「私、小悪魔なミケさんが見たいです」
「……は?」
突然言われた言葉への返答は、たっぷり5秒はかかった。
言われている意味が分からない。
「すみません、小悪魔な僕って、なんでしょうか?」
「小悪魔はブームです、知らないんですか?」
文字通り小悪魔な少女はそう言って、うふ、と笑った。
「今や小悪魔は最先端!ほんのり意地悪なその微笑みが可愛いv……って、先日ラージサイトで取材を受けていらしたカーリィ様が」
「…………ご実家周辺でいくらでも見られるんじゃないですか?」
「周辺は立派な悪魔ばっかりだから、魔界で小悪魔が流行るんですよ……」
「……その流行は、聞きたくなかったです……」
なんだかとても怖い流行の話を聞いてしまった。
「というわけで、小悪魔ミケさんですよ」
「訳が分かりませんよ。というか、何故、僕が」
「いや、ちょっと見てみたくてvやって見せてください、きっと笑えると思います」
「笑いものにしたいんですか」
嘆息して、ミケは読んでいた本を閉じて、本棚へと向かう。
「?」
どす、と思い音を立てて、本を机に置き、ミケは持ってきたそれを開く。
「えーと、こ……こ……小悪魔……あった」
「そこで辞書を引くんですか!?」
「ちょっと、自分で言うのも何ですが……定義が分からなくなってきまして」
「奇遇ですね、自分で言っててなんですが、小悪魔がなんだか分からなくなってきましたね」

2人でとりあえずその項目を読んでみる。

「可愛さ、色気、思わせぶりな態度などで男性を惹きつけ、相手が興味を持って近づいてくるとサラリとかわして翻弄させてしまうような女性のこと。イタズラっ子のような要素が強く、相手にダメージを与えるようなかわし方(=魔性の女)や憎まれたり、嫌われるような別れ方をしないのが特徴である。」

「……「女性」だそうですよ。残念でしたね」
「…………」
「リリィさん?」
「ミケさん。迂闊でした」
「はい?」
リリィはそこで、半笑いでミケを見やった。
「現状が、小悪魔なんですねvきゃ、リリィ、失敗v」
「ええええ。なんですか、それ!?」
「女の子に天然で口説き文句を言って、その気がないようにかわす。そのままですねv」
「い、いつ、そんなことをしたんですか!人聞きの悪いことを言わないでくださいよ!」
「…………計算無しで小悪魔なんて、罪作りですねv色々やって死ぬ前に、女性関係で刺されて死ぬかも知れませんねー」
「あり得ないでしょう……っていうか、面白がって誇張しないでくださいよ!?」
それはそれは沈痛な面持ち(笑い堪え中)のリリィの肩を掴んでがくがくと揺さぶる。
「きっと街のあちこちで泣いている女性がいるんですね……やだ、私も毒牙にかかっちゃう!」
「そのセリフ、どこから突っ込んで良いのかも分かりませんって」
「私に突っ込みたいんですか?きゃ、恥ずかしいv」
「…………いい加減に出ていけー!」
「いやーんv」
ニヤニヤしながらからかうと、ミケは苦い顔でその額を軽く小突いた。
「そういう下ネタとか、もー、何言ってるんでしょうね!(見た目)若い女性が言うものじゃありませんよ!……せっかく可愛い顔しているのに、台無しでしょう」
「……」
リリィはちょっと沈黙したので、ミケは逆に不安になってそっと問いかける。
「あの、リリィさん?」
「ミケさん、ほんとに、小悪魔なんじゃないんですよね?」
「訳が分かりません」
「……本当に、刺されたりしないでくださいね?それが無意識のセリフだと、心配になります」
「……いきなり、なんですか……?」
「抵抗のないお嬢さんに、変な夢を見せないようにしてあげてくださいね……意外にミケさん、顔と性格がそこそこよく見える時があるんですから……」
「酷い言われようだ……」

凄く失礼なことを言われ、流石に顔を引きつらせるミケに、リリィは笑って肩を叩いてやった。

「普段は駄目なひとだから、少し気をつけていればいいと思いますv」
「慰めるんじゃなくて、更に貶めるって、どういうこと!?」

箱根で小悪魔の話をしたときに、そもそも小悪魔って何?とかなり悩んでおられましたので、そんな話をいただきました(笑)
これはほら、小悪魔じゃなくて天然タラシでしょう(笑)小悪魔はそれを確信犯(誤用)でやるからこそ小悪魔なんですって(笑)
まああの、ミケさんはいつか刺されるんじゃないかってのはあたしもそう思います(笑)nice boatにならないようがんばってください(笑)
相川さん、どうもありがとうございましたーv