僕の一族は、変わった人が多い、なんてよく言われるらしい。
もっとも、その「変わった」っていう言葉も、『魔族』っていう基準に照らし合わせてのことなんだけどさ。

『魔族』っていう、大きい種族としてのくくりの中に、僕ら『エスタルティ家』がある。
魔族の中にも色々いるわけで、僕の一族はその中でも力の強い部類に入るらしい。
褐色の肌、尖った耳、爬虫類系の翼。背は低め、カワイイ系の顔立ち。力もありまくり、性欲もありまくり、節操無しのエロエロ一族。それが、僕らエスタルティ家の特徴…らしい。うん、まあ、否定はしないな。あはは。

で、そのエスタルティ家には、変わり者が多い、なーんて言われちゃってるらしい。
確かにね。『魔族』っていう基準に当てはめたら、僕の兄弟だけでも変わり者はちょこちょこいる。
たとえば、一番上のティーヴァ兄様なんかは、もう伝説級の変わり者だった。なんたって、人間とケッコンして子供作ってそのせいで処刑されちゃったんだもんねえ。いーなあ、僕もピンチの時に変身して助けてくれる魔法のフィギュアっ娘だったらケッコンしてもいーなあ。
それから、僕の可愛くない妹のチャカちゃんなんかも、しょっちゅう現世界に行っちゃー人間のこと引っ掻き回して、自分好みの女の子をペットにして帰ってくる。あんまり現世界に関わりすぎると天界に目ぇつけられちゃったりするからよろしくないんだけど、本人はそんなこと全く気にもとめてないし、なまじ強いもんだから誰も何も言い出せないで遠巻きにされてる感じ?変わり者、っていうのともちょっと違うかも。
最近じゃあ、ご当主のツヴァイ兄様のご子息――つまり嫡子だよね、そんな立ち位置にいる甥っ子のキルくんが、こともあろうに(兄様談)ティーヴァ兄様が人間と作った子にご執心みたいで。半分は魔族の血が入ってるったって、人間との子供でしょー?色々不味いんじゃないかなーとか、他人事ながら思うわけだけどさ。

てか、多分彼らからしてみれば、現世界に定住してフィギュア作ってイベント出て二次元萌えに没頭してる僕こそが、一番変わり者で魔族らしくないんだろうけどさ。

でもでも、考えてみるとこの『魔族らしい』ってヘンな言葉だと思わない?
そもそも『魔族らしい』って何さ?っていう話じゃん。

魔族、ってのは、そもそも。元は天使だったんだってね。
天使は、神様が自分で作った世界を維持するために作った種族だった。それが、世界を「管理」できる力を持ったせいで、自分は何でもできるって思っちゃったんだね。よりによって、自分を作った神様に逆らって、案の定ボッコボコにお仕置きされちゃった。で、その時に、ごめんなさいお父様、って謝って許してもらったのが、天使。それでもあくまでも逆らい続けたのが、魔族になった。自分が与えた力が世界に害になることを恐れた神様は、魔族を追い出して、ひとところに閉じ込めた。それが、魔界。
つまりは、神様の言うなりになんかならないんだぜ!オレはオレのしたいことをするのさ!っつー、まあある種中二病みたいなのが魔族なわけじゃん?

つまりはさ。
『魔族らしい』なんていう枠にとらわれないで、本当に自分のしたいことをする、それこそが真に『魔族らしい』ことだと思わない?
殺したくない、破壊したくない、だからやらない。人間を好きになった、だから子供を作った。
人間をいじってペットにするのが楽しい、だからやる。
父親が殺せと命じたコを好きになった。だから殺さないし、デートだってその先だってやっちゃう。
ミューたん激萌え。ミューたんの可愛らしさを極限まで表現するために力を使う。
それって立派に、「自分のしたいことを、自由にしてる」わけじゃん。
『魔族らしい』と、思わない?ねえ。

自己弁護?違うよ?多分違うと思う。違うんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておこう。

まあ、魔族らしくてもそうじゃなくても、僕は自分のやりたいことをやるけどさ。
変わり者って言われても、僕は魔族である以前に、僕という生き物なんだから、ね。

“Devils” 2009.1.27.Nagi Kirikawa

カーリィのおちゃらけ魔族論です。
この世界の設定を作る時に、「天使」と「魔族」の位置づけを、いわゆる「善」と「悪」ではなく、「秩序」と「混沌」に分けたんですよ。めがてん方式で(笑)ちょっと感覚的に、理解しづらかったかもしれないなーとか、今更ながらに思ってみます。