それは奇跡の魔法の続き。

「フィズ、お茶、入ったけど」
結婚して、一緒に暮らすようになって。
恋愛は炎のようなルビーだと、言われるけれど、二人の恋は違った。
例えるならば、夕日にも似たガーネット。
激しい炎ではなく、静かに……けれど長く燃え続けるもの。
結婚する前から老成したカップルだと言われていたが、結婚してからもそれは変わらない。

ゆったりと、時は流れ。
二人の前にある幸せこそが、奇跡の魔法。

「フィズ?」
読書中の彼を驚かさないように、そっと声をかけ直すが……集中しているらしい彼には届かないらしい。
ミルカはくすっと笑って、そっと近くの椅子を引き寄せて、彼を見つめる。
真剣な横顔。
ページを繰る綺麗な指先。
日差しも風も、すべて綺麗な絵画のよう。
……見つめているだけでも、胸に暖かいものが満ちてくる。

幸せ。
彼がいて、側にいられて。
とても、幸せ。

「……あ、ミルカ?」
「なぁに?」
「声、かけた?」
じっと見つめているミルカに、ようやく気が付いたフィズが困ったように照れて言うから、ミルカは微笑んだ。
「一度だけね」
「ごめん、集中していて……」
「いいのよ。ずっと二人でいるのが結婚じゃないでしょう?……今みたいなフィズを見ているの、なんだか、ちょっと幸せだったの。気にしないでね」
二人で四六時中ベタベタして、互いの時間が取れないのでは、一緒にいても仕方がない。
近しい一定の距離を取りながら、共に歩むのが結婚ではないだろうか。
……手を取り合って、つないで。……抱き合わずとも、そのくらいの距離であれば。
「それで、何かあった?」
フィズはミルカの用事を問う。
「ええ。お茶が入ったから……」
「くれる?」
「ええ」
ぱたんと本を閉じて、今度はフィズがお茶を入れるミルカを見つめていた。
くるくる動いて、笑って。
そんな彼女をすぐ近くで見つめているのは、楽しいということもあるけれど、安らぐ。
自分のために、こうして生き生きと動いている彼女は、主観もあるけれど客観的に見ても……可愛い。
「はいっ、ロイヤルミルクティー」
「ありがとう」
フィズがカップを受け取ると、ミルカは目の前の椅子に座る。
「……あつっ」
「大丈夫、ミルカ?」
「大丈夫よ、ちょっと火傷しただけ」
ひりひりとする舌。
ミルカは苦笑を浮かべて、気を付けてねとフィズに伝える。
「ん。確かにちょっと熱いね」
「ごめんね」
「だったら」
フィズはにこっと笑う。
「冷めるまで、話でもしようか」
とりとめのない、話を。
例えば。
さっきのミルカがどれくらい、幸せだったのか。
さっきのフィズがどれくらい、安らいでいたか。
「急ぐことはないんだものね。二人でいる時間は大事だけど……紅茶が冷めるくらいの時間も惜しむほどじゃないわよね?」
「……ゆっくり、待とう」

二人の間に流れる幸せな時間。
静かに、ゆっくりと……
奇跡の魔法は今もそこに。

相川和泉さまからいただきましたv
くっついちゃった後の(笑)二人のお話しです。
なんだよなーもー、ラブラブですねえ(笑)あたしが言うのもなんですが(笑)
あの二人が人様にこのように映っているのかと思うと、我ながらちょっとこっぱずかしく(笑)
まぁまぁ、素敵なものをどうもありがとうございましたうふー!