「陛下、お呼びで……陛下?!」

呼び出しのベルに応えて入室したイオタは、中央のテーブルでぐったりしているシータを見て仰天した。
「陛下!」
慌てて駆け寄り、大理石のテーブルに突っ伏していた体を起こす。
が。
「はれ、イオら……ろーしたんれすの、かおがみっつにふえてますわりょー」
くすくすくす。
起こして見やった彼女の顔は、どう控えめに見ても真っ赤で。
とろんとした目つき、回っていないろれつ、駄目押しの酒臭さ。
「陛下…飲まれましたね?」
イオタの目がすっと細くなる。
シータはけらけらと笑って手を振った。
「のまれましたわりょー!エータがぁ、がいこうかいぎのおみやげでもってきてくらさったんれすの。ほーら、フェアルーフさんのワインれすわよぉ」
言って指し示した先には、すでに空になったワインのボトル。
「エータは、おいしいワインれすわよってぇ、ごじぶんれのまれたあとにぃ、シータもごしょうみなさいなって、わたくしにもちからをわけてくらさったんれすの。
うふふ、いまのわたくしがあるのは、エータのおかげれすわぁ」
「はいはい、そうですね…でも陛下はまだお酒は」
「いまのわたくしはおとなれすわー!」
不意に、シータがものすごい勢いで食って掛かったので、イオタは驚いて言葉を止めた。
確かに、エータから力をもらっている今のシータは、誰がどう見ても立派な大人だが。
ぐでんぐでんに酔っ払って、回っていないろれつで訳のわからない事をまくし立てる姿は、とても大人には見えない。まあ、本当の大人でも酔っ払ったらこんなものだろうが。
とはいえ、そんなことを言ってみても聞きはしないのは明白で。
イオタはこっそりとため息をついた。
「イオタもおのみなさいな、とーってもおいしいれすわよぉ?」
シータはなおも何がおかしいのかわからないがくすくすと笑いながら、ワインの瓶を手に取る。
「…はれ?おかしいれすわねえ、さっきまではありましたのにー…」
そして、それが思ったより軽いことに、不満そうにボトルの入り口から中を覗いてみる。
「ざんねんれすわぁ…イオタにもあじわっていたらきたかったのにぃ…」
本当に残念そうに、そう呟いて。
イオタは、ふっと苦笑した。
「陛下」
「はぃ?」
不意に呼ばれ、上を向くシータ。

わずかな沈黙が、部屋に訪れる。

「…私は、こちらの方を賞味させて頂きましたから」
ゆっくりと顔を離して、綺麗に微笑むイオタ。
返す言葉を見つけ出せずに、ただその微笑を見つめ返すシータ。

その頬が先ほどよりも赤く染まっていたのは、
ワインのせいだけではないだろうけれど。

やっとラヴらしいラヴが(笑)
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