泡沫の人魚姫
そして、ミケは手鏡を手に取り、そして。
「こんな夢みたいな世界で、なければ!」
叫んで、それを床にたたき付けた。
「……あーあ、泣かせましたねぇ」
「……泣きますか?」
「泣きますよ」
ゆっくり目を開くと、宿のベッドに横になっていた。すぐ横にいたリリィも目を開く。
「悪い人ですねー、心から信じて頼っている人を捨てて、出て行っちゃうなんてー」
「……悪趣味な夢を見せないでください。本当に罪悪感が沸いてくる」
身体を起こす。そして、頭に手を当てる。ちゃんと治っているようだ。
「なんで、あなたまで寝てるんですか?そもそも殴ったのあなたですか?どういうことをしたかったんですか?」
「殴ったのは、私じゃないですよ。殴られていたあなたを、タイムリーにひろっただけですってば。ちゃんと宿まで連れてきてあげたし、怪我も治してあげましたよ。面白いからそのまま夢を見せてあげましたが」
外は、夢の中のように、綺麗な月が浮かんでいる。
「そら、どうも。で?」
「今回は、私もミケさんの夢に入り込んでみたんですvどうでした?清純な私v萌えましたか?」
「入り込んでみたって」
「ベースはあなたの夢です。方向は私がある程度決めましたし、細部も決めましたが、基本的にあなたの夢ですから、それ以上はあなたの意志次第でしたね。都合良く都合良く持っていくこともできたと思いますよ」
あの夢が、全部自分の頭の中だとは。
……あのリリィも自分の想像だとしたら、と思うと寒気がした。
「あ、私も頑張って乱入しましたよvまぁ、あなたの頭の中ですからね。今の記憶とかぜーんぶ吹っ飛んでましたから、あの私がいいと思えばあのまま幸せにお金と権力の中で生きていられましたよ、ミケさん」
「そりゃ、もったいなかったですね」
それでも。
彼女の見せる夢だと知って、それでも「今」の関係が良いと判断して……こっちに戻ってきた。
「じゃあ、ああいう僕を愛してくれたあなたも、僕の妄想だと」
「ああ、あれですか。……アレは、本当のことでしょうね。白百合姫を助けて、ずっと側にいたら、凄く信頼して、深く愛したと思いますよ」
「……あの無茶苦茶な迷惑行動は、愛情だと……?」
「愛情です」
「わざわざ死にそうな事をしたのも、愛だと?」
「好きな人が、助けに来てくれる。自分は愛されているんだと、知りたかったんでしょうねぇ」
「…………へえええ、今のあなたとあんまり変わらない愛情表現のような気もしますが?」
「うふふふ、そうなんですー、ミケさんに愛されてるか知りたくてイタズラしてるんです、きゃ、乙女心は複雑ですv」
「死ねばいいのに」
すっぱり吐き捨てる。
「はー、今度はちゃんと寝かせてくださいよ。とっとと帰ってください」
「いやーん、せっかく助けてあげたのに、お礼もナシですか?」
「お礼」
「はい、夢の中では、恋人だっていくら言ってもしてくれなかったことですv」
「…………寝かせてくれてもいいと思いませんか……」
「嫌ですvしてくれないなら、遠慮無くいただきますv大丈夫、夢の中と違って、私は気持ち良くしてあげられますから」
「黙れ、魚類」
言って、真横の少女を押さえつける。
「あら」
「アレが夢だと分かった時。僕は自分の夢にあなたが入り込んでいるのが分かって……それでも、白百合姫という欠片じゃなくてあなたが全部欲しいと思った。……多分、あの鏡、割らずにいたら……僕はあなたの魔法がかかって、目が覚めなくて。一緒に夢に入り込んだあなたも、夢から出られなくなったのではないですか?」
「そうですよ。欠片とはいえ、私を、あなたが死ぬまでずっと独占し続けることは可能でしたけれど」
「……冗談じゃありません。フェアじゃないでしょう。僕が死んだら、夢が解除されて、あなたは解放されるんでしょう?そんな一時が欲しい訳じゃない」
「ふふ」
「なんですか?」
「いいえ、何でも。じゃあ、一時以上あなたの物にするために、頑張ってくださいねぇ?」
「……むかつく。目が覚めて良かった」
泣かせてやりたい、本当に。
そう言った彼を見上げながら、リリィは楽しそうに笑った。
わたくしは、あなたがのぞんでくれるなら、ほんとうに……しぬまでいっしょでも、よかったのよ?
だって。
寿命は確かに長いですが、食べずにずっと眠っていたら死ぬのは、私も同条件なんですからね?
何か色々と頑張っててくれてたみたいなんですが(笑)ひとまず本編だけ?頂いた形になるのかな(笑)
もう何かこのシリーズだけでパラレルみたいに出来ますよね(笑)というくらい萌えました、危うく特設ページを作るところでしたがすんでのところで踏みとどまりました(笑)
相川さん、どうもありがとうございましたv