もし、あの時あの道を選ばなかったら。
世界は全く違っていたかもしれない。
もし、別の一歩を踏み出していたら。
あなたとあたしは出遭っていなかったかもしれない。

これはそんな、もしもの世界。

「リー」
後ろから呼び止められて、少女は振り返った。
グリーンの制服を一筋の乱れもなく着こなしている。綺麗な銀髪は後ろできちっと纏められていて、薄紫の優しげな瞳がたたえる理知的な輝きと共に彼女の几帳面さをよく表していた。
「エリー。久しぶり。どうしたの、軍科のあなたがこんなところまで」
「お前に用があったんだよ。時間はいいか?」
「ええ、今日の講義はもう終わりだから」
「そうか、じゃあちょっと付き合えよ」
「わかったわ」
そうして、彼女と並んで歩き出した少年は、ブルーの軍服めいた制服に身を包んでいる。長めの金髪を後ろで括り、意志の強そうな青色の瞳が印象的だ。
少女の名はメルティール・リーファ・シュタルト。
少年の名はレスティック・エリウス・サラディ。
共に、天界の主要機関である賢人議会と近衛軍を養成する軍官学校の生徒である。

「この間、総議長殿にお会いしたんだ」
エリーが話を切り出すと、リーの表情が少し和らいだ。
「あら、ママに?元気だった?」
「ああ、変わりはないようだったぜ。その時に、今度お前が現世界に降りるって話を聞いてな」
「ママ、そんなこと喋ったの?ただの実習よ、いずれ賢人議会に入ったら、現世界の調査に狩りだされるかもしれないんだから」
「なるほどな」
エリーは嘆息した。
「実習だから、俺には報告の義務無しってことか。そういうドライなところは、お前、本当に総議長殿にそっくりだよな」
「そういうつもりじゃないけど…あなただって遠征に行く時にあたしにいちいち報告したりしないじゃない?」
非難がましく言われたのに反論して、リーも不満そうに眉を顰めた。
エリーはわざとらしくため息をつく。
「天界の中で遠征に行くのと現世界に行くのは規模が違うだろうが。年単位で会えなくなるのに、お前はなんとも思わないわけだな。薄情なもんだ」
「薄情って…」
リーは困ったように眉を顰めた。
彼はリーが現世界に行くことを怒っているのではない。報告する必要が無いと判断した彼女に対して拗ねているのだ。
こういう時に、彼女は彼が自分より年下であることを実感する。わずかばかりの差なのだが、奥手な自分と違いずいぶんと手馴れている彼がこんな風に拗ねるのは、どことなく可愛らしいと実はひそかに思っていたりもする。
と、彼は諦めたように肩をすくめた。
「ま、薄情な女に惚れるのは家系かもな。親父はまだ総議長殿に未練があるようだし」
「総指揮官様が?まさか。じゃあどうして他の女性と結婚してあなたがいるのよ?」
「総議長殿が別の奴と結婚したんだから仕方が無いだろう。ま、婿養子ってことは家系存続のためなんだろうがな。それに、近衛軍の総指揮官がいつまでも独身のままだとカッコつかないしな」
「ママはそういうところ、ハッキリしてるから。総指揮官様の申し出をあっさり断ったときの様子が目に浮かぶようだわ」
リーは苦笑して答えた。
彼女の母親、ヒューリルア・ミシェラヴィル・シュタルトは、天界の最高議決機関である賢人議会の総議長である。その彼女が今よりもう少し若い頃に、エリーの父親であるミリテイル・フィーヴェラスト・サラディの求婚を断ったという話は、当時を知る人々にとっては記憶に残るゴシップであったらしい。大天使を守り、天界の秩序を維持する近衛軍の総指揮官と、賢人議会の総議長の二人である。それは誰しも興味を引く話題だっただろう。
「で、その総議長殿の血を色濃く受け継いだお前は、長期の実習の報告も恋人にしないまま行っちまうわけだ」
「それは…」
言いかけて口をつぐんだリーに、エリーは足を止めて彼女を見た。
「それは?」
「……言ったら余計寂しくなりそうな気がしたから…」
視線を逸らして、少し頬を染めて言う彼女に、満足そうに微笑んで身を寄せる。
頭を引き寄せて瞼に唇を落とすと、彼女はくすぐったそうに微笑んだ。
「浮気はほどほどにしてよね?」
「おいおい、浮気前提か?お前しか見てないっていつも言ってるだろうが」
「さぁ、あたしより以前にずいぶんたくさんのお姉様方と浮名を流していたようだし?」
「何度も言わせるなよ。俺に仮面をかぶせて見るような奴らに本気になるもんか。俺がこの顔を見せるのは、お前だけだ」
確かに。彼は教師や他の生徒、リーの母親である総議長や多くの大人、果ては自分の両親にまで、完璧に『優等生』の仮面をかぶって接している。その仮面の奥を見抜いた彼女に対してだけ、こんな風に本性で接しているのだ。それまで多くの女性(主に年上)に誘われ、それなりに彼女も噂を聞いていたが(主にはお姉さま方同士のさや当てトラブルとして)、彼女と付き合うようになって以降はぱったりとその噂も途絶えている。
「…まあ…信用するけど」
それでも、彼と出会うまでの彼の『噂』を払拭しきれないリーが曖昧な表情で言うと、エリーはさらにむっと眉根を寄せた。
「そういうのは信用してるって言わないね。まあいい、判らないなら判らせてやるよ。明日は安息日だろ。今日は泊まっていけよ」
「か、構わないけど…」
エリーの『判らせてやる』の意味を察して、リーが頬を染める。
彼は嬉しそうに微笑んで彼女の肩に手を回し、二人は再び歩き出した。

たたたたたた。
軽い足取りで、長い廊下を駆けている一人の少女の影。
褐色の肌によく映える鮮やかな金髪は、前髪だけ赤いメッシュになっている。一族の特徴であるオレンジ色の瞳を楽しげに細めて、彼女は目標に向かってさらに足を速めた。
前方を歩いている、紫色のローブの人物。長い黒髪で性別はわからない。
少女はたっ、と大きく跳ぶと、その背中に飛びついた。
「キールっ♪」
突如後ろから抱きつかれて、その人物はニ、三歩たたらを踏んだ。何とか体勢を整えて、首だけを後ろに向ける。
「…心臓に悪い飛びつき方をしないで下さい、エリス」
口から紡がれたのは、ハスキーな少年の声だった。
少女と同じ褐色の肌に、膝までの長い黒髪。優しげなオレンジ色の瞳に、右目だけ片眼鏡をかけている。
エリスと呼ばれた少女は少年の首にかじりついたまま、ぷうっと頬を膨らませた。
「ボクのことはロッテって呼んでってゆったじゃんかさー」
「しかし、エリシエルロッテなのですから、愛称はエリスでしょう。伯父様もそう呼ばれているのでは?」
「そなんだよねー。パパも何でこんな名前付けたんだか。エリスってなんかおしとやかそーな雰囲気しない?」
「確かに、貴女にこれほど似つかわしくない名前もないでしょうね」
「…事実だけど改めて言われるとハラ立つなー」
くすくす。半眼で文句を言う少女に、少年が肩を揺らす。
少女の名はエリシエルロッテ・フェル・エスタルティ。
少年の名はキルディヴァルジュ・デル・エスタルティ。
共に、魔界の名門貴族、エスタルティ家の一員である。

「それで、今日はどうしたんですか?」
やっと首から離れたロッテと肩を並べて歩きながら、キルが問う。
「ん、またアッシー君になってもらおうと思ってぇ♪」
満面の笑みを浮かべて言うロッテに、キルは嘆息した。
「…また現世界ですか。叔母様といい貴女といい、本当にお好きですね」
「チャカねーちゃんはペットを連れ込むのがスキなんでしょー?ボクはただちょっと遊んでみたいだけだよぅ」
「はいはい、どうとでも仰ってください。私には興味の無いことですから」
「ぶうぅぅ。いーじゃん、たまには一緒に遊ぼうよぉ」
「私はそんな面倒なことは御免です。叔母様と一緒に行かれてはいかがですか」
「チャカねーちゃん、最近なんかリゼスティアルにご執心みたいよ?ずーっといないのん」
「そういえば最近姿を見かけませんね…伯父様が北に遠征されているからでしょう」
「あー、パパがいないこの家にはキョーミないか、確かにねー」
ロッテは言ってけらけら笑った。
「ツヴァイにーちゃんは元気?最近見ないじゃん」
「父上ですか。最近は書庫に篭って何かを調べているようですよ。おかげで私も羽を伸ばさせていただいていますが」
ロッテは少しだけ眉を寄せた。
「あーんー、まだ諦めてないのかなぁ、当主」
「そうだと思いますよ。まあ、私には関わりのないことですが」
キルが『伯父様』と言っている通り、ロッテの父親とキルの父親は兄弟であり、彼らは従兄弟同士ということになる。
ロッテの父、ティーヴェルダハト・フォン・エスタルティは、エスタルティ家の現当主である。その生来の『魔族らしくない』倫理観から当主には相応しくないと問題にされていた時期もあったが、それを凌ぐほどの戦いにおける天性の勘、抜群の指揮力と駆け引きの手腕で、今は押しも押されぬ当主に納まっている。
このティーヴァが当主になるのに異を唱えていた筆頭が、彼のすぐ下の弟であるツヴァイフェラウト・デル・エスタルティ。つまりはキルの父親だ。彼はティーヴァが当主に納まって後も、まだその座を諦められずに策を弄しているという。もっとも、そのほとんどはティーヴァに歯牙にもかけられていないようだが。
ちなみに、先ほどロッテの口に上った『チャカねーちゃん』というのは、ティーヴァの数多くいる兄弟の中の末の妹である。ティーヴァに身内の愛以上の愛情を抱いており、ロッテは可愛がってもらっているが、ロッテの母親には未だにちょっかいをかけまくっているようだ。
「あーあ、ツヴァイにーちゃんも懲りないよねー。またパパに返り討ちにされるの目に見えてんのにさー」
「ご本人はそうは思っていらっしゃらないのでしょう。まあ、興味があちらに向いているうちは私も勝手が出来て万々歳ですがね」
キルはそのことにはあまり興味が無い様子だった。彼は得意の召喚術と魔道で派手に破壊活動をするのが好きらしく、当然強い相手のいる魔界にいることが多い。現世界は興味の対象外といったところだ。
ロッテは魔道を使うことが出来ないため、移動の術で現世界へ行けるキルに連れて行って欲しい、と頼んでいるという訳だ。
「ちゅーことでさ、またお願い♪いいでしょーん、キミならぱぱぱっと行けるじゃん」
「私をなんだと思ってるんですか、貴女は…」
呆れたような視線をキルが向けると、ロッテはにっと笑った。
「ダイスキなヒト、かな?」
キルは一瞬面食らったような表情をして立ち止まり、ややあって苦笑した。
「敵いませんね、貴女には」
「今さらだね♪んふふ」
ロッテは楽しそうに笑いながら、首を伸ばしてキルに口付けた。

「ふぅ…やっぱり天界とは勝手が違うわね…」
手に持った水晶のようなものを見つめながら、リーはため息をついた。
実習と称して現世界に降り立ってひと月。生徒は一人一人に与えられた地区を調査し、この水晶に記録していく。
リーは比較的順調に担当の地域を調査していた。カエルの子はカエルと言うか、彼女は成績も優秀で課題も申し分なくこなしている。このペースなら、丸1週間休憩を取ったところで進行に差し支えないのだが、何事にもきちんとやらないと気が済まない彼女はそういう気は起こらないらしい。
現在は拠点としている宿のある街から少し離れた森を探索しているところだ。旅人を装うためいつもの制服ではなく白を基調とした旅装束を着ているが、着慣れない服を着ているためか少し体を動かすのが億劫な気がする。それは何も服だけのせいではなく、生まれ育った環境と全く異なる未知の世界を歩いているという状況のせいかもしれなかった。
「…取りあえず今日は帰りましょうか」
言って、水晶を道具袋に仕舞ったその時だった。
ぐおぉぉぉっ!
かなり近いところから聞こえた獣の咆哮のような声に、リーははじかれたように振り返った。
ばきばきばき。
木がなぎ倒されるような音。変わらず続く獣の声。
しかし、その声が獣でないことは、こちらまで伝わってくる気配で判った。
「…レッサーデーモン!」
魔界からの邪な思念が動物などに憑依し具現化する魔物である。野生の獣ではありえない、明確な破壊衝動を持って行動する。野放しにしておいたらこの森どころか街までも破壊しかねない。
リーは腰に携えていた剣を抜いて、咆哮の聞こえた方に向かって走り出した。
軍官学校の官僚科に所属する彼女だが、実は魔道に関してはからきしであり、代わりに剣を振るうことを趣味としている。今回現世界に降りた天使たちには緊急時に限り魔道の使用などが許可されているが、彼女の場合は帯剣を許可され、万一の時にそれを振るうことを許されているのだ。
めきめき、という音がして、前方の木が倒れる。その奥に、黒々とした毛並みが蠢いているのが見えた。
リーはまっすぐそちらに向かって地を蹴った。
「たぁっ!」
上段からまっすぐに斬りつける。剣は魔物の背に深々と食い込み、魔物の体が跳ねた。
ぐわおぉぉぉぅっ!
何とか痛みを払おうと、めちゃくちゃに腕を振り回してリーを跳ね飛ばそうとする。
リーはその力に逆らわずに剣を抜くと、地面に足をつけた。
が。
「きゃあっ!」
着地した場所があまりよろしくない。先ほど薙ぎ倒された木々の枝が折り重なって足場は非常に不安定になっており、ばきばきという音がしてリーは体制を崩した。
があぁぁぁっ!
その瞬間を、魔物は見逃さなかった。腕を振り上げ、鋭い爪を彼女に向かって振り下ろす。
「くっ…!」
その爪に傷を負わされることを覚悟したその時。
だすっ!だすだすだすっ!
その腕に、胸に、数本の矢が立て続けに刺さり、魔物は悲鳴と共に後退した。
思わず振り返ると、そこには矢を構えた風変わりな少女。
彼女はふっと笑うと、言った。
「早くやっちゃいなよ。手負いの獣は面倒だからねぇ」
その言葉に、気を取り直して魔物の方を向く。
剣と矢の応酬にすっかり逆上した魔物は、鋭い咆哮をあげてこちらに向かってきた。
があぁぁっ!
先ほどと同じように、爪を振り下ろす。
が、リーは素早く跳ぶと、振り下ろされた爪を蹴って、魔物より高く跳び上がった。
「であぁっ!」
気合と共に、彼女の構えた剣が、魔物の額に深々と吸い込まれていく。
ぐぎゃあぁぁっ!
魔物の体がまた跳ねたが、今度は彼女は剣を離して距離を取った。
バタバタともがく魔物の体が、先端の方から黒い塵へと変わっていく。
ざぁっ、と音を立てて、魔物の体が空へと溶け、額に刺さっていたリーの剣も地面に落ちて刺さった。
リーはゆっくりとそこに歩いていくと、刺さっていた剣を取る。
「やー、危なかったねぇ?んー、でも余計なお世話だったかな?」
後ろできゃらきゃらと笑う少女に、振り向いて…今度は彼女に向かって剣を構える。
「およ?」
それを驚いた風でもなく、彼女は面白そうにこちらを見た。
褐色の肌に尖った耳。鮮やかな金髪は前髪だけ赤く、後ろで二つに纏められている。エキゾチックな紫色の装束を身に纏ったその姿は、ただの風変わりな冒険者の少女…のようにも見えた。
が、リーには彼女がそんな存在ではないことは判っていた。
「あなた…魔族ね?」
油断なく構えながら、厳しい視線を彼女に向ける。
彼女はにいっと唇の端を吊り上げると、言った。
「そーゆーキミは天使ちゃんだね?んふ、初めて見るよ」
「さっきのデーモンは、あなたの仕業?」
「はぁ?ボクが何でわざわざ自分で放ったモンスターやっつける手伝いしてあげなきゃなんないのさ。意味ないじゃん」
「………」
理屈は通っている。
が、油断はならない。リーは厳しい表情のまま、重ねて問うた。
「…現世界に何の用なの?」
「ん?遊びに来たんだよ、ここおもろいもんねぇ」
「そんなことを信じるとでも思うの?」
「信じたくなきゃ別にいーんじゃない?ボクはホントだよとしか言えないし」
「ふざけないで!」
ふわ。
リーの怒気と共に、彼女の背に純白の翼が広がる。
彼女はにっこりと笑うと、言った。
「へぇ、それが天使の翼かぁ。キレーじゃん」
そして、顎を引くとすっと目を細める。
ぐじゅ。
生々しい音がして、彼女の背から黒い翼が生えた。
先ほどの、少し軽い雰囲気とは違う…暗く、鋭い刃物のような雰囲気が彼女の全身を纏う。
「キミがその気なら、ボクだってお相手するのにやぶさかじゃないけどね?
けど、こんな街の近くで、天使と魔族がドンパチやらかしたらイロイロまずいんじゃない?
キミ、まだ若いんだし。正規の任務でここに降りてきたわけじゃないんでしょ?」
彼女の言葉に、リーは眉を顰めた。
そこまで天界のシステムに詳しい魔族となると、かなりの高位魔族のはずだ。
「…あなた…何者?」
ゆっくりと問うと、彼女はすっと目を細めた。
「人に名前訊く時は、自分が名乗るのが先じゃん?それとも、天使ちゃんはそんな礼儀もよくご存じないのかなぁ?」
茶化すように言われて、むっと相手を睨みつける。
「…メルティール・リーファ・シュタルト」
「リーファか、そんじゃリーだね」
彼女はにっこり笑うと、ゆっくりと自分の名を口にした。
「ボクはロッテ。エリシエルロッテ・フェル・エスタルティ」
「…エスタルティ!」
紡ぎ出された名前に、リーの目が見開かれる。
名前だけは聞いたことがある。魔界で覇権を争っている高位魔族のうちのひとつ。当然、その実力のほどは計り知れない。
リーは唇を噛んで剣を下げた。
ロッテの言うとおり、ここでエスタルティ一族の者と交戦するのは分が悪い。勝てるか勝てないかはともかく、周りに出る被害は甚大だろう。一介の研修生である彼女が背負うリスクとしてはいささか重過ぎる。
リーは悔しそうに剣を収めると、羽をしまった。
ロッテも楽しそうに微笑んで、羽を元に戻す。
「判ってくれたみたいだね♪そんじゃ、いこっか」
「はぁっ?!」
当然のようにリーに向かって歩いてくるロッテに、リーは眉を寄せた。
「ん?キミ、近くの街に泊まってるっしょ?キミといるとおもろそうだし、ついてくよ♪」
「ちょっ、勝手にそんなこと…って、どうしてあたしが宿取ってるって知ってるの?」
「実は宿から尾行てたりして♪変わった気配のコがいるなって」
「ええっ?!」
この発言にはいささかショックを隠しきれない。よりによって魔族に尾行られていることに気付けないなんて。
がっくりと肩を落とすリーに、ロッテが楽しそうにぽんと手を置いた。
「まーまー。ボク魔道とか剣とか使えない代わりに気配隠すのとか得意なのん。気にしない気にしない」
楽しそうなその様子を恨めしげに見上げる。
「じゃ、いこいこ♪やーん、天使ちゃんとカップリングなんて楽しくなりそー♪」
「ちょっ、あたしは一緒に行くなんて言ってないわよ?!」
喚くリーの肩に手をかけて、楽しそうに歩き出すロッテ。
二人は賑やかに、獣道を街へと向かって歩いていく。
そして、森に静寂が戻った。

もし、あの道を選ばなくても。
もし、別の一歩を踏み出していても。
あたしの道は、きっとあなたの道へと繋がっている。

どんなことがあっても。
あたしは必ず、あなたに出会う。

どんな、もしもの世界でも。

“If…”2004.11.10.Nagi Kirikawa

もし、ミシェルがティフに出会っていなかったら。もし、ティーヴァがリリスに出会っていなかったら。こんな未来もあったのかな、という感じです。もともとは「エスタルティな衣装を着たらロッテはどんな感じだろう」という妄想から始まったんですが(笑)このエスタルティロッテと制服リーはイラストにしています。 → If…
ミシェルがティフに出会っていなかったら、当然リーは生粋の天使で、ファミリーネームが「トキス」ではなく、当然ファーストネームも「ミカエリス」でもありえない。誰だこれって話ですが(笑)ミシェルがフィーヴと結婚してしまうとエリーとラブラブできなくなるので振っていただきました(笑)ティフと出会っていないのですから、ミシェルはあんな綾波ミシェルのままですね(笑)「元気だった?」と言っているとおり、多忙であまり家にも帰っていないようです。エリーの「表の顔」は、act.3の「エリウス」のものだと思ってください。年上お姉さん方にモテモテの彼(笑)
ティーヴァがリリスに出会っていなかったら、ティーヴァはいろいろ言われつつも当主になっていて、ロッテの名前も魔族バージョンと。当然ツヴァイとキルは当主の座とは直接関係ないので名前が微妙に違います。嫡子はきっとロッテにいるだろうお兄ちゃんがなってるんでしょうし…。キルロテは順当に従兄弟同士で仲が良く。そして最初から身内だったとしたら、ロッテとチャカはきっとすっごい仲良いと思うんですよね(笑)ロッテの金髪赤メッシュはリリス譲りなので本当はおかしいんですが、染めてるんです(笑)
で、リーとロッテが出会ったとしたら、ロッテはともかく、リーは絶対敵だと思うかなぁと。でものらくらと翻弄されちゃったりして(笑)
なんか、こんな二人も良いですね(笑)
そして、微妙にラブを入れて自分の萌えも満足(笑)このカップルの馴れ初めとかも、妄想したら面白そうですね(笑)