壊したくなる5つの衝動
05:せめて、此処まで墜ちてくれればいいのに
「……はあ」
「どうかしました?」
大きなため息をついたミケを、まだ楽しそうに覗き込むリリィ。
ミケはそれを恨めしそうに横目で睨んで、またため息。
「…認識した現状にたそがれてるんです。ほっといてください」
実力行使で拒否しても無視しても、何をしても勝てる気がしない現状。
それなのに、引き止めて、あまつさえ美しいと思ってしまう自分。
どれだけあがいても、手が届かない。届く気がしない。
こんな思いを胸に抱き続けるくらいなら、いっそ何もかも壊してしまいたいのに、それすらも叶わない。
せめて。

「せめて、ここまで堕ちてくれればいいのに」

最後の呟きは、言葉について出た。
きょとんとするリリィ。
それには構わずに、再びため息をつく。
無駄に頭が回る彼女は、それだけで全てを察したらしかった。
にこ、と微笑むと。
「甘いですよ、ミケさん」
するり。
ミケの正面に立って、その首に腕を回す。
「私に堕ちてきてほしいだなんて。私が、そんなことすると思うんですか?」
「……思いませんけど。でも、そうなったらいいなあと思うくらいはいいじゃないですか」
「思うだけじゃあ現実には出来ませんよ?」
「判ってます、そんなこと」
近づいてくる楽しそうな顔に、思い切り不機嫌な視線を返す。
回される腕も、もはや振り払うのは諦めた。
に。
リリィの笑みが深まる。
いつもの、優しそうに見えて鋭い笑みに。

「私に堕ちろと願うんじゃなくて。あなたが、堕として下さい?」

ミケの瞳が、少しだけ見開かれた。
まっすぐに、視線がぶつかり合う。
どのくらいそうしていたのか。
ふ、と、ミケの表情が崩れた。

「……望むところですよ」
「ふふ、楽しみにしてますね」

にっこり。
そうやって微笑む彼女は、素直に綺麗で。


たまには、素直に流されてみるのも悪くないか、と思った。
堕ちていっているミケさん(笑)
対するリリィの結論は、まあいつでもこんな風ですよね。
泣き言言ってる暇があったら自分で何でもやってみれと。
彼女はいつも、そのスタンスで生きてると思います。