キスはスキ。
一番触れ合ってるって感じがするから。
深くまで探り合って、キモチよくて意識が飛んじゃう時間もスキだけど。
スキっていう気持ちをいっぱい感じる、最初のキスが一番いい。

でも、アイツはそうじゃないみたい。
知ってる。アイツは自分の気持ちをめったに顔に出さない。
自分の気持ちを他人に知られるのが、イヤ、なんだと思う。

だから、アイツはいつも、ゆっくりとボクに触れる。
唇が触れ合う瞬間、戸惑ったみたいにちょっとだけ体がふるえる。
だからボクは決まって、それを無理やり引き寄せて、アイツの唇に噛み付く。

「…そんなに、ボクがスキってわかっちゃうのがイヤ?」
「…何のことでしょうか?」

挑発するように言えば、落ち着いた笑みが返ってきて。
ボクはアイツの首に腕を回して、もう一回キスする。

「素直になったらー?ボクがスキでスキでしょうがないって、ちゅーすればわかるんだからさあ」
「私はいつも素直ですが。貴女と同じ程度には」

余裕げな笑みに、ボクはムッとして言い返す。

「それって、ボクが素直じゃないってコト?」
「それでも、ひところよりは格段に素直になったと思いますが」

くすくす、笑いながら指を頬に滑らせる。
…自分の気持ちを認められなかった時期があったのは、認める。けどさあ。

「じゃあ、キミも素直になんなよぅ」
「ですから、私は素直ですよ?」

だだをこねる子どもをあやすような顔。
むかつく。

「……いーもん。キミが隠したって、ぜんぶ暴いてやるんだからね」
「おやおや、怖いですね」

アイツは苦笑して、ボクの唇に自分の唇を掠めるように触れさせる。
それから、唇をなぞるように舌を滑らせて。

ボクはそれがもどかしくて、またアイツの唇に喰らいつく。

きっとボクの気持ちも、アイツにまるわかりなんだろう。
アイツがスキでスキでしょうがない、って。

だから、それでいいにしとく。
今日のところは、ね。

2006.6.15.KIRIKA