「んーーーーーーーーーー」
「ほら、どうした?」
「急かさないでよ」
エリーの手の中の2枚のカードをにらみつけながら、リーは真剣に悩む。
それを見ながらエリーは小さく笑った。
(悩んでいる時点で、もう俺の策にかかってるんだぞ?)
けれど、真剣な彼女の顔はとても可愛らしくて。いつまでも見つめていたい気がした。
「……たかが、ババ抜きだろ?」
「でも」
負けたら勝った方の言うことを聞く。その前提があるから、尚更真剣になる。
「……で、もしもお前が勝ったら。なんて言うつもりなんだ?」
「え?あ、そうね。負けたら困るとしか考えてなかったわ」
「やっぱりな」
「そうね……うん、決めた」
にこり、と笑みを浮かべて、迷い無く彼女は一枚を引いた。

「……ホットミルク、だ」
「……っく、ど、どうもありがと、エリー」
「……なんで笑う」
仏頂面のエリーに、リーはついに耐えきれなくなった」
「あははは、だって、笑うなって言う方が無理でしょ?」
思い切って引いた一枚は、見事に勝利に繋がる一枚で。
……リーの命令は「今日一日、私にサービスしてくれない?」であった。
ロッテが「その命令なら、これ着なよ?きゃはははは」と置いていった物を、リーは中身も見ずに「じゃあ着て」と頼んだのだ。
「……ふふ、似合うわよ、エリー……っぷ」
「笑いすぎだ!」
メイド服のスカートの裾を、手が所在なさげに握ったり離したりするのは、もう仕方がない。
「……それで、御主人様。他にご命令は?」
「そうねぇ、どうしようかな」
「ああ、そうだ。御主人様。仕事を一つしたらチップくらいくれるよな?」
「……チップ?ええっと、何かあったかしら?」
カバンを探そうとしたその手を掴んで、エリーは笑う。
「なに、エ……っ」
一つ、軽いキスが唇に落とされて、リーは真っ赤になる。
「他に、ご命令は?命令一つに付き、一つチップはもらうけど」
「……エリー」
ため息と共に名を呼ばれ、彼女の前に跪く。
「なんだ?御主人様」
椅子に座った『ご主人様』は困ったような、照れたような顔で、そっとエリーに手を伸ばす。
「?」
そっと手が髪に触れ、頬へ滑り、そうして。
「……っ」
「命令一つで、チップが一回。私の命令は二つだったわよね……?」
「そうだったな」
『メイド服を着せること』それは一つめの命令だった。
「律儀な御主人様で嬉しいね。もっと、何か無いのか?」
「そうね、それじゃ」

御主人様は、優しく笑いかけた。
「……チップでないキスを、してくれる?」
「それは、もう。……お望みのままに、御主人様」

今度のキスは、もっと深くて甘いキスだった。

おしまい

おまけ
「……で、いい加減これを脱いだらダメなのか?」
「ダメ」
「……おい」
「だって、可愛いんだもの~」

相川さんから頂きました(笑)
チャットで「今度メイドで何か書きたいと思ってるんですよー。エリーがメイドで」と話したところ、こんなものを頂いてしまいました(笑)いやーん、らぶらぶですねぇ(笑)ほくほく(笑)
ということで、メイドのエリーを描いてみましたが、どうでしょうか(笑)脱がせたくないほど可愛い?かどうかは、責任もてませんが…(笑) → こちら
…いや、あたしのほうのネタはとってもこんな明るいところに晒せるようなものじゃないんですけどね?(笑)