前に何かの質問コーナーみたいなやつで、やってみたいシナリオは?の問いに「怪獣が海を目指すお話」って書いた気がするんですが(50の質問かなんかかな?と思ってみたら違った…どこだ)かなり前からずっとやりたいと思ってたシナリオでした。シナリオやるの終わる前にこれだけはやっておこう、みたいな。事実上のラストシナリオです。

当初は本当に「怪獣が海を目指すお話」にしようと思ってました。元ネタである「怪獣のバラード」の歌詞通り、「海が見たい 人を愛したい 怪獣にも心はあるのさ」というフレーズを描きたかった。砂漠に怪獣が現れて、ひたすら東を目指している。怪獣を脅威と感じた人々は冒険者に退治を依頼する。しかし冒険者が戦いを挑むも、怪獣には積極的に冒険者と戦う様子が見られない。ただ東を目指している。どうにかして怪獣とコンタクトをとると、実は怪獣は見たことのない海を見たいと東を目指していただけだったことがわかる。通りがかったキャラバンが楽しそうに宴会をしているのを見て、あんな風に人と仲良くできたらと思っていたことも分かった。海が見たい、人を愛したい。そんな怪獣の望みは、彼が怪獣であるがゆえに叶うにはかなりの困難を伴う。冒険者はその望みをかなえるためにどうしていくのか…?という感じのシナリオで考えてました。あれ、なんか今見るとこっちの方が良いなあw

そこにフィズとキルをひっかけてきたのは何が理由だったかもう忘れましたが、「召喚士」という職業で繋がっていたことと、キルメインのお話、フィズメインのお話というのがここにくるまでに一度もないということ。ニースはロッテの話ですし、ベビベもセレのお話です。ベビベに至ってはミルカがマヒンダに来るから引っ張ってこられたわけで、言い方は悪いけどあのポジションはフィズでなくても良かった。マジラリ2も同じです。どこでも掘り下げたことのないフィズのお話を描きたかったのは確かにありました。
それまで、フィズの設定としてオープンにしているものは、ミリーの養子であるということ。父は召喚士で、母は格闘家。幼いころに両親を亡くし、両親と仲が良かったミリーが引き取った。というくらいです。今ちゃんと見返したら「事故で亡くなってしばらくしてミリーが現れて養子に」と書いてあってちょっとした齟齬がありますがちっちゃいことは気にしないw直しとこw
で、そこで「同じ召喚士」というキーワードを繋げるために、フィズの両親を殺したのはキルである、という風に繋げました。キールが持っていた召喚獣を奪うために襲い、奪った召喚獣で殺してしまった。フィズはそれを目撃しており、ミリーの助け船で何とか生き永らえた、という感じで。この繋がりを作ったのがこのシナリオの時だったか、それとももうちょっと前に作ったのかはもう記憶に無いですが、その「奪った召喚獣」を「怪獣」にしてしまおう、そして、キル側とフィズ側と両方の入り口を設け、PCが対立するシナリオにしよう、と思いました。

ただ、話の流れとしては当初と変える想定は無くて、キルの召喚の契約が切れてしまったバジリスクは「本当に海が見たいだけでのそのそ移動していた」「どっちかというと人間と仲良くなりたい」という設定ではありました。キルと引き離してちゃんとコンタクトを取ってみるとそれがわかり、じゃあキルとの絆をどうにかして切って、バジリスクに海を見せてあげよう。出来れば人と仲良くできるよう、本来のマスターの息子であるフィズと契約を結ばせよう、という結末にしようと思っていました。そのキルをどうやって「諦めさせるか」が話の肝であり、冒険者さんに悩んでいただくところ、という話にするつもりだったんですね。

当時のあとがきにも書きましたが、この話の角度を90度ほどぎゅんと曲げたのは、まぎれもなく第3話のグレンさんの行動だったと思います。

「自分の武器を取り戻したい」と考えているキルと、「召喚獣を武器にしたくない」と考えているフィズとで、ミケさんがキルの正体を知っていることもあって、冒険者さんはフィズの方に傾くだろう、という目論見はありましたし、そのように作為していたつもりでした。しかしそれが思いのほか、「キルに武器を与えてはいけない」という印象を強く与えてしまった結果がグレンさんの行動だったと思います。さじ加減て難しいなあ。
アフィアさんが途中退場してしまったのは、彼のキャラクター性を前面に出した結果とは思っていますが、それだとロキの時にあんなに激怒した理由とか、イシュの時に全く関係ないのに村の捜索に協力した理由がいまいちよくわからんので、「魔族出せばみんな敵とみなすと思うなよ」的なプレイヤーさんの意図も少し感じました…うがちすぎかな。それが退場後のアフィアさん論に繋がってます。大人げないな私。

それはさておき、グレンさんの行動によって、「フィズの望み通りにしたい、バジリスクの意図が知りたい」という方向性から、「キルに見つかるまでにバジリスクをどうにかしたい」という方向性に変わってしまいました。これが、私の当初の想定と全く違うものであったがゆえに、それ以降のPLさんが思いっきり迷走してしまうことになったと思います。ごめんな…GMも迷走してたんや…w
しかしながら、そういう行動を出したグレンさんの目的や考え方がかなりしっかりと説得力のあるものであったため、他PCもNPCもそちらを向くことになったと思ってます。それだけの力がグレンさんの言葉にはありました。ただ私が用意していた結末と違うというその事実が、導き出したエンディングをめちゃくちゃご都合主義に見せてしまったんだと思いますwいやご都合主義ですけどね!w

設定として実際問題の話をすると、フィズが言った通り「キルはバジリスクを取り戻したいとは思っているが、優先順位はそれほど高くない」んです。キルが己の目的でもってバジリスクを取り戻したいと思っているのであれば、最初から冒険者を雇ったりはしなかったし、入り口はフィズの1個だけだったでしょうwつまりは、入り口を2個用意している時点で、フィズの方に有利なように話は組まれていたんです。
しかし当然PCはそれを知らないわけですから、用心深くなるのはおかしいことではない。おかしいことではないんですが、そこまで用心しなくてもいいように、キルにはそこまでの攻撃的意図をそもそも持たせていませんでした。
だから、とりあえずキルが契約できないようにフィズと契約しちゃおう→この時点でバジリスクはもともとキールの召喚獣だったことがわかる→海が見たかった、人と仲良くなりたかったことがわかる→じゃあもうバジリスクに人殺しをさせないようにキルをどうにかしよう、という流れで、最終的にはキルも意外なほどあっさりと手を引いてくれる予定でした。だってそもそも彼は自分の目的でバジリスクを探していたわけではないんです。「逃がしちゃいました」という言い訳が立てられれば何でもよかった、その言い訳を作り出すためにわざわざ人間の冒険者を雇っていたのですから。途中でバジリスクに執着するような風を見せたり、仲間割れを楽しそうに見てたのは単純に「面白そうだったから」です。忘れられそうですが彼もエスタルティなのでw

用意していた結末と全然違う方向に話が進んだので、ラストが取って付けたみたいな感じになっちゃいましたが、リジーは間違いなくグレンさんのアクションが生み出したキャラクターだと思っていますwラスセレにも出てきて出世したね…(ほろり)この後さらにあっという間にフィズよりでかくなって魔道士として独立することになると思います。
PCのアクションにより当初の想定とがらっと変わってしまったNPCはもいっこ、ショートカットになってしまったセイカですねwあれも千秋さんのアクションがショートカットにしちゃったと思ってますwそれ以降もずっとショートカットだったので影響はでかいな!w

そして最後、じゃあキルの召喚獣を使ってチャカが何を企んでいたのか?が、新ハーフムーンの伏線とつながってます。この伏線が解消されることはなくなったのでここで語っていきますが、チャカはバジリスクを使って、「石化の呪い」を軸とする事件を起こす想定でした。愛する人を石にされた青年に、石化の呪いを解くために試練を課す、というもの。それがこのシナリオによって石化が使えなくなるため、石化ではなくて眠りの呪いになる予定でした。その眠りの呪いを解くためにチャカが課した試練をクリアするため、青年が冒険者を雇う…というようなシナリオをやる予定、でしたw結局話がまとまらずに日の目を見ることはありませんでしたが…まあ返す返すも、話から作ろうとすると失敗するよね私は、という典型でしたねw

そんないろいろな思い入れのあるシナリオでしたが、終わってみればかなり好きな話だったな、と思います。ご参加ありがとうございました。