その日は、何だか朝から慌しかったのを覚えている。
と言っても、彼自身が忙しく立ち回っていたわけではない。
そして彼の家の中も、それほど忙しい様相だったわけでもない。
ただ、何と言うのだろう。家の中の空気が妙にピリピリしていて、母は朝からソワソワしているようだった。話しかけても上の空で、時折窓の外を見ては外へ出かけ、そして10分も経たずに帰ってきてため息をつく。
父はそんな母を「落ち着け」とたしなめるが、そう言う父もどことなく緊張している様子で、広げられた新聞はいつまで経ってもめくられることは無かった。
彼はわけがわからぬまま、それでもその理由を両親に問うのはなんとなくためらわれて、おとなしく部屋で遊んでいた。
幼馴染のところに遊びに行きたかったが、そう言って出かけようとしたら強く引き止められた。その時の母の必死な表情に、やはり「なぜ」と問うことも出来ずに諦めた。
どれくらいそうしていただろう。窓から強い西日が差し込んでいたと思う。
「テッド」
部屋に入ってきた母は、窓から差し込む夕日に照らされているのに、妙に青ざめて見えた。
彼が見上げると、母は腰をかがめて膝をつき、そっと彼の両肩に手を置いた。
赤い目元を悲しげに歪めて、ゆっくりと言う。

「ユリアが………リンちゃんのお母さんが、亡くなったの」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。
リン。幼馴染の女の子の名前。今日遊びに行こうとして止められた。
そのリンの母が、亡くなった。まだ幼い自分にも、その意味はわかった。
混乱する頭で、やっと聞き返す。
「…う、っそ。なんっ……え、だって、昨日行った時には…!」
昨日遊んだ帰りに、リンを家に送り届けた時。リンの母は笑顔で礼を言ってくれ、おすそ分けだと果物を持たせてくれた。
母の顔がさらに歪む。
「昨日の、夜、ね……魔法の、実験っ、で…事故が……」
耐え切れずに顔を覆う母。
リンの母は、彼女の親友であった。親同士の仲が良いことから、リンともよく遊ぶようになったのだ。
「かあさん……」
「…っ、ごめんね……事故があって、病院に運ばれたんだけど……さっき…知らせが」
「そう…なんだ…」
彼はショックを受けながらも、目の前で泣き崩れる母親を気遣うように見た。
母は彼の瞳を見返し、泣きそうな顔で笑ってみせる。
「だからね…今日はお母さん、リンちゃんのお家に行って、色々お手伝いしてくるから。
テッドはお父さんとお家にいて。いい子にしててね」
「う……うん」
ここで自分も一緒に、と言えるほど、彼はまだ年かさではなかったし、辛そうな母を見ているのも悲しかった。
慌しく家を出て、通りを挟んではす向かいの家に入っていく母を見送る。
「……リン…大丈夫かな…」
昨日とまるで変わらないように見える静かに閉じたドアを見ながら、彼は心配そうにそう呟いた。

次の日の葬式には、街中の人が参列した。
大通りで魔法屋を営む夫婦。魔法話が暴走しがちな主人を支え、穏やかな笑顔で客をもてなしていた夫人は、近所でも評判の良妻であった。
その夫人の突然の死に、多くの人々が涙を流しながら別れを告げに訪れた。
白い花で彩られた棺の傍らで、黒い服に身を包んだ主人とその娘が、弔問客に挨拶をしている。
両親に連れられて訪れたテッドは、どうしていいかわからずにただ手を引かれて歩いていった。
「ゲイル、大変だったな」
父がそう声をかけると、主人…リンの父ゲイルは憔悴した表情で弱々しく微笑んだ。
「ジョゼフ…テッドも、来てくれてありがとう。
ソフィも、昨日はありがとうな。こいつも喜んでると思う」
「ゲイル…」
母…ソフィはまたハンカチで目元を押さえた。
テッドはまだどこか現実感がなく、どこか遠いところで会話しているような気がする親たちから視線を下にずらした。
ゲイルの横に立つリン。
彼と同じように黒い服を着て、オレンジ色の髪を黒いリボンでまとめている。
いつもの勝気な表情はなりを潜めていたが、ソフィのように悲しみに沈む様子もまたない。ただ人形のように表情を無くして佇んでいる。
「リン……」
テッドは何と声をかけていいかわからず、弱々しく彼女の名を呼んだ。
リンは表情のない瞳を彼に向けて、それから苦笑した。
「来てくれてありがと。母さんに、お別れを言ってあげて」
「っ……」
その様子に、テッドは少なからず面食らって彼女を見た。
いつも勝気な彼女が取り乱して泣きじゃくるさまを期待していたというわけではない。だが、あまりに普通すぎないか。
いつも優しかったリンの母。小さいころから家族同然だった。その彼女が死んでしまったなどと、今でも信じられない。自分でさえこんなに、身を切られるような思いをしているのだ。
まして実の娘のリンが、母の葬式に涙ひとつこぼしていないとは。
「おまっ……」
「テッド、ほら」
リンに何か言い募ろうとしたテッドを、母が優しく促す。
「……」
テッドはまだ何か言いたげな表情のまま、母に促されて棺のそばへと歩いた。
棺から覗くユリアの顔は、とても綺麗で安らかな表情をしていた。今にも目を覚ましていつものようににこりと微笑みそうな。
だが、彼女はもうあの優しい微笑を向けてくれることはない。
「……おばさん……」
じわり、と涙がこみ上げてきた。
これが最後の対面なのだ。これを最後に、彼女は天の国へと旅立ってしまう。
「今まで、ありがとな……」
それだけ言うのが精一杯だった。
涙がぽろぽろとこぼれ出て、袖で拭う。
傍らの両親も、声を上げて泣いていた。
教会のあちこちから、同様の啜り泣きが聞こえる。彼女がそれだけ、慕われていた証拠だ。
(さようなら……)
声には出せず、ひたすら涙を拭いながらそう思う。
彼女の天の国までの道が、安らかであるように。
テッドはただ一心に、それだけを願った。

葬式はしめやかに執り行われ、たくさんの人が見送る中、ユリアの棺は無事埋められた。
神父が教会に戻り、参列者も次々と引き上げていく。
一番関係の深かったテッドの一家だけが、最後まで残っていた。
「これから大変だな……」
「何かあったら、いつでもうちに言ってね」
憔悴した様子のリンの父に、両親が心配そうに声をかける。
すると、力なく笑うリンの父の横で、リンがにこりと微笑んで見せた。
「大丈夫よ、おじさん、おばさん。あたしが母さんの分まで、父さんの面倒見るから」
その笑顔は、多少元気はないがいつもの勝気な彼女のもので。
両親はやわらかい笑顔を浮かべた。
「リンちゃんはたのもしいな」
「でも、何かの時にはいつでもうちを頼ってね。テッドもリンちゃんのこと、手伝ってあげるのよ」
「え」
いきなり自分に振られ、戸惑うテッド。
はは、とリンの笑う声がした。
「テッドに手伝ってもらったらよけいひどいことになりそう」
「なっ…んだよそれ!」
「大丈夫よ、あんたに手伝ってもらうことなんてないから」
「うっせ、おれだってなんもしねーよ」
「こら、テッド!何てこと言うの!」
売り言葉に買い言葉で言い返すテッドをやんわりと叱りつける母。
リンはもう一度そちらににこりと微笑んだ。
「ね?おばさん。男なんていざっていうときぜんぜん役に立たないんだから。
ほら、父さんなんてもうこんなにしおれちゃってグズグズ!神父さんとはあたしが話したくらいなのよ?まったく、だらしないわよね。
それよりあたし、おばさんに料理教えてもらいたいな。これからはあたしが母さんの代わりにご飯作らなくちゃいけないから」
「リンちゃん……うん、いつでも来てね。おばさんたくさん教えてあげるからね」
「うん、おばさんの料理おいしいから、あたしもがんばるね」
仲よさげに話すリンと母の向こうで、リンに役立たず呼ばわりされたリンの父は自分の父と小声で話している。
テッドはなんとなく釈然としない気持ちで、その様子を見ていた。
リンの父は傍目から見ても気の毒になるほど憔悴していて、愛する妻を失ったショックがうかがえる。
だが、娘であるリンはまったく悲しげな様子を見せず、笑顔すら見せているというのはどういうことなのか。
(おばさんが死んで…悲しくないっつーのかよ…)
もし自分の母が死んだら。考えたくはないが、どんなに悲しみにくれることだろう。
仲良くしていたとはいえ他人の母が亡くなっただけでこんなにも悲しいのに。自分の母が死ぬ時のことなど、想像出来ない。
なのに、彼女はなぜ涙ひとつこぼさず、まして笑顔など見せられるのか。
自分の母親が死んで、悲しくないというのだろうか。
(なんだよ、あいつ……)
テッドは理不尽な思いを抱えたまま、楽しそうに話すリンと母を見つめていた。

笑顔の下に別の気持ちが隠れているのかもしれない、ということに思い当たるには、彼はまだ少し幼すぎたのだ。

「ったく、なんでおれが…」
テッドはぶつぶつ言いながら、母の持たせた料理の皿をはす向かいの幼馴染の家へと届けに歩いた。
日はもうだいぶ暮れかけ、商店街は一様に店じまいの支度を始めている。今日はさすがにリンの家の魔法屋は休みだった。
せめて今日は家事に追われず、ゆっくりと食事をして欲しいと、母が作ったものをテッドに持たせたのである。
「おーい」
勝手知ったる他人の家、といった風情でいつものようにドアを開ける。
しん、とした重い空気が家の中から伝わってきた。
「リン…?」
その雰囲気に気圧されるように、おそるおそる足を踏み入れる。
暗い店のカウンターを越えてリビングに入ると、やはりそこもまだ暗いままだ。
いつもは家族3人が談笑に花を咲かせるそのソファに、夕闇にうっすらと影が浮かんでいて、テッドはおそるおそる声をかけた。
「……おじさん?」
のそり。
テッドの声に、ゆっくりとその影が頭をもたげた。
「……テッドか」
憔悴したその声は、どこか別の、手の届かない場所から響いているような、そんな不思議な気持ちにさせられる。
「…おじさん、明かり…つけたほうがいいよ」
このうえ彼までもどこかに行ってしまうような気がして、テッドはあえて現実的な言葉を投げかけた。
リンの父はそこで初めてあたりの様子に気が行ったというように、のろのろと辺りを見回す。
「あ……ああ、もう…こんな時間か」
「あ、えっと、おれがつけるね」
テッドは手早く部屋の明かりをつけると、持ってきていた器をリビングテーブルに置いた。
「あのね、これ、おれの母さんが…食べてって」
「……そうか」
リンの父は情けなさそうに苦笑した。
「すまないな。ソフィに…おかあさんに、ありがとうと伝えてくれ」
「うん」
テッドは力強く頷くと、きょろきょろと辺りを見回した。
「…リンは?」
「…さっきまではいたんだが…部屋に戻ったかな」
リンの父も、不思議そうに辺りを見回す。
テッドは努めて元気よく、彼に言った。
「おれ、呼んでくるよ。おじさんは、先に食べてて」
「しかし……」
「今日は疲れてんだろ。かあさんだって、頼れって言ってたじゃん。
いいから、おじさんは先に食べてて」
「……そうか……すまないな」
リンの父はもう一度苦笑して、テッドが持ってきた器を手に取った。
テッドはそれを確認してから、リビングを後にするのだった。

「…ったく、どこいったんだ、あいつ…」
リンの部屋に向かったが、寒々とした部屋にリンの姿はなく。
他の部屋も一通り覗いたが、リンはどこにもいなかった。
それを正直に言ってリンの父を心配させるのも忍びなく、テッドは何も言わずに外へと出た。
彼女の行きそうな場所は、小さい頃からのつきあいでよく判っている。加えてもう暗くなっているのだ、そう遠くへは行っていないだろう。
「……いた!」
あたりをつけて探すと、果たしてすぐに彼女の姿は見つかった。近所の公園、よく2人で遊んでいる大きな滑り台の上。
沈みかけた、というよりもう沈んでだいぶたつ夕日の残り滓のような僅かな光を、じっと見つめている。
「おい、リン!」
テッドが無遠慮に大きな声で名前を呼ぶと、リンはびくっとしてこちらを向いた。
「……テッド」
「おまえ、なにしてんだよこんなとこで!」
「…え、別に……ていうか、あんたこそなんでこんなとこにいんのよ」
リンはきょとんとした後、いつものように眉を寄せて尊大に言ってくる。
その様子に、テッドも同じように眉を寄せた。
「お前が家にいないから、探しにきたんだよ。なにやってんだよ、おじさん心配するだろ」
「あ、うん……わかった、すぐ帰るから」
「ったく……行くぞ、ほら」
テッドが手を差し出すと、リンは一瞬きょとんとして、それからふいと顔をそらした。
「…先、行ってて。すぐ行くから」
「なんで」
「もうちょっとここにいたいのよ」
「だからなんで!もう暗くなるぞ、早く帰んないとおじさん心配するだろ」
「ちょっとだから。もういいでしょ、帰るって言ってんだから。あんたこそ、早く帰らないとおばさん心配するわよ」
「…っ、いいから来いよ!」
テッドは苛々してリンの手を引いた。

昼間から感じていた苛つきが一気に吹き出たような気がした。
自分の母親が亡くなったというのに、涙ひとつこぼさず笑っていることに。
傷心の父親を放って、一人でこんなところにいることに。
一体何をやっているのか、悲しくないのかと腹立たしかった。

「ちょっ…何すんのよ、はなしてよ!」
リンは驚いてテッドにつかまれた腕を引き返した。
「いいから来いよ!なんなんだよおまえ!」
ぐい、とまた引き寄せるテッド。
「おばさんが死んだってのにヘラヘラして、今だっておじさん一人でボーっとしてたぞ!
なにやってんだよこんなとこで!おじさんのそばにいてやれよ!」
「るさいわね、あんたに関係ないでしょ!」
「関係あるよ!」
「ないわよ!」
「あるっつってんだろ!」
「なんでよ!」
「なんでもだよ!」
「意味わかんない!」
最後にはまさに子供のケンカそのものの言い合いになりながら、腕を引っ張り合う。
「いいからとにかく来い!」
意地になったテッドが腕を強く引くと。
「はなしてよっ……!」
ぽた。
手の甲に冷たい感触があって、思わず手を止める。
ぎょっとして顔を上げると、リンの瞳から大粒の涙が零れていた。
「っ……」
驚いて手を離す。
リンはばつが悪そうに、自由になった手で目元をこすりあげた。
「…もういいでしょ。あっちいってよ」
不機嫌そうな涙声で言う。
「お、おまえ……」
テッドはすっかり混乱した様子だった。
「なんっ……いま、な……え…?」
テッドの混乱ぶりも彼が何を考えていたのかも何を言いたいのかも、全てお見通しというようにリンはため息をついた。
「ばーか……母さんが死んで、悲しくないわけないでしょ」
「だっ……おまえ、さっき…っ」
葬式で、泣いていないどころか笑ってたじゃないか、と言葉に出せずに喉を詰まらせるテッド。
リンはまだ不機嫌そうな表情で、視線を逸らした。
「あんた、あたしが今から言うこと、しゃべるんじゃないわよ」
「は?」
「しゃべんないって約束するなら、話してあげる」
「なっ……わ、わかったよ」
その言い草にまた少しムッとしつつも、テッドはリンの隣に座った。
リンはまた、日の沈んだ後の薄く光が残る山の方を見ながら、ぽつぽつと話し出す。
「…あんた、母さんはなんで死んだって聞いた?」
「え。…事故で、って聞いたけど」
「事故は事故でも、魔法の実験中の事故だったの」
薄闇に浮かぶリンの横顔は、葬式での様子が嘘のように痛々しい。
「夜に大きな音がして、実験室に行ってみたら中がぐちゃぐちゃになってて、母さんが……」
思い出したくない、というように目を閉じて首を振って。
「…父さんは、自分のせいだって思ってる。父さんが母さんを死なせちゃったんだって思ってる」
「………」
リンの父の憔悴ぶりを思い出し、テッドは俯いた。
「……あたしが」
搾り出すように、リンの声が響く。
「…あたしが、泣いたら……父さんは、もっともっと自分が悪いって思う……あたしから、母さんを取っちゃったって…自分のせいだって……もっと、そう思うでしょ…
だから……あたしは、泣いちゃいけないの。母さんが死んで残念だけど、母さんの分まで笑って、父さんを支えてあげなくちゃ……」
ぎゅ。
膝の上に乗せられたリンの手が、スカートをきつく握り締める。
リンの方に目をやれば、涙があふれるのを必死に堪えている彼女の表情。
「リン……」
何と声をかけて良いか判らぬ様子のテッドに、リンは再びきっときつい視線を向けた。
「…だから、あんたはこのこと、誰にも…特に父さんには、ぜったい言うんじゃないわよ」
「…………」
「返事は!」
「わ、わかったよ……」
しぶしぶ、というよりは、どう返事をしたら良いか判らぬ様子で、テッドはそう答えた。
リンは信用できるかどうか、というような顔をして、それでももう一度ため息をつくと、すっくと立ち上がる。
「あー!なんかあんたに話したらちょっとすっきりした!」
すがすがしげに笑って見せた表情も、今のテッドには無理をして作っているように見えた。
しかし、どう言葉をかけたらいいかわからなくて。
テッドが戸惑っていると、リンはひとつ背伸びをして、テッドに言った。
「ほら、あんたあたしを探しにきたことになってんでしょ。いくわよ」
「あ、う、うん……」
リンが言ってさっさと滑り台を降りてしまったので、テッドも戸惑いながらそれを追う。
滑り台を降りると、先に下りて待っていたリンがテッドの手を取った。
「いこ」
「お、おい」
一方的に言い渡し、テッドの手を引いて歩き始める。まったく、どちらが探しにきたのかわからない。

テッドの手を引いて歩くリンの背中を見ながら、テッドは思った。
母を亡くし、父を気にかけながら無理に笑って。
この少女は、周りのことなど気にかけずに好き勝手にやっているように見えて、こんなにも周りを見て、心を砕いて、周りのためにと己を殺しているのだ。
そうして今のように、誰もいないところでひとりで泣くのだろう。

今はまだ、そんな彼女にどう言葉をかけていいかわからない自分だが。
己を殺して周りのために涙を堪える彼女を、自分だけはずっと支え続けていよう。
ずっと、彼女を守っていこう。

ぎゅ。
握られた手に力を込めると、リンは不思議そうにこちらを振り返った。
「なに?」
「…なんでもねーよ。行こうぜ」
テッドは足を速めて、逆にリンの手を引いた。
「…ヘンなの」
リンは釈然としない様子で、それでも少しだけ嬉しそうにその後をついていく。

陽はもう完全に落ちきって、薄闇を街の明かりが照らし出している。
幼い少年と少女は、手を取り合ってその中を駆けて行くのだった。

“The Memory”2011.2.13.Nagi Kirikawa

テッドがリンを好きになったときの話です。好きになった時というか、自覚した時というか。イメージ的には、6歳とか7歳とかそのあたり。リンはませてますが、テッドは単純なガキです(笑)
クロトリではルッカのお母さんは死んでいるわけではなくケガをして歩けない(後に過去を操作してケガをした事実を消すイベントあり)のですが、その原因は半分ほどルッカにあり、ルッカはそのことでずっと自分を責めていました。
そのね、傍若無人に見えて実は人一倍気にしぃで臆病なルッカの魅力をそのままリンに投射しているわけなのですが(笑)テッドが怖がって引き離したがるほどにリン父にリンを溺愛していただかなければ困るので、お母さんにはあえて亡くなって頂いています。で、こういう理由があったらテッドもリンのことを見る目が変わってきっかけになるだろうし、お父さんも余計にリンのことを溺愛するんだろうなあと思って。がんばって気を使っても所詮は7歳児ですから、リンがこういう思惑で無理をしてるっていうのはお父さんにも判ってると思うんですよね。だから余計に溺愛する、という…おそらくはそういうところがお母さんにそっくりなのでしょう(笑)
絶対混乱するのがわかっていたのであまり名前を出したくなかったのですが、「リン父」「リン母」「テッド父」「テッド母」と表記するのも間抜けだし読んでるほうも読みづらそうなので名前出してます…判りづらかったらごめんなさい。
リン父:ゲイル
リン母:ユリア
テッド父:ジョゼフ
テッド母:ソフィ
です。もうちょっとひとりずつ上手く出せればよかったな…文章って難しいですね。