「お疲れさまです、陛下」
「はい、頑張りましたよーv」
一週間働きづめで、ようやっと明日は休みが取れる。女王も侍従長も、かなりくたくだではあったが、一日の終わりの日課だけは欠かさずにきた。
……仕事が終わり、一息ついてからのティータイム。紅茶一杯分だけのプライベートな時間。
「明日はお休みね、ミケ。何しましょうか?」
「ゆっくりしてください?お疲れでしょう」
「…………ミケ」
「はい?」
ぷう、と頬を膨らませてから、つんとそっぽを向く。
その仕草が、可愛いなと思ってしまった。
「いえ、一緒にいますけれど。刺繍でも読書でも、したいことをしていてくれて良いんですよ?」
「…………。あらそう、じゃあ、付き合ってもらうわね」
何かを思いついて、リリィは楽しそうに笑った。

「ミケ、はいっv」
「はい?」
ベッドに座ってたくさんクッションを用意して。迎え入れた彼を、嬉しそうにリリィは手を伸べる。
「え、ええと……」
ぽんぽん、と座った腿の辺りを叩いたリリィを、訳が分からずに見下ろす。
「膝枕ですよぅ」
「はい?」
にこにこと笑う少女に、怪訝そうに視線を向ける。
自分は侍従長で、彼女は女王。プライベートで恋人だとしても、彼女の世話をするのが仕事で半ば趣味になりつつあるのだが。今日だってのんびりしている彼女の側で、その様子を見ながら本でも読んだり、少し喋ったりできたらいいなくらいには思っていたけれど。
「付き合ってくれるって言いました」
「言いましたね」
「ゆっくりしてって言いました」
「言いましたけど」
「ミケを、膝枕したいんです」
「ええええええええ!?あの、人間の頭って結構重いんですよ?そ、それに」
「聞いて、くれないの……?」
「う。いえ、そういうわけでは」
うるうる、と見上げられて困ったようにミケは視線を逸らした。
「ミケ」
「わ……わかりました……」

「あ、あのー……」
「はい」
「いえ、楽しい、ですか……?」
「はいっv」
戸惑った顔のままのミケを撫でる。顔を、髪を、優しく。
「ああああ、あのっ」
「はーい?」
「なんだか、あの照れるんですけどっ」
「ふふふ、可愛いですよー」
「……どっちかっていうと、格好良いと言われたいんですけどねぇ……」
視線を外しての呟きはきっと本音だろう。
ふふ、と上機嫌に笑うと、髪を梳く。
「凄く、照れてますね?」
「ええ、まぁ。あなたをこうやって見上げる体勢って言うのもないですからね……」
「ふふ、そういう顔をしているあなたを見るの、好きかも知れません」
「からかわないでくださいよ」
「うふふ、可愛い」
それはそれはご機嫌な少女を見上げる。
多分、一番どきどきしているのは、この状態なら彼女は自分以外見ていないと、はっきり分かるからかも知れない。自分ばかりがどきどきしているようで、少し悔しい。
バツが悪そうに視線を外すと、覗き込むように髪が揺れる。さら、と流れてくるその亜麻色の髪に指を絡めた。
「ミケ?」
「……好き、だよ。リリィ」
多分、このどこか幸せな敗北感はこれからも続くのだろうなぁと、ひっそり笑って、受け入れた。
囁くようにそう言って、髪に口づける。一瞬目を見開いてから少しだけ頬を染めた少女に、楽しそうに笑って、ミケは身体を起こす。
「駄目ですよー、勝手に起きちゃ」
「はいはい、でも、一つだけ」
するならやっぱり、こっちがいいんです、と言って、少女に唇を寄せた。

そんな休日の、甘い一時。

キルロテ膝枕トップ絵をアップしたら相川さんからなんか届きました(笑)
後日「もげろ」と追加コメントが来ましたが(笑)
しかし、この女王は女王になったらわがまま度が増したような気がしますな(笑)大して変わらんか(笑)
相川さん、甘くて美味しいものをありがとうございましたv