「失礼します」
かちゃ、と控えめな音を立ててドアが開く。
「陛下、何か御用…で……」
恭しく一礼してから顔を上げたイオタは、あるじの姿にぎょっとして言葉を止めた。
「用は…そうですわね、しばらくの間話し相手になっていただけますかしら」
いつもとは違う、大人の女性の姿になったシータは、そう言ってにっこりと微笑む。
傍らのベッドでは、幼児の姿になった彼女の双子の姉がすやすやと寝息を立てている。
「陛下、そのお姿は…」
「エータに協力していただきましたの」
「しかし、陛下……」
イオタの表情は暗い。
彼女がこの姿になる時は、女王としての公務をこなす時のみ。
それ以外ではさまざまな理由で禁じられている。
「お兄様は、ダメって仰いますけれど」
シータはいたずらっぽく笑った。

「イオタとお話するときは、例外ですわ」

きょとん、として。
それから、苦笑する。

「…仕方がないな……」

そう言いながらも、表情はどこか嬉しそうで。
「お茶入れようか。何が良い?」
「オレンジペコが良いですわ。お砂糖は多めにしてくださいな」
「あまり甘いものを食べ過ぎると、太るよ?」
「まあっ。ではお砂糖ではなくて蜂蜜にしてくださいな」
「…そういうことじゃないと思うんだけど…」

彼女がこの姿になること。
彼が敬語を崩すこと。

制約の多い彼らに許された、贅沢な例外。

お題サイトさんでこれは!というお題を見つけ、マトモにイオシーを書こうと一念発起してみました(笑)
10作続けていきます、よろしくお付き合いくださいませv