壊したくなる5つの衝動
03:微かに笑んで、立ち去る足音
「…じゃあ、止めないなら行きますね」
再び楽しそうに微笑むと、彼女はそう言った。
「……」
無言のまま、彼女が踵を返すのを見守る。
本当に帰るつもりなのか。
引き止める自分を待ってのポーズなのか。
見極められない。肯定の言葉も否定の言葉も投げられない。
もしか、本当に帰るつもりだったとしても、自分にそれを止める理由なんてない、むしろ清々するはずなのに。
言葉が、出ない。
とす。
普段はあまり聞こえない小さな足音が、いやに耳につく。
扉へと向かう彼女の動きがスローモーションで見えるのは、わざと歩みを遅くしているのか。それとも。
きい。
ドアを開け、彼女は顔だけ振り返ると、薄く笑った。
「…それじゃ」
それだけを言い残して、彼女は扉の向こうへと足を進め…
「待ちなさい」
ぴた。
ミケの言葉と共に、足を止めるリリィ。
ミケは苦々しげに目を閉じた。
ああ、もう。
どうして。
答えの出ない、否、出したくない問いを、心の中で繰り返す。
どうして自分ばかりが、堕ちてゆくのか。
それでも。
「…あなたが帰れば、怒りは消えますけど」
口をついて出た言葉を、止めることはできなかった。
「……帰って欲しいとは、言っていません」
桜色の衣が、ふわりと翻る。
「……そうですか」
改めて目を開けば、彼女は満面の笑みをこちらに向けていて。
わかってはいたけれど、苦い思いが胸いっぱいに広がった。
その苦い思いの中にかすかに漂う、理解の出来ない感情は。
…やっぱり、認められないけれど。
こいつ、歩かないしドアからも出ないんですよね(笑)
だから、帰るそぶりはわざとだと思われます(笑)
けど、ミケさんが止めてこなくてもそのまま帰ったんだろうな。ドアの外に出てから移動術で。
ミケさんには申し訳ないけど、そんな感じです(笑)