嵐の夜。
轟々と鳴る風の音が、窓の外から聞こえてくる。
屋根を叩く大粒の雨。
「あっちゃー…今日は、外に出るの止すか?」
窓から見える外の風景を一瞥すると、そんな事を呟く男。
ゼータ。
ヴィーダに流れ着いてから、10年が経つ。
時々は顔を合わる機会も有ったロッテとの縁も、ここ数年は途絶えて。
――と言っても向こうが酒場に顔を出さない限り、会う事すら出来なかった訳だが――
積み重なった歳月は、男にそれなりの落ち着きと風格を与えた。
尤も、根本的には何ら変る事も無く。
見知った顔が集れば、未だに『ヘタレ』だの『ロクデナシ』だと言われる訳で――
落ち着きや風格と言うモノは、過去を知る面子に取っては、何の意味も無いらしい。
兎も角。
ここ数日の雨で自宅(おぉ、すげーっ!)に閉じ篭ったままのゼータ。
無精髭の伸びきった顎に手を当てると、今後の予定を考える。
(ギルドに顔出して…と?
急ぎの仕事も特に無かったよなぁ。まぁ、暫くはノンビリさせて貰うか…?)
コツコツ
(俺自身に、何か頼れるもの――誇れるモノが欲しかった。
その想いだけで、10年。
ようやく、何とか半人前は超えたか…? ――先は長ぇなぁ…)
コツコツ
「んぁ? 風かと思ったら――客か?
鍵開いてっぞー?
・
・
・
って……入って来ねぇな。やっぱ風か―――」
そんな事を言いながら、頭を掻きつつ扉を開け―――
「ロッテ―――?」
黒いマント。
目深に被って居たフードを上げる。
出会った時から変らない、その姿。
只一つ、何時もと違う事。
その懐には、この風雨の中安らかな寝顔を見せる、赤ん坊の姿が有った――。
「ゴメン。ちょっち休ませてくんないかな…」
「おーまーえーはー!!
赤ん坊を、こんな天気の時に連れて回す母親が居るかっ!!」
暖炉に薪を放り込みながら怒鳴るゼータ。
その赤ん坊は、毛布を敷き詰めた緊急のベッドの上で、未だ夢の中で。
「あれ? あの子がボクの子供だって決め付けてる?」
「―――。
目を見りゃ解るわい。アイツ――キルとの子供だろ?」
「…あは。そっか? 解るんだ…へー…? ゼータもおっさんになったんだねぇ」
「大人って言えよ、ソコは…」
天界と魔界。
絶妙なパワーバワンスの上に出来上がった世界。
どちらが強すぎても、もう片方を簡単に飲み込んでしまう。
聞いた所では。
魔界の内部で大きな権力争いがあり、大貴族の1つが綺麗に消えてなくなったらしい。
イコール、魔界の力の弱体化。
それを好機と捉えた天界の強行派が、近い将来――人間の尺度で測るのも難しいが――
魔界を滅ぼす為に行動を起こすのでは無いかと。
そして、ソレを機に。
天界と魔界――引いては、現生界を巻き込んだ大きな戦いが始まるのでは無いかと――
「まぁ、ゆっくりしてけよ。
行くアテも無いんだろどーせ。
『おっさん』になった俺は、それなりに稼ぎも有る。ロッテと、赤ん坊の10や20軽く養えるぜ?」
「…小さいトコ拘るなぁ。しょーもなっ」
じっとり睨みなロッテ。
軽口を返した後、神妙な面持ちになって――
「あ、でもボク他に行くトコあるか――」
「俺は。
職業柄、ってのも何だが。
身を隠せるヤサの3つや4つ用意して有る。
色んな事が解る迄そこでゆっくりしてろ。
闇雲に動き回って、何か掴める訳ねーだろ? 腰を据えて、迎えが来るのを待つのが良いんじゃねーか。
今迄みたいに、1人じゃ無いんだしな」
「……ゼータ……」
「この10年。
無駄でなかった事を見せてやるよ。然るべき相手が来るまで、お前は俺が護る。
――惚れたら言えよ、ロッテ?」
3界を巻き込む大きな戦乱。
その、ホンの少し前の小さな話―――
さて…どうしたものか。
笑い話にする筈だったんですよ!?
ロッテがゼータとの間に双子を設けて。
裸エプロンだとか、駄目よ子供が起きちゃうとか(笑)
そして最後は夢オチの予定だったんですが。
…何ゆえキル。負けか!負けの遺伝子がそーさせるのか!?(笑)
いや。ロッテとキルの間の子供って可愛いだろうなぁとか…
2人が離れるなら、何が理由なんだろうなーとか。
そんな妄想を繰り広げてたら、こんな話になりました。
イラナイとか言わないで、お納め下さいませー!><(笑)
てるさまから、キリリクの返礼としていただきました(笑)
つーか、いいじゃないですか別に双子の子供話でも(笑)
夢オチ万歳(笑)
というか、いきなり話のスケールがでかくなったのでちょっとびっくりしました(笑)そして子供かー、うんうん(笑)確かに可愛い子が出来そうですね(笑)
あたしも10年年を取ったゼータさんはどんなナイスミドルになっているのかとかちょっと妄想したりしてしまいました(笑)
結構なものをどうもありがとうございましたーv