ちり。
主の部屋から響くベルは、呼び出しの合図。
もうマティーノの半刻を回った。いつもならとうに寝ている時間だ。
先ほどは、いつもより遅いその呼び出しに応じて入れば…酔っ払った主が上機嫌で待っていて。
飲み慣れないワインでぐでぐでに酔っ払ってけたけた笑いながら、自分にまで酒を勧めてくる始末。

…正直、己の自制心を誉めてやりたかった。
酔っているゆえのものだということは判っている、しかし。
半分ほど瞼の降りた、塗れて潤んだ瞳だとか。
高潮した頬だとか。
薄く開かれた唇から漏れる、酒の匂いのする吐息だとか。
いつもきちんと整えられている髪と服が、僅かに乱れているとか。
なんというか、限界に近い。

唇に残るかすかなワインの香りを堪能してから。
小さくなったまま眠っている彼女の姉と、大人のままの彼女を半ば無理やり寝室に押し込めて。
逃げるように主の部屋を辞した。

これで一安心、と思ったところに……またあのベルが響いたのだ。
ふぅ、と眉根を寄せて息をつく。
しかし、呼ばれて出向かわぬわけにもいくまい。

ふぅ。
もう一度嘆息して、彼は主の部屋の前に立った。

「お呼びでしょうか、陛下」

かちゃり。
若干緊張した面持ちで、ドアを開ける。

もう少し、この受難が続きそうだと思いながら。

ノってまいりました(笑)最終話へのインターバルです(笑)
さあさあ、早く続きをどうぞ!(笑)