私の可愛いお姫様は。
笑っていたかと思うと怒り、無邪気かと思うと扇情的で。
何も考えていないような表情で知を巡らせ、難しい顔をして単純なことを悩む。
実に複雑怪奇な、底の見えない女性です。

彼女の行動も思考も、私の想像をあっさりと超えていく。
だから、もっと知りたいと願ってしまう。
体も心も、彼女のすべてを。
この私が、彼女に囚われた哀れな道化になってしまうのです。

「冗談じゃないね」

かつて、そう言った私に、貴女は鋭い視線を投げてそう言いました。
まだ、貴女が私と出会ったばかりの、私を敵として認識していた頃。
なぜ自分につきまとうのか、殺すならさっさと殺せと言われ、私は言いました。
貴女のすべてが知りたいから。殺してしまっては知ることが出来ない。
貴女のすべてを教えてください、と。

あの時の貴女は、触れたら切れるほどの敵意を私に向けていて。
その強い瞳と、その瞳の奥に隠された迷いが、私を強く惹きつけました。
その強く硬い殻が破れたときに、貴女はどんな姿になるのか。
それが、知りたかった。

「やーだよ。知りたいなら自分で暴いてみな?」

そして、今。
同じことを言った私に、貴女は不敵に微笑んで言います。

いろいろ策を講じて、下げたくない頭を下げて。
貴女の殻を壊すことには成功した…ようでした。
けれど、その奥に眠っていた貴女は、やはり私の想像を超えるもので。
固い殻を破ってみれば、さらに不可解なものが中に入っていたようです。

くるくると、万華鏡のように彩りを変える貴女。
一体どのくらいの顔が隠れているというのか。
それを見るのが、不覚にも楽しみでなりません。

だから、もっと教えてください。
貴女の喜びを。貴女の哀しみを。
貴女が誇りとすることを。貴女が命を賭するものを。
貴女が感じる全てを。

貴女の全てを。

まあ、嫌だと言っても諦めるつもりはありませんけれどね。

2006.6.12.KIRIKA