そもそも、はかりにかけるものではない。
女王としての彼女に忠誠を誓う気持ちも、
愛しい人としての彼女に抱く情愛も、
どちらも本物で、全く別のもの。
どちらかが増えればどちらかが減るというものではない。

そう、理性ではそう思っている。

仕事をこなす立場としての自分と。
彼女を思う立場としての自分と。
問題なく律して、両立していける、と。

だけど、こんな時は。

「こんなところに……」
王宮の裏手にある、常緑の森。
その幹と幹の隙間に隠れるようにして、双子の少女が眠っていた。
今日も今日とて公務をサボり、兄を困らせて自由に遊びまわる無邪気な女王たち。
彼女たちを良く知る自分も、当然探しに駆りだされるのだけれど。

木漏れ日がさやさやと頬に当たって、それはそれは気持ちよさそうに眠っている。
こうしていれば、本当に普通の、何の変哲も無い少女で。
人にあらざると言えるほどの魔力の代わりに自分の意思を失い、不自由を強いられながら一つの国を背負っている存在とはとても思えない。

それでも、泣き言一つ言わずにいつも微笑んでいる彼女が、とても愛しくて。
いけないことだと判っていつつも、ここで見つけたことを告げず、自由に眠らせてあげたい、と思う。
これが、くだんの天秤というものだろうか。
イオタは苦笑した。

それでも、自分がとるべき行動は一つしかない。
一時の情に流されても、結局は彼女たちの為にはならないのだから。

イオタは身を屈め、優しく声をかけた。

「陛下。起きて下さい。補佐官がお待ちですよ」

…そうしなければ、無防備に薄く開いた可愛らしい唇に、理性を保っていられる自信が無かったから。

も、もっとラヴが欲しい…!
いいお題なのにまったく生かしきれてないこの腕が憎い!憎い!(笑)