諦めん。わたしは諦めんよ。
ということで、何度も何度も申し訳ありませんが、今度こそ「終わったと思っていたらその先に何かがありましたよ」ということを成功させたくて始めたシナリオです。
イノシンの時はあたしの虚栄心のために残念な結果となり、甘罠ではいまいち「裏に潜んでいた事実」が目立たない結果となりました。ですが今回は!明確に!「隠された事実に気付いて追及した人を差別化」出来るシナリオとなり、大変満足しております(笑)

「終わったと思ったらその先に何かがありました」という展開を上手く魅せるためには、その事件がなにがしかの形で「冒険者たちの手によって解決しました」という体裁をとる必要があります。そして、終わった事件の裏側には実は何かが潜んでいて、その事実に至る伏線は用意されている。事件は解決したけれど疑問は残る、その疑問を追及することで初めてさらなる真実が明らかになる、という展開が理想です。
この、伏線や隠された事実というやつを「推理」を銘打ってやると余計に混乱するということは、甘罠で学習いたしました(笑)
そして、隠された事実に気付く人がいなかったとしても、事件は一応の「終息」をみなければならない。冒険者が活躍することで事件は解決する、という体裁が整わなければならない。
そして、もし誰もその事実に気付かなかったとしても、一応「事件は収束した」ということにならなければならない。

この条件を満たすモチーフとして選んだのが、「生贄」でした。
生贄に捧げられる少女を助けたい。生贄の裏にあるからくりを暴き、その悪習そのものを撤廃するという「目標」を作る。
しかしその「からくり」を暴くとさらにどうにもならない事実が待っている。冒険者にはその選択を迫り、それを乗り越えることで事件は解決する。だがそのさらに裏には、その「からくり」自体を仕組んだ張本人が潜んでいる、という構図ですね。
実はこの生贄話にはパク元……いえ(笑)モデルがあります。秋乃茉莉さんの「賢者の石(エリキサ)」シリーズ、「赤(ルベド)と黒(ニグレド)の婚礼」という作品。その村ではルビーが名産で、そのルビーは狼に生贄として娘を捧げることで得ているものだった。娘を生贄に差し出したくない主人公は、生贄の儀式についていくが、そこに現れた狼が娘を噛むと娘は狼になってしまい、噛みついた狼はルビーに姿を変えてしまっていた。村は自分たちの娘を切り売りすることで潤っていたのだ…というお話。ほぼまんまです(笑)
このルビーを金に変え、生贄の魔物はそのまま狼にしました。上の作品中では、そもそもなんでそんな狼が発生したのかまでには言及していなかったので、この理由づけと黒幕の存在を追加し、さらに上の作品中ではルビーの「発生源」を誰も知らない設定になっていましたが、これを「一部の人たちは全部承知の上で生贄をささげていた」とすることで、生贄にならざるを得ない、生贄をささげざるを得ない心情を掘り下げる形をとりました。

そして、すべての「黒幕」として、そろそろ新しいエスタルティを出しとくか!(笑)ということで作ったのが、ロキです。
チャカの発言をもとにすると、「にいさまが5人、ねえさまが3人」。つまり、現在のエスタルティ一族は男子5名、女子4名の9人兄弟ということになります。
男子で出てきているのは、ロッテパパのティーヴァ(長男)、キルパパのツヴァイ(次男)、末っ子のカーリィ(五男)の3人。女子はチャカだけです(笑)そろそろ女子も出すか(笑)
当初から、あたしのキャラには男が少ないので男を出すということは決めていて、そして今までにない属性の男を作ろうということで「ドS」にしようというのは決めていました。ボルテージのヌルいドSじゃなくてマジモンのドSな(笑)で、まだエスタルティで出ていない三男と四男のうち、まあ上から順番に三男にしようかな、ということで決めました。

名前については、今回の名前も神話からとろうと思い、ギリシャ神話は甘罠でやったので満を持して北欧神話からとりました。夫婦の神を探し、女神としては割とポピュラーなフレイヤとその夫オード、名前の響きがかぶらない形でバルドルとナンナを持ってきました。この名前を決めた後にフレイヤのことをよくよく調べると、黄金を生み出す女神とも言われていて、ちょっとびっくりした覚えがあります(笑)わざとじゃないのよ(笑)
で、ロキについては北欧神話で悪役と言えばこの人でしょうということで即決。

という入れ物を整えての滑り出しでした。
途中脱落者が出て、さらにその方がシナリオも立ち上げていたものですから(笑)シナリオに参加していた方を引き受ける形で途中入場が発生いたしましたが、途中入場とは思えない活躍っぷりで皆さん大変がんばってくださいました。
上に書いたようなわけで、結局は「生贄のからくりを暴くこと」「ルナウルフを倒すこと」「あわよくばロキの正体を見破って彼を倒すこと」が目的であったので、「生贄のからくりを暴く」という過程についてはどう転んでもいいかなと思ってたんですよね。ですので、「どういう手段をとっていただいても最終的に生贄の儀式にはいけるよ」とだけお伝えして、それに至る過程についてはPLさまにお任せするような形になりました。
正直な感想としては、あたし自身は「この過程で問題なかったな」と思っております。 いろいろな手段はあったと思いますよ?正面から説得せずこっそり忍び込むとか、まあ王道として、いけにえと入れ替わって代わりに行くとか(笑)
それでも、嘘をつくとかこっそりやるとか暴力に訴えるとか、そういう手段でのリスクを回避する意味での「正面からの説得」いやまあ説得というか挑発?(笑)は悪くない手段だとは思います。悪事と思えるものを知らしめることで閉鎖的な習慣を壊し行動しやすくする、ということですよね。ただそちらにもやっぱりリスクはある。要は「ずっとかたくなに守ってきたものを壊す」ということをして、波乱が起きないはずが無い、んですよ。まあほら、何かをなしえるのに何の波乱も無いのもかえってつまらないじゃないですか(笑)ということで、忍び込むとか暴力に訴えるのとは別の意味の「波乱」をご用意させていただきました。
たぶん、「正面からの説得」を推していたのはワーデンさんなんですよね。彼がアクション板で呼び掛けることによって、みんなの方向性がそっちを向いた。おそらくは、他の手段を考えていた方も少なからずいたと思います。でもワーデンさんの書き込みには力があったから、みんなも納得してそっちを向いたのではないかな。
たぶんね、忍び込んだとしても、暴力に訴えたとしても、何らかのデメリットがあったし、リスクがあったと思うんです。今回はそれが「正面からの説得」という選択肢を選んだことで、その事でのデメリット、リスクが顕在化した。リスクの無い手段なんて無いですよ。何の波瀾も無く穏やかに遂行できる手段があったとしたら、あの村はあんな風にはなっていないわけです。で、そのリスクが、おそらく皆さんの考えていた方向のものではなかったために、2話が終わっての皆さんの反応は「やっちゃったなー」だったんだと思うんですね。でも別に、あたしはやっちゃったわけではないと思うんですね。フェイさんにも言わせましたが、「村人を集めて一気に説得する」手間が省けたと思うんですよ、逆に。ですので、あれはあれで正解だったのだなと、今でもそう思っています。

イノシンの時も申し上げましたが、こういう「終わったと思っていたけど何かがありました」というタイプのお話を構成しようと思った場合、その決め手となる伏線を、序盤で提示しておく必要があります。何も提示されていない状態で 「実はこうだったんですよ!」と言われても「ふーん」で終了じゃないですか(笑)ヘタをすれば「PLの裏をかくためだけに後付けで捏造したんでしょ」と言われかねない。この結末は本当に最初から用意していたものなのですよ、と提示するとともに、「あの時の言葉にはこういう意味があったんだ!」という新鮮な驚きとなるようにせねばならない、というわけです。
これも繰り返しますがその際に一番恐れることは、序盤でそれを指摘されることです(笑)今回、イノシンほどそのカモフラージュは上手く行きませんでした。ええ、アクション板で指摘されたんですね、ワーデンさんに。「黄金の獅子」っておかしくない?と(笑)
そこであたしが取った行動は、ただひたすら沈黙することでした(笑)イエスともノーとも言わない。黄金の時にあたしはあまりアクション板に口出ししていません。明らかに変なことを言ってる時だけ「戻ってこいよー」をしただけです。
反応しないことで脈なしと踏んだのか、それとも忘れられたのかはわかりませんが、ワーデンさんはその後その文言に対して言及してきませんでした。アクションの中にもなかった。代わりにミケさんが言ってきましたが(笑)あのタイミングでミケさんにロキのところ行かれて「何で獅子って言ったんですか?」と言われたら割とアウトでしたね(笑)次はもうちょっと練ろう……
しかし実際にはそのようなことはなく、「なんで獅子って言ったんですかねー」という呟きで2話では終了し、3話の最後で再び「黄金の獅子」と目立つように表記したことで、生贄の真実というショッキングな事実に気を取られすぎることなくきちんと記憶をとどめておいた方には、ロキの発言の矛盾を見出してもらえる、という構成にできたことはよかったなと思っています。
ぶっちゃけて言えばそこをあえて追求してきたのはミケさんだけでしたので、4話のラスト1ページはミケさんオンステージとなりました(笑)その後の構成として、5話は参加してもしなくてもいい、という構成にしたかったので、あえてあいの手は誰が喋ったかわかりにくいようにしています。ユキさんだけは一番初めにロキと出会った時のことを話さなくてはいけないというのがありましたのでちょっとだけ個体認識できるように描いていますが。
そして最後、ロキとの戦いのシーンですね。これもあとがきで言いましたが、どうやって戦うべきかということに気を取られずにきちんとお話を読んで、ロキの言ったことを気に留めていた方がいたら大活躍できる構成にしておりました。はい、「黄金はロキの魔力で霧散する」という彼の発言です。これに気づいたのはフェイさんだけでしたので、最後の戦いではフェイさんに大活躍してもらうことになりました。
途中ヒヤヒヤしたところもありましたが、ミケさんとフェイさんがきちんと指摘してくれたおかげで、最後の最後までPLが活躍してきちんと膜を下ろすことができた、最高のシナリオになったと思います。楽しかったです、ありがとうございました!