何が善で、何が悪なのか?
…面白いことを訊くのね。

そう、例えば。
人を傷つけるのは、悪いこと。
人を悲しませるのは、悪いこと。

人を喜ばせるのは、良いこと。
人を助けるのは、良いこと。

そんな、単純なことを前提にしましょう。

じゃあ、人を傷つけた人を、傷つけるのは、良いこと?悪いこと?
人を殺した人を、殺すのは、良いこと?悪いこと?

例えば、飢えた人たちを助けるために、山でたくさんの動物を狩り、木の実を取ってきた。
飢えた人たちはそれを食べて助かった。
けれど、他にもその山で狩りをして生計を立てていた人は、狩る動物がいなくなり、飢えることになった…
さあ、これは良いことかしら?悪いことかしら?

ねえ、そうは思わない?

結局「善」と「悪」なんて。
立場が変われば、簡単にひっくり返るような脆いもの。
自分がしたいようにするための、「逃げ道」なのよ。

これは「良いこと」なんだから、やってもいいんだ。
あいつが傷つくことになったのは、あいつが「悪い」からなんだ。

そうして。
自分の行為が生み出した犠牲からは、目を逸らす。

アナタが何気なく踏み出したその足で、
一体いくつの虫が、草が、踏み潰されたかしら?

アナタが何気なく口にしたその肉は、
一体どれだけの血と悲鳴を生み出したかしら?

何かを傷つけるのが、悪ならば。
アタシたちは生まれたときから、悪なのよ。

…ねえ、そうは思わない?

アタシの、善と悪?
ふふ、そんなの簡単だわ。

アタシが良いと思うことが、善。
アタシが悪いと思うことが、悪よ。

……ね?簡単でしょう?

“Goodness and Wickedness” 2009.12.3.Nagi Kirikawa

甘罠でファリナさんとのやり取りが面白かったので、広げてみようと思ったんですが…微妙に不完全燃焼。
チャカはとっても書きにくいです。深淵を覗いている気分になります(笑)