待つということは、本当に不安なもの。
過ぎ行く時間が刃となって、剥き出しの心に襲い掛かる。

ひょっとしたら、もう来ないんじゃないか。
あたしのことを嫌いになったんじゃないか。
世界中であたしだけが独りぼっちなんじゃないか。
そんな思いがあとからあとから湧きあがってくる。

それでも、待ちつづけているのは
あなたによせる、絶対の信頼の証。
あなたは来る、そんな不思議な確信。
ちっぽけで、でもとても大きな
脆くて、でもどんな攻撃にも崩れない強固な壁。
不安にかられた時には、少しだけその壁にもたれかかる。

「ゴメンゴメン、お待たせ」

やってきたあなたに、あたしは苦笑を投げかける。

「遅いわよ。まったく、あたしじゃなかったらとっくに先に行ってるわよ?」

「そだね、キミだから待っててくれると思ったんだ」

ああ。
あなたも、不安だったのね。

あたしが、行ってしまわないか。
あたしが、あなたを嫌ってしまわないか。
あたしが、あなたを独りぼっちにしてしまわないか。
不安にかられながら、息を切らせてここに来たのね。

「さ、行きましょうか」

でも大丈夫。
ほら、こうして。

あたしたちの大きな壁に、
またひとつ、「信頼」が塗りこめられる。

「Waiting」 2002.10.16.Nagi Kirikawa

仕事場で遅刻した先生を待っているときに考えた話です(笑)
待つって結構なエネルギーですよね。
でもって、待つって結構な信頼なんだと思うんです。
絶対来るっていう保証なんてないのに待っていられるのは、単純に相手を信頼してるからなんだなって。
固有名詞は特に出しませんでしたが、ロッテって時間にルーズそうですよね(笑)で、リーは厳しそう。いっつも待たされるのはリーで、そのたびに怒られて、でもロッテはけろっとしてるみたいな(笑)そんな感じのふたりも書いてみたかったですよ。