「ミケさん、リーヴェルの祝日ですよー!何を持っていって良いですか?」
「さ、最初からぶんどる気満々ですか、あなた!」
珍しく扉を開けて、開口一番の言葉に、ミケはとりあえずツッコミを入れた。無駄だとは重々承知しているのだが。
「パイスープですか、美味しそうですね」
「これは僕のお昼ご飯です!」
「もうちょっと華やかな方が良いんですけど」
「だから、僕のご飯だって言ってるでしょう、聞きなさい!」
「奇遇ですね、私もまだなんですよ」
「だから……いや、もー、いいです、どうぞ」
「ありがとうございます、きゃ、照れちゃってもー」
「違います」
やっぱりか、と思いながらため息をつき、ミケはパンをかじる。結構渾身の策だったスープなのに。
「で、プレゼントは?」
「……リリィさん。あのね」
ミケはこれも無駄だろうな、と思いながら言葉を紡ぐ。
「何故、僕が、あなたのために、プレゼントを用意すると思ってるんですか?」
「わー、ポチちゃん可愛いですねーvいただけるんですか、ありがとうございますv」
「あげません!」
その手から使い魔を取り上げて、抱える。
「……別に、こっちの猫ちゃんでもいいんですけど」
「いい加減にしてくださいよ。……わかりました、ちょっと待ってください」
ため息をついて、鞄を探る。……確か、この辺に。
「はい」
「……ネックレスですか?」
「ええ、まぁ」
革紐に鍵のペンダントヘッドがついたもの。……興味をひかれて買ってきた物だが、こんな風に使うとは思ってなかった。
「んー、こういうカントリー風なものは、似合わないと思うんですけどねぇ」
「いらないなら返せ」
「いやです。……でも、なんでこんなの買ってきたんですか?」
彼女のためではないが、しかし誰のためでもない。それが分かっているからこその質問だろう。
「……鍵っていうのは、鍵穴があって初めて機能するのに、不思議だなぁって思って」
苦笑したリリィに、ミケは首を傾げる。
「何か?」
「いえ、別に?ありがたーく、いただいておきますよ?」
「他の何を持って行かれても困ります……」
「で、象徴というのはご存じですか?」
「まぁ、言葉だけは。で?」
聞き返せば、リリィは楽しそうに笑った。
「鍵は男性、鍵穴は女性を指すとか。性的関心とか、独占欲とか。夢占いですが」
「ぶ」
「ミケさんってば、ダイタンですねーvどきどきしちゃうv」
「……何か、別のものを探してきますので、それ、返して欲しいんですが」
「いやです」
笑いながら、首を振る彼女から力づくで取り返してしまいたい衝動に駆られる。それもまた、無駄な努力におわりそうだが。
「……っていうか、別の意味があるでしょう!でなきゃ、そんなモチーフのもの、売っていたりしない!」
「ですねー。うふふ、でももらった物は返しませんからvミケさんのチョイスに感動しましたv」
「放っておいてください!」
「じゃあ、ありがとうございました。また今度」
「二度と来るなー!」
投げつけたクッションは、転移魔法で消えた少女には当たらず、壁にぶつかって音を立てた。

「……あーもー。不思議だなぁと思ったら、普通調べるでしょうよ」
ミケは机の上の本のページを繰る。

好奇心、そして、相手の心を開く象徴。

知りたいんだ。その心を開けてみたいんだ。
他でもなく、ただ。

彼女のことよりもそうだが、自分の心も。
今、心の中にあるこの気持ちが。

もうこの手にはない、何かを開く鍵を思いながら、ミケはカップとスプーンも持って行かれたことに、今更のように気がついて、がっくりしたのだった。

今年も相川さんから、バレンタインのお菓子と一緒に何かをいただきました(笑)
こちらです。
今度はパッケージを結ぶリボンにくくりつけられていましたので、ちゃんと見つけることができました(笑)
そして、鍵を見た時の第一印象が
「やだミケさんたら私に突っ込んでかき回してこじ開けたいだなんてだいたーんv」
でしたが、方向性が間違っていないようで安心しました(笑)
あと「合鍵プレゼントktkr」とも思いましたが、まあそれはないな(笑)
リリィが大変ナチュラルにカツアゲをしていますが、多分こないだのチャットで「そういえば私ってどうやってお金稼いでるんでしょうね」「チャカさんからもらうか現地調達じゃないですか」「現地調達……ミケさんからカツアゲですね、わかりました」 「もっとたくさんあるところからカツアゲてくださいよ…」「ミケさんが沢山稼いでくれればたくさんカツアゲられますよ!」「僕から取るのをやめろと小一時間」という会話があったからだと思います(笑)
ナチュラルにパイもプレゼントもいただいていますね、ありがとうございます、頑張ってもっと稼いでください(笑)
リアルで美味しいものと、そしてこちらもおいしげなものをどうもありがとうございましたv