のムードメーカーが見せるギャップ」の決定版だと思います。覚えている限り、ンリルカさんがご自分の設定の描写をこんなにもがっつり出したのはナイトメアだけです。いつもあんなにどぎついオカマキャラで、それでいてお金にシビアで、ちょっと危険な依頼だって受けちゃう裏にはこんなドロドロの設定があって、手あたり次第食っちゃってるように見えて本命はアリョーシャちゃんただ一人っていうその一途っぷりのギャップですよ。上手く描いてるなーと思いましたね。願わくばアリョーシャちゃんが目覚めるところまで描いてあげたかったなあ。個人で書いてもええんですぜ。へっへっへ。

と、単発終了のシナリオにしてはかなり面白いものに仕上がったなーと思いました。満足。