パパヤ・ビーチは今日も文句なしの快晴。時節柄多くの観光客が集まり、広い砂浜を隙間がないほどに埋め尽くしている。
「きゃっほー!!海だよ海!久しぶりだなー、ほらほら早く泳ごうよ!」
「ちょっとロッテ!あまりはしゃぐとはぐれるわよ!」
のっけからテンションの高いロッテは、紫色のセパレート。無駄に露出の多いデザインが彼女の魅力を強調している。
リーはといえば、こちらはフリルがたっぷりきいた可愛らしいピーコックブルーのホルターネック。髪もいつも後ろでひとつにまとめているものを両サイドで三つ編みにしてくるりと巻いている。
「あー!なになにあのヘンなビーチボール!ちょっとリー、来てみなよー!!」
ロッテはリーの言葉など聞こえていないかのようにおおはしゃぎで海へと出て行く。
リーは嘆息して、振り返った。
「ほら、はぐれないうちに早く行きましょう」
手を差し出したのは、シンプルなスイムパンツにパーカーを羽織った姿のエリー。
仏頂面で差し出された手に手のひらを向け、拒否の意を示す。
「いや、俺はここで見てる。行ってこいよ」
リーはきょとんとして、次に首をかしげて眉を寄せた。
「…何か怒ってるの?」
エリーは仏頂面のまま嘆息する。
「…別に」
「嘘。怒ってるわ。何を怒ってるのかちゃんと言って?わからないままなのは嫌だから」
「………」
エリーは何かをこらえるように目を閉じて、ややあって面をあげた。
「……水着」
「え?」
問い返すリーに、焦れたように繰り返す。
「…水着。俺が選んだのは、どうしたんだ」
リーが目を見開いたまま固まる。
「…何だその反応」
「…いえ、あなたがそんなこと言うなんて意外だったから」
珍しいものを見たように目を瞬かせて、リー。
確かに、ここに来た時にエリーと訪れた服飾店で、エリーがリーにと選んだ水着がある。彼女に似合いそうな、リボンをあしらった清楚な白のワンピース。もちろん、今着ているホルターネックとは別物だ。
「で、あの水着は?」
エリーが押して訊くと、リーは言いにくそうにロッテのほうをちらりと一瞥した。
「…何だよ?」
「…ロッテがいるじゃない?」
「いたら何かまずいのか?」
リーが自分で水着を選ぶような性格でないことも知っている。この水着は十中八九ロッテが選んだものだろう。それが彼の不機嫌に拍車をかけていた。
リーは恥ずかしそうに顎を引いて、上目遣いでエリーを見た。
「……に」
「ん?」
声が聞き取れずに身を乗り出すエリー。
その手を引っ張るようにして自分のところに引き寄せると、リーは彼の耳元で囁いた。
「…あなただけに、見て欲しいから」
エリーの目が静かに見開かれる。
リーは顔を真っ赤にして彼から離れ、そのままにこりと笑った。
「…だから、また今度…二人のときに、ね」
エリーが何か言葉をかける前に、向こうのほうからロッテの声が飛んでくる。
「リー!なにしてんのさー、早く遊ぼうよー!」
「はーい、今行くから!」
恥ずかしいことを言ってしまって早くこの場を離れたいのか、リーはロッテに返事をするとそのまま体をそちらに向けた。
「じゃ、泳ぐ気になったら来てね」
そうして、足早に海の方へと駆けていく。
その後姿をしばし見送って。
エリーは近くの椰子に寄りかかると、手のひらで顔を覆った。

「………やられたな」

“Your Choice”2006.7.13.Nagi Kirikawa

トップの水着絵から展開したオーレンさんとの(というか、オーレンさんの(笑))萌え話を形にしてみました(笑)
リーの水着で最初考えてたのは、まさしくリボンひらひらの白ワンピースだったんですよ。でもホルターネックが可愛くてな(笑)ということで、「自分が選んだ水着を着てないと拗ねるエリーが二人っきりのときにねvと言われて撃沈する」というのをそのまま書かせていただきました(笑)
オーレンさん、萌え絵と萌えネタをどうもありがとうございます(笑)またよろしくお願いします(笑)