…諦める?

どうして?

悪いけど、僕はもう何も諦めてやるつもりはないよ。



自分のために諦めないことを僕に教えたのは、他でもない君なんだからね。

蒼月の館、といえば、マヒンダの首都であるグリージェではそこそこ名の知れた料理屋である。
王城からは少し離れるが、マヒンダに訪れる者たちの玄関口となるこのエリアには、問屋や商店、宿屋や酒場などが多くひしめき合っている。その中でもこの蒼月の館には、地元民もよく来るが、旅の商人や冒険者も少なからず訪れ、美味い料理に舌鼓を打っていった。
気のいい店主とその妻、それに二代目となる息子が出迎える店内は、どこか懐かしい雰囲気がする内装である。出される料理も、絶品と手放しで褒めるというよりは、誰の記憶にも残る、子供の頃に慣れ親しんだ郷愁を誘う味わいと評判だった。

この蒼月の館に、近頃、しばらく旅に出ていた娘が帰ってきた、というのは、近隣の商店街ではちょっとした話題になっていた。
冒険者になると家を出た娘は、小さなころから快活で人懐こく、誰からも好かれる愛らしい少女で、彼女が家を出ていった当初は、近隣の住民もみな寂しそうな顔をしていたものだった。

その娘が帰ってきた。その理由はあまり大っぴらに喜べるものではなかったにしろ、彼女が帰ってきたこと自体はこの街に小さな喜びをもたらした。
そうして、彼女は家を出る前と同じように、蒼月の館の看板娘として、再び店内を忙しく駆け巡ることになったのである。

そんな生活が戻ってから、一月ほどたったころだった。

からんからん。
軽快なドアベルの音が、来客を告げる。ランチの時間もピークを過ぎ、人もまばらになってきた店内には、その音はことさらよく響いた。
テーブルの片づけをしていたレティシアは、ベルの音に顔を上げ、満面の笑顔でそちらを向き――

「いらっしゃいま……」

そして、凍りついた。

近隣住民や商人、冒険者たちが客のほとんどを占めるこの店にあまりにも不釣り合いな青年だった。仕立てのよさそうなブラウスに、丁寧に整えられたやわらかそうな金髪。無駄に作りのいい容貌に、きちんとした姿勢と所作。明らかにお育ちの違う彼は、やはり彼の育ってきた環境とはあまりにもかけ離れているだろう店内を物珍し気に見回していた。

その様子を、目を丸くしたまま立ちすくんで凝視しているレティシアにようやく気付いた彼は、手を上げてさわやかに微笑んだ。

「…やっと見つけた。久しぶり」

その様子に、ようやく金縛りが解けたレティシアは、目を見開いたままその名を絶叫した。

「る、るるるるるるルキシューーーー?!」

まばらに残っていた客が一斉に振り返るほどの声のボリュームに、名を呼ばれた青年…ルキシュもぎょっとした顔をして、それから不服そうに腕を組んだ。
「…ずいぶんなご挨拶だね?久しぶりの再会だというのに」
「えっごめんなさ、いや、っていうかなんで」
「君が言ったんだろう?故郷に帰ったら首都の料理屋にいるから来てほしいって、ご丁寧に店名まで残して」
「そ、そりゃ言ったけど……」

それは、あなたに告白されて断る前の話で、とは言えずに口ごもるレティシア。

そう。彼女にとって、目の前の彼は二度と会うこともないだろうと思っていた人間の筆頭だった。
なにしろ、彼に想いを向けられていたことにまるで気づかずに、彼の前で別の男性への想いを語り、恋愛相談をした挙句、話の流れで告白してきた彼にこれ以上ないほどのきっぱりとしたお断りを入れたのだから。

気まずいどころの話ではない。

もう二度と会わないつもりで別れを言ったし、彼もまたそんな自分に合うのは気まずいだろうと思っていた。
その彼が、なぜ。

「な、何でこんなに突然…」
「突然でもないさ」
困惑して問うレティシアに、ルキシュは肩を竦めた。
「天の賢者様のブレスレットで何度呼び掛けても、君は一度も応えてくれないからね。なら、直接会いに来るしかないだろう?」
「う、それは……」

天の賢者様のブレスレット。
彼女が彼と出会うきっかけとなった、魔道学校主催のウォークラリーの優勝賞品。一対のブレスレットを持つ者同士が、どんなに距離があっても会話ができるという、超級マジックアイテムだ。
そのブレスレットで、かつてはレティシアも気軽にルキシュに連絡を取り、日々のことを語り合ったり喫茶店に誘ったりもしていた。

あくまで、かつては。

フッてしまって以降は気まずすぎてブレスレットすら荷物の奥深くに封印したまま見てもいない。
まさかルキシュが何度も彼女にコンタクトを取ろうとしていたなどとは夢にも思わなかったから。

「その…ブレスレットもあまり見てなくて…ま、まさかルキシュが連絡くれるなんて…思わなかったし…」
そのままの事実を告げると、ルキシュは意外にもにこりと微笑んだ。
「どうして?」
「うっ……」
キラキラという効果音が聞こえてきそうなくらいの完璧な笑顔。
(くっ……顔が良い…!)
あまりの眩しさに思わず目を閉じて顔を逸らすレティシア。
顔の造形で言えば、かつての想い人であるミケにも引けを取らないほどに、ルキシュもタイプは違うがかなり美形のカテゴリに入る。忘れられかけていた設定だが面食いである彼女にとってはなかなか攻撃力のある笑顔だ。
わけのわからない圧にどう回答したものか、と考えあぐねていると。

「レティ。大きな声がしたようだが、どうしたんだ?」

店の奥からひょいと顔を出した男性を、レティシアはさらに慌てた様子で振り返った。

「え、エール兄ちゃん!」

またややこしいのが出てきた、というように、レティシア。
顔を出したのは、彼女の兄であるエリオット。ランチの客も一通りはけ、厨房で洗い物をしていたのだ。
エリオットはレティシアの向かい側に見慣れぬ青年がいることに眉を寄せ、手を拭きながらフロアに入ってきた。
「レティ、知り合い?」
「あ、うん、えーと……」
どう紹介したものかと視線をさまよわせるレティシアに、一目で関係性を把握したのか、ルキシュがにこりと優雅な笑みを浮かべた。

「レティシアさんのお兄様ですか。初めまして」

破壊力の高い顔面が完璧なまでに余所行きの猫をかぶるその様に、レティシアはあんぐりと口を開ける。自分と同じ庶民であるエリオットに対し、自分と初めて会った時の傲岸不遜なさまなどカケラも見えない。
ルキシュはエリオットの前まで歩き、丁寧に礼をした。
「僕はルキシュクリース・サー・マスターグロングと申します」
「…エリオット・ルードです」
多少毒気を抜かれたように、エリオットも丁寧に名乗りを返す。優雅な笑みで手を差し出すルキシュに握手を返してから、あ、と思い立ったように口を開いた。
「…マスターグロングって、まさか公爵家の?」
「ご存じでしたか。現当主の長男にあたります」
「グリージェに住んでいて公爵家を知らない物などおりません」
エリオットは慌てて姿勢を正し、それから訝し気に眉を寄せた。
「…公爵家のご長男が、レティシアとどのような…?」
「ああ、あまり畏まらないでください」
苦笑してそれを遮るルキシュ。
「長男と言っても、僕は出来損ないで。マヒンダに居ては恥だとする両親が、フェアルーフの魔道学校に留学を勧めたんです」
「ちょっと、ルキシュ…!」
ルキシュの言いざまに、不服そうにそれを止めるレティシア。
困惑した様子で二人を交互に見るエリオットに、ルキシュは構わずに話を続けた。
「レティシアさんとは、学校主催のレクリエーションで冒険者として雇われた時にご一緒した縁があるんですよ。それからも、折に触れてお世話になったんです」
「そうなんですか…レティシアがそんな…こちらこそ、お世話になったようでありがとうございました」
まだ戸惑った様子で、それでもエリオットが礼を言うと、ルキシュは鷹揚に微笑んで頷いた。
「今日は、ちょうど帰省したものですから。冒険者を辞めて故郷に帰ると言っていた彼女が、実家の料理屋にぜひ来てほしいと言っていたのを思い出して、顔をさ出せていただきました」
「それは、ご丁寧にどうも…ご昼食はまだですか?よろしければお好きなものをご馳走いたします。妹がお世話になったお礼に」
「ああ、どうぞお構いなく」
恐縮して畏まるエリオットを、鷹揚に制するルキシュ。
「特別扱いをされては、かえって僕も恐縮してしまいます。お代もお支払いいたしますよ。…ああ、でも一つ、リクエストをしても?」
「もちろんです、なんなりと」
こちらも余所行きの笑顔で答えるエリオット。
ルキシュは笑顔のまま、再びレティシアの方を向いた。

「彼女の得意料理を、彼女に作ってほしいです」

「はぁ?!」
思わぬところから自分に矛先が向かい、素っ頓狂な声を上げるレティシア。
「ちょ、ちょっとルキシュ、いきなり何を」
「こらレティ、失礼だろう、マスターグロングさんに対して」
貴族のファーストネーム、それも愛称をためらいなく呼び、なおかつタメ口のレティシアを、エリオットが慌てて制する。
ルキシュはニコニコしたまま首を振った。
「構いませんよ。お兄様も、どうかルキシュと。言葉も崩していただいて構いません」
「しかし…」
「どちらかというと、僕がレティシアさんにとてもお世話になったんです。今の僕は彼女無くしてはあり得ない、とても感謝しているんですよ」
「レティ…」
お前一体貴族の坊ちゃんに何をしたんだ、と言わんばかりの表情をレティシアに向けるエリオット。
レティシアは困ったように二人の顔を交互に見てから、ルキシュに言い募った。
「ねえルキシュ、私の作ったものより父さんやエール兄ちゃんが作った料理の方が美味しいよ?せっかくお店に来てくれたんだし…」
「君も料理を作れないわけじゃないんだろう?」
レティシアに対しては元のくだけた口調で返すルキシュ。
「料理が得意だと言っていたじゃないか。その割に、一度も食べたことがないと思って」
「いくら得意っていったって、素人に毛が生えた程度で…プロの料理人にはかなわないよ。そっちの方が断然美味し……」
「何度も言わせないでくれないかな」
にこり。
また破壊力の高い笑みを浮かべて、ルキシュはゆっくりと繰り返した。
「僕は、君が作った、料理が食べたいんだよ。それとも、お客のリクエストに応えられないというのかな?」
先ほどと同じ、妙な圧を感じる笑顔で言うルキシュ。
エリオットはレティシアと同じく困ったように二人の顔を見比べ、小さく嘆息した。
「…いいよ、レティ。厨房を使って」
「エール兄ちゃん?」
驚いてエリオットの方を向くレティシア。
「父さんも昼休憩に入ってる。オーダーも落ち着いてるし、店の材料は好きなものを使ってくれていいから」
「でも……」
「マスターグロングさ……ルキシュさんもこう言ってることだし、リクエストに応えてあげたら?」
「むー……」
レティシアは眉根をぎゅっと寄せて考え込んでから、やがて諦めたように嘆息した。
「……わかったわ。私の得意料理、でいいのね?」
「ああ。特に食べられない物はないから、君の自慢の一品をお願いするよ」
キラキラという効果音が聞こえてきそうな笑顔で、満足げに頷くルキシュ。
レティシアはテーブル席に座ったルキシュに水とおしぼりを出すと、じゃあ作ってくるね、と言いおいて厨房に向かった。
その背中と、テーブル席に座るルキシュを交互に見て、エリオットもそのあとを追って厨房に入る。
ルキシュは上機嫌な様子で、2人を見送るのだった。

「…で?一体何があったんだ?」
厨房。
卵を溶いているレティシアの後ろで、休憩用の椅子に腰かけたエリオットが改めて問う。
「何と言われても…」
言いづらそうに視線を逸らすレティシア。
「…ルキシュが言った通りよ。魔道学校主催のイベントで冒険者として雇われて、彼のサポートをしたの。それが縁で、たまに会って話すようになって…」
「そもそも、何でマスターグロング家の長男がフェアルーフの学校に通ってるんだ?マヒンダにちゃんとした学校があるのに」
「それは……ルキシュにもいろいろあるのよ」
先ほどは妙にあっけらかんと「出来損ない」と話していたルキシュだったが、彼のトラウマに関わりかねないプライベートな事柄をベラベラ話す気にもなれず、適当に濁す。
エリオットはふむ、と唸った。
「しかしまた、ずいぶんな懐かれようだな…とはいえ、僕は賛成だぞ」
「…賛成って、何が?」
調理の手を止めてエリオットの方を向くレティシア。
彼はすがすがしい笑みを浮かべた。
「収入の安定しない冒険者よりは、出自のしっかりとした貴族に嫁に行った方がずっといいっていうことだ」
「ちょっ……ルキシュはそういうのじゃないから!」
がしゃ、とボウルを置いて、慌てて否定する。
エリオットは首を傾げた。
「違うのか?こんな庶民の料理屋まで、貴族の坊ちゃんがわざわざ足を運んでいるのに?」
「うっ……それは」
違う、とも言いづらい。ことレティシアに向けられるものに関しては、この兄は通常の3倍の洞察力を見せる。
しかし、ルキシュはそうでも、レティシアにはまったくその気がない。だからこそきっぱりとお断りしたのだし、二度と会うこともないと思っていたわけで。
エリオットは嘆息した。
「だってレティ、帰ってきてから一度も話に出してないだろう。前に一緒に冒険していた、あの魔術師のことを」
「うっ…」
また痛い所をつかれて、口をつぐむレティシア。
エリオットは続けた。
「レティがあの魔術師のことを好きなのは誰の目にも明らかだった。気づいてないのは当人くらいだよ。ルティアのことがあったにしても、うちに帰ってきてあの魔術師と会えなくなるのは辛いだろうと思ってた。でも、会いたいそぶりも見せないどころか、名前一つ出てこない。おかしいと思ってたんだ。
でも、あの魔術師から貴族の坊ちゃんに鞍替えしたっていうのなら、僕は大賛成だよ」
「だから、そういうのじゃないって!」
レティシアはエリオットの言葉を遮るように、置いたボウルをひったくって再びかき混ぜ始めた。
「ミケは…ミケも、故郷に帰ったの。ザフィルスってとっても遠い所で、魔術師としての実力を認められて、重要なお仕事をするんだって。会いたくないって言えばウソになるけど…でも、ちゃんと気持ちに区切りをつけたから」
「区切り?」
「うん。ちゃんと気持ちを伝えて、ちゃんとフラれてきたから。だからもう平気……」
「なんだって!」
がたん。
腰かけていた椅子が倒れる勢いで立ち上がるエリオット。
「うちのレティを振るなんて…なんて見る目のない男なんだ!」
ギリギリとこぶしを握り締めながら、悔し気に言い募る。くっついて欲しいのか欲しくないのか、複雑な兄心である。
いつもの調子に戻った兄に、レティシアは苦笑した。
「ね?だから、私はしばらく恋愛はいいの!フラれたばっかりなんだし…ルキシュには、悪いことしてるとは思うけど…」
「レティ……」
その言葉で、彼女にもルキシュの気持ちは伝わっていることを知る。
エリオットは複雑そうに眉を寄せたが、やがてレティシアと同じように苦笑した。
「…そうか。まあ、レティがそう言うなら無理にとは言わないよ。
だけど……」
厨房から、テーブル席に一人座るルキシュに目を向けて。
「……あっちは、そうでもないみたいだぞ?」
「そうなのよねぇ……」
本当に、ついさっきまでは、二度と会うことのない人だと思っていたのに。
彼は彼女に会いにやってきた。はるばる海を越えて、そして貴族が足を踏み入れることのない庶民の料理屋まで足を運んで。

それが、彼が全くもって彼女を諦めていないことを意味することくらい、レティシアにもわかる。

エリオットは苦笑したままレティシアに向き直った。
「レティの気持ちもわかるけど、フェアルーフからわざわざ会いに来た彼のことは、もう一度ちゃんと見てあげてもいいんじゃないか?」
「うーん…」
フェアルーフからマヒンダに戻ってくる。
レティシアや、多くのマヒンダ出身者にとっては、それはただの帰省だったりUターンだったりするのだろう。
だが、半ばマヒンダを追い出されるようにフェアルーフに来たルキシュにとっては、マヒンダに戻ってくることそのものが複雑な感情を伴うことも想像できた。
なのに、彼女に会うためにわざわざ来てくれたのだ。
レティシアは、うん、と一つ頷いて、エリオットに笑顔を向けた。
「そうだね…そうする」
その笑顔に、エリオットもまた安心したように微笑むのだった。

「ご馳走様。美味しかったよ」
レティシアが作ったオムライスを綺麗なしぐさで食べ終えたルキシュは、相変わらず綺麗な笑顔で言った。
「あ、うん…お粗末様」
複雑そうな表情でそう返し、レティシアはルキシュの向かいの席に座る。
「…それで、ルキシュはどうしてここに?」
単刀直入に訊くと、ルキシュはきょとんとした表情をして見せた。
「…料理屋に料理を食べに来る以外の目的があるのかい?」
「…いや、そうじゃなくて…」
これはわかっていてはぐらかしている。
レティシアは何かをこらえるように目を閉じて、それからさらに単刀直入に訊くことにした。
が。
「あのねルキシュ…」
「ああ、そういえばもう一つ用事があったことを思い出したよ」
レティシアの言葉を遮るようにして、ぽんと手を打つルキシュ。
気勢を削がれたレティシアは、出そうとした言葉を引っ込めて彼の言葉を待った。
にこり、とまた綺麗な笑みを浮かべて。

「もう一人のお兄様のお見舞いをさせてもらってもいいかな」

「ルティア・ルードです。こんな状態ですみません…」
「ああ、無理をしないでください、そのままで」
ベッドから半身を起こそうとしたルティアを、ルキシュは慌ててとどめた。
再び枕に身を預けたルティアに安心したように微笑んで、綺麗に礼をする。
「改めまして、ルキシュクリース・サー・マスターグロングと申します。レティシアさんにはお世話になっています」
「こちらこそ…レティがお世話になってます。魔法学校に通っている方ですよね…?」
「ご存じなんですか」
「レティの手紙に時折書いてあったから。ウォークラリーで仲良くなって、時々相談にも乗ってもらってるって」
「る、ルティア兄ちゃん…」
レティシアは複雑そうな表情でルティアを止める。
自分が送った手紙の内容をよく覚えていてくれるのは嬉しいことだが、本人の前で暴露されるのはいただけない。
ルティアはくすくすと笑いながら、再びルキシュの方を向いた。
「帰ってきてから話を聞かないから、寂しく思ってるんじゃないかと思っていたけど、よかったね、レティ。はるばるマヒンダまで、ルキシュさんが遊びに来てくれて」
「うん……そうだね」
あまり外に出ないからか、ルティアの態度にはエリオットほど身分を気にする様子は感じられない。ルキシュもそれを気にしている様子もなく、レティシアは二人が穏やかに言葉を交わしていることが純粋に嬉しかった。
ルティアは再びルキシュの方を向くと、嬉しそうに言葉を続けた。
「ルキシュさん、フェアルーフでのレティの様子を、もう少し聞かせてくれますか」
「ええ、もちろん。何がいいかな…」
「ちょっとルキシュ、あまり変なこと言わないでよ?」
「変なことって?ああ、君が魔道学校の特別授業に来た時に魔道石を飴と間違えて口に入れたこととか?」
「ちょっとー!!それ他の人には言わないでって言ったのにー!」
いつもは静かなルティアの部屋から、楽し気な笑い声がしばらく響いていた。

「ありがとうルキシュ、ルティア兄ちゃんのお見舞いまで…」
「礼を言われることじゃないよ。僕がお兄様に会ってみたかっただけだ。後でご両親にもお会いしたいな」
「うっ……ね、ねえルキシュ、ちょっと」
レティシアはルキシュの腕を引き、ルティアの部屋から遠ざけた。かといってエリオットに聞かれるのもいろいろとまずそうなので、自分の部屋へと招く。
ルキシュを座らせてドアを閉じてから、ふう、と息をついて。
「…ルキシュ、もう一度聞くね。なんでうちに来たの…?」
「だから、君の料理を食べにと、君のご家族に会いにだよ」
平然と答えるルキシュ。
「っ、でも、私は…っ」
レティシアは言葉の続きを詰まらせ、俯いた。

私は、あなたをフッたんだから。

続く言葉をもちろん察して、ルキシュは肩を竦めた。
「…そういえば、ミケへの告白はどうなったの?」
「……え」
「僕と別れた日、ミケに告白すると言っていただろう?どうなったの?結局また言えなかった?それとも…」
「ちゃんと想いを伝えたよ」
ルキシュの言葉を遮るようにして、レティシアはきっぱりと答えた。
「伝えて……ミケもやっと、私の想いをわかってくれて…でも、お断りされちゃった」
「……そう」
「ミケも故郷に帰るし、そこで大きな仕事も待ってるみたいで、私の気持ちに応えてる余裕がないって」
「完璧なお断りの文句だね」
皮肉気に言うルキシュ。
「それで?君はそのままお別れして帰ってきたんだ」
「そうだけど…私もマヒンダに帰らなくちゃいけなかったし…ザフィルスなんて遠くてとっても…」
「距離なんて関係ないさ。魔道学校にもフェアルーフとマヒンダで遠恋してる子がいる。気持ちがあれば距離なんて関係ない」
「私に気持ちがないって言いたいの?」
カチンときて言い返すレティシア。
ルキシュは首を振った。
「そんなことは言ってない。お互いの気持ちがなきゃ長続きはしない。それが現実だよ。
一方通行で、しかも距離があって、それで想いを持ち続けられるなんて並大抵じゃできない。君の選択は至極妥当なもので、相手に気まずい思いもさせたくない、君の優しさからの選択だと思うよ」
「っ……」
責められていると思ったところにフォローをされ、言葉を失うレティシア。
「……ただ」
ルキシュはもう一度肩を竦めた。

「僕はそうじゃない、というだけだよ」

立ち上がって、ゆっくりとレティシアに歩み寄る。
「僕は君みたいに優しくないからね。君が気まずい思いをしようと関係ない。加えて諦めも悪い。君を諦めてあげるつもりなんて、毛頭ないよ」
「ルキシュ……」
レティシアはルキシュが踏み込んできただけ後ずさりながら、困ったように眉を寄せた。
「でも、私……」
「ミケと上手く行っているんだったら、さすがに諦めるつもりだったけど。どうやらそうじゃないようだし」
「それは…そうだけど」
「本当に……来てよかった。実家に戻ったと言っていたけど……心配だったからね」
「…心配?」
眉を寄せて問うた時には、もうルキシュの顔は目の前に迫っていて。
少し怒ったような表情のルキシュが、低い声で囁く。
「まったく…無防備にもほどがある」
「むぼう……」
び、という言葉まで続ける前に。
とん、と肩を押され、入ってきたドアに背がぶつかる。
「え…」
何が起こったのか理解する暇もなく。

どん。

レティシアの顔のすぐ横のドアを、ルキシュが乱暴に叩いた。
そのまま、ずい、と顔を近づける。
(かっ……壁ドン…!)
頭の奥で妙に冷静に考えるが、それ以外の領域はもはや真っ白だった。
破壊力の高い顔面が、少しの怒りと苛立ちをはらんで目の前に迫っている。パニックどころの話ではない。
「君のことを好きだと言っている男をホイホイ部屋に上げて二人きりになって…何もされないと思ってるなら相当おめでたい頭だね」
「えっ…な、ななな、なにもされない、ってっ」
相手のことが好きか嫌いかとか関係なく、明確な好意をもって迫られたことが皆無だったレティシアには少し刺激が強すぎたようだ。顔を真っ赤にして、うまく回らない頭で必死に言葉を紡ごうとしている。
ルキシュはその体勢のまま、嘆息した。
「こんなにあっさりと近寄らせて…キスされたって文句は言えないよ?」
「きっ」
ぐわ、とさらに顔の熱が上がる。
ルキシュは半眼で彼女をじっとりと見た。
「……まさか、他の男にもこんなことを許していないよね?」
「ま、まままままさか!」
あわてて手をぶんぶん振るレティシア。
「てて、ていうか、そんなことする人、いなっ、いないわよっ、私なんかにっ」
はぁ。
ルキシュは深いため息をついて、またレティシアを軽く睨んだ。
「蒼月の館の看板娘」
「えっ」
「ここに来る前に、少し調べたよ。君の家のこと。蒼月の館の看板娘が最近戻ってきた。器量も気立ても良く、明るくて人懐こい、街の人気者だった。家を出た時は、商店街の若い男衆がそりゃあがっかりしたもんだったが、帰ってきたとあって色めき立ってる。みんな牽制しあって、あの子に声をかけるチャンスを狙ってる…だって」
「うっそ、なにそれ?!」
心底驚いた様子で、レティシア。
ルキシュは半眼のまま続けた。
「君はもう少し自分のポテンシャルを理解した方が良い。冒険者としてやってきて、強いのはわかるけれど、こんなに無防備じゃあっという間に付け入られるよ?」
「そんな……だって」
「まあ」
戸惑った様子のレティシアに、ルキシュはまた唐突な笑みを向けた。
「僕も付け入ろうとしているうちの一人だから、あまり警戒されても困るけれど」
「っ……」
明らかに自分の顔面力を理解したうえでの綺麗な笑みに、また眩しすぎて目をぎゅっと閉じるレティシア。
くす、と笑う音と共に、目の前に迫った顔が離れていく気配がした。
恐る恐る目を開けると、ルキシュはまだニコニコしながら襟元を正していた。
「今日は何もしないでいてあげるけど、次に同じ状況になった時には僕も紳士でい続けられる自信はないから、承知しておいて?」
がくがくと無言でうなずくレティシア。
ルキシュは満足げに頷くと、ドアに寄りかかっている彼女の肩をそっと避けた。
「今日は帰るけれど。休暇はしばらくあるから、また近いうちにお邪魔するよ。それじゃ」
あっさりとドアを開けて外に出ると、恭しく礼をしてそのままドアを閉じる。
そのまま遠ざかっていく足音を耳にしながら、レティシアはぺたんと床に座り込んだ。
まだ顔が熱い。胸の鼓動が収まる気配もない。
情報量過多すぎて頭がよく回らないまま、泣きそうな声を上げた。

「……いったい、どうなっちゃってるのよー?!」

また近いうちにお邪魔する、の宣言通り。
ルキシュはそれから三日と空けずに蒼月の館を訪れた。

「このオムライスも美味しいね。まあ、僕は君の作ったものの方が美味しいけれど」
「来る途中の雑貨屋で、君に似合いそうなピアスを見つけてね。着けてみてくれる?」
「庭に咲いていたんだ。綺麗だろう?店の中にでも飾ってくれるかな」
「そのワンピースも良いね。君の魅力を良く引き立ててるけど…あまり他の男には見せたくない、かな」
「今話題の恋愛小説なんだって。君が好きそうだと思って。読んでみる?」
「そうだ、今劇場にフェアルーフのサーカスが来ているんだって。チケットを取ったんだけど、一緒に行かないかい?」

諦めてやるつもりはない、と豪語した通りに。
これまでのわかりにくいアプローチが何だったのかというほどに、ルキシュはあからさまにアピールをしてはレティシアをどぎまぎさせていた。

開き直った王子の猛攻はそれだけではない。

レティシアの手料理をねだったのは最初だけで、それからは普通に父や兄の作る料理を食べていたし、エリオットやルティアともよく話し、知らない間に両親とも仲良くなっていた。
返す返すも、レティシアと最初に会ったころの、庶民を見下したような態度は影も形も見えない。あの頃のルキシュはプライドが邪魔をしていただけで、本来、魔法の腕はもちろん、こうした社交術も、貴族として生まれたからには当然当たり前のように身に着けているものなのだ。そのスキルをふんだんに使って、レティシアの家族と着実に仲良くなっていっている。

「なんていうか、これ……」
「着実に外堀を埋められてる状態、だね」

ベッドに横になったまま、ルティアは妙に楽しそうに微笑んだ。
「やっぱりそう思う?!」
涙目で手を組んでそちらを向くレティシア。
ルティアはくすくすと笑った。
「あのエール兄さんが、レティに近づく男を警戒しないなんてよっぽどだよ。父さんは食べる仕草が綺麗だし残さず食べるってべた褒め。母さんはレティと同じで面食いだからね、喋る前から前のめりの勢いだよ。レティよくやったって絶賛してた」
「ううう……」
話を聞くだけで手に取るようにわかる家族の様子に、軽く頭を抱えるレティシア。
ルティアはにこりと彼女に微笑みかけた。
「貴族の人なのに、こんな庶民と仲良くしてくれるなんて。ルキシュさんは本当に、レティのことが好きなんだね」
「………」
複雑そうな顔で黙り込むレティシア。
だがそれは、当初のような困ったような表情ではなくて。
「…んー、ルキシュが兄ちゃんたちと仲良くしてくれるのは、素直に嬉しい、かな…?」
どことなくくすぐったいような、嬉しさのにじむ表情で。
「ルキシュね、ちょっとおうちが複雑で…あまり、家族と仲がいいっていう感じじゃないから。だから、家族のあったかさとか、知ってもらえたらいいなって思ってたの。父ちゃんも母ちゃんも兄ちゃんたちも、私の自慢の家族だから」
「そう……か」
ルティアはまた嬉しそうに笑みを深める。
レティシアが家族として自分たちを誇りに思ってくれていることはもちろんだけれど。
自分に向けられている感情よりも、自分が地味に窮地に追い込まれていることよりも、まずルキシュの幸福を自分のことのように喜ぶ。
(ルキシュさんは、レティのそういうところを好きになったんだろうね…)
声には出さずにそう思いながら、ルティアは面はゆい笑みを浮かべる妹を眩しそうに眺めるのだった。

「こんなところにいたのか、探したよ」
ルティアの部屋を出ると、レティシアを探していたという様子のルキシュがこちらに歩いてきた。
「ルキシュ。どうしたの?」
もはや我が物顔でルード家の中を歩いていることに誰もつっこまない。レティシアが聴くと、ルキシュは改まった様子で言った。
「少し、話があるんだ」
「話?」
「エリオットさんも呼んでる。レティも来てくれる?」
真剣そうな話に、状況がつかめずにひとまず頷いて。
レティシアは先導するルキシュの後について、店の方へと歩いて行った。

「それで、話と言うのは?」
ランチが終了し、準備中の看板を掛けた店内に客の姿はない。
フロアの奥にある4人掛けのテーブルに腰かけて、エリオットとレティシアは向かいに座るルキシュをまっすぐに見た。
「ルティアさんのことです」
エリオットの言葉に促されるように、話を始めるルキシュ。
「彼女の話では、あまり容体がよくないということですが…」
「…ああ、幼いころから病気がちでね。レティが冒険者になるって家を出た前後は、それでもまだ立って外を散歩するくらいはできたんだけど…」
辛そうに視線を逸らすエリオット。ルキシュと話を重ねるうちに、当初の畏まった様子はだいぶ薄れ、口調もくだけたものになってきている。
ルキシュはそちらを向いて、さらに続けた。
「失礼ですが、街の医者にかかっているんですか?」
「ああ。昔からのかかりつけでね。王城近くの総合病院で診てもらったこともあったけど…結局有効な治療法は見つからなくて。お恥ずかしい話だけど、金に糸目をつけない、と胸を張って言えるほど、稼ぎが多いわけでもなくてね」
苦笑して答えるエリオット。こういう話を冗談めかして言える程度には、ルキシュに心を開いているのだろうか、と思う。
「これは、ご相談なんですが」
ルキシュは真剣な表情で身を乗り出した。
「僕の実家に相談すれば、王立研究院の魔法医学担当に繋ぎをつけられるかもしれません」
「…えっ」
声を上げたのはレティシア。
エリオットも驚いて目を丸くしている。
「そんな…しかし」
「セカンドオピニオンで、何か別の可能性が見つかるかもしれない。幸い、彼女が戻ってきてからルティアさんの容体は少し安定しているようですし…この機会に、可能性に賭けてみませんか」
「ルキシュ…本当に…?」
言いたいことは山ほどある。が。
街医者よりも、王立研究院のエリート魔法医に診てもらうことが出来れば。絶望的とも言えるルティアの病気に光が見えるかもしれない。
他のあらゆる不都合を押してでも、レティシアもエリオットもルティアが助かってほしいという気持ちが第一だった。
ルキシュはレティシアの方を見て、真剣な表情で言った。
「君の力になりたいのももちろんだけど…僕も、ルティアさんには元気になってほしいんだよ。もっと、彼と話をしたい。僕と同い年で…あんなに優しくて良い人が、命を散らすにはまだ早すぎる」
「ルキシュ…!」
感極まった様子で立ち上がるレティシア。気がせいたのを表すように、がたん、と椅子が音を立てる。
嬉しそうに礼を言おうとして、しかしふと、レティシアは心配そうに眉を寄せた。
「あ……でも、おうちに相談しなきゃいけないんでしょ?その……大丈夫なの?」
「……そこは、どうにか頑張るよ」
レティシアの言いたいことを察してか、苦笑を返すルキシュ。
レティシアはなおも心配そうに、それでも口をつぐむ。
じゃあ、とルキシュは早速席を立った。
「これから家に戻って、伝手を探ってみます。良い知らせがあればすぐに……」
と、出口へと向かおうとしたところで。

「こんなところにいたんだね。ずいぶん探したよ、兄さん」

客の来ないはずの入り口から、聞き慣れない声が店内に響いた。

「兄…さん…?」
知っているがなかなか脳に浸透してこない単語をつぶやきながら、レティシアは入ってきた人影にゆっくりと視線を向ける。
年のころはレティシアと同じくらいか。ルキシュによく似た端正な容貌に、短く整えられた金髪。仕立てのいいシャツに紺色のジャケットを羽織り、見るからにこんな街の食堂には似つかわしくない上流階級の人間であることを思わせる。
「リカルド……」
ルキシュはわずかに眉を寄せて、おそらく彼の名前であろう言葉をつぶやく。
リカルド、と呼ばれた青年は、やはりルキシュによく似た笑みを深め、彼の元に歩いてきた。
「突然帰ってきて、ろくに家にもいないで何をしているかと思えば…」
嫌味を滲ませた口調で言い、レティシアの方に視線を向ける。
「下町の庶民の女に夢中になってるっていうのは本当だったんだ?」
「なっ……」
初めて出会った頃のルキシュが可愛く思えるほどの、完全に見下しきった語調と態度。物語に出てくる醜悪な貴族がそのまま湧いて出たようなリカルドの様子に、レティシアはカチンときて身を乗り出す。
だが。
「初対面の人間に名乗りもしないでその態度か。マスターグロングの礼節も地に落ちたな」
ルキシュが冷たく言い放ち、気勢を削がれる。
リカルドは鼻白んだ様子でいったん口をつぐみ、それから嫌味なほど恭しく礼をして見せた。
「これはこれは、失礼いたしました。申し遅れました、私はリカルディアーノ・サー・マスターグロング。文字通りの愚兄が、いつもお世話になっております」
丁寧な口調のまま人を苛立たせる選手権があればぶっちぎりの優勝だわ、と他人事のように思いながら、レティシアはエリオットと共に名乗りを返す。
リカルドは感心した様子で、彼女の姿を上から下まで舐めるように見た。
「ふぅん…?こういうのが兄さんの好みなんだね?」
理解できないけど、というように嘲笑をルキシュに向けて。
ルキシュは慣れているのか、リカルドの挑発を無視して嘆息した。
「どうでもいいだろう。お前こそこんな下町に何の用だ」
「もちろん、兄さんが馬鹿なことをする前に連れ戻しに来たんだよ」
「は?」
眉を顰めるルキシュ。
リカルドは嘲笑を浮かべたまま、続けた。
「マスターグロングの長子が、責務を果たすでもなくフラフラと下町の料理屋なんかに入り浸って、身分違いの女に入れあげて身を持ち崩した挙句家に迷惑をかけないようにするためにね?」
「っ……」
再び着火するレティシア。
しかし彼女が何かを言う前に、ルキシュが冷静に反論した。
「責務ね…僕に課せられた責務なんて本当にあるのかな?
本来長子が行う責務をなんだかんだと理由をつけて取り上げたお前がよく言えたものだ」
「取り上げたのは僕じゃないよ。母様だ」
大仰に肩を竦めて、リカルドは言った。
「母様が頼りない兄さんに見切りをつけて、僕に任せてくれるようになったんじゃないか。自分の力量の無さを棚に上げて、弟に責任を擦り付けるのはやめてほしいね」
「……っ」
母、というワードは少なからずルキシュにダメージを与えるものであったらしい。
リカルド自身の嫌味には動じなかったルキシュが、明らかに不快そうな表情を見せている。
そのことに気を良くした様子で、リカルドはさらに続けた。
「マスターグロングの長子でありながら大した魔法も使えない兄さんを恥じる気持ちはよくわかるよ。本当に父様の血を受け継いでいるのか不思議なくらいだ。そんな聞くに堪えない醜聞に心を痛めた母様の気持ちがわかる?」
「……そんな醜聞が本当にあったと?」
「当然だよ。それもこれも兄さんが落ちこぼれで不甲斐ないからだろう?
フェアルーフくんだりまで追い出してやっと安心したっていうのに、よくまたマヒンダに顔を出せたものだ」
きり、と歯噛みするルキシュ。
マヒンダに帰ってくるのが気まずいどころの話ではなかった。レティシアの想像以上に、ルキシュの家は彼にとって針の筵だったようで。
リカルドは、ふん、と嘲るように鼻を鳴らした。
「休みのシーズンでもないのにマヒンダにいきなり帰ってきて、何をするかと思えば女にうつつを抜かして、まったくあきれてものも言えないね」
「……お前には、迷惑をかけてないだろう」
絞り出すように反論したルキシュに、リカルドは不快そうに眉を寄せた。
「これだけ言ってまだわからないの?魔力だけじゃなくて理解力もないんだね?
兄さんはさ、いるだけで迷惑なんだよ。ただここに存在しているだけで、僕にも母様にも迷惑をかけているの。
落ちこぼれなら落ちこぼれらしく、フェアルーフでおとなしくしてればよか…」

「いいかげんにして!!」

だん。
力いっぱいテーブルを叩き、レティシアはリカルドの流暢な嫌味をぶった切った。
リカルドもルキシュも、ついでにエリオットも目を丸くしてそちらを見やる。
「黙って聞いてれば何?確かにうちは庶民ですよ、貴族のことなんて全然わからないし、ルキシュやあなたがどんな重いものを背負ってるのかなんてまったく理解できないでしょうね、でも!」
レティシアは、きっ、と涙目でリカルドを睨みつけた。
「私は何言われたっていいわ、本当に庶民だし!頭もよくなければ礼儀も知らないし!本当のことだもんね!
でも、ルキシュに言った言葉は訂正して!」
「レティ……」
思わず、といった様子でこぼすルキシュ。
それに気付いているのかいないのか、涙目のままレティシアはリカルドに食ってかかる。
「弟なんでしょ?家族なんでしょ?ルキシュのこと知りもしないで、わかろうともしないで、勝手なことばかり言って、ルキシュを傷つけないで!あなたに、ルキシュの何が分かるの?!
ルキシュだって、すごい魔法が使えるし、頭も良いし、コミュ力もすごいし、とにかくすごい人なんだから!」
ばん。
再び手のひらで強くテーブルを叩くと、レティシアはめいっぱいの大声で啖呵を切った。

「ルキシュは、落ちこぼれなんかじゃない!!」

しん、と沈黙が落ちる。
リカルドは庶民に口答えされるとは思っていなかったのか、口をパクパクさせている。
しばらくあっけにとられていたルキシュだったが、不意に、くっ、と喉を鳴らした。

「ふっ……ふ、は、あはは、あははは!」

こらえきれない、というように笑い声をあげるルキシュ。
今度はレティシアがあっけにとられる番だった。最高潮だった怒りのボルテージがあっけなく引っ込む。
ルキシュはなおも爆笑しながら、あふれ出た涙をぬぐって、リカルドの方を向く。
「…だそうだよ?僕はどうやら、落ちこぼれじゃないらしい」
冗談めかして言うと、リカルドは我に返ったように言い返した。
「なっ、そんな下町娘の言うことなんか当てになるもんか!」
「今は下町の料理屋の看板娘だけれどね?彼女はかつて、冒険者として生計を立てていた。僕と出会ったのも、フェアルーフの魔道学校の校長が彼女を冒険者として雇ったからさ」
「フェアルーフの魔道学校の…校長」
ミリーの名はマヒンダにもそこそこ轟いているらしい。権威に弱い貴族らしさを見せ、少し勢いが衰えるリカルド。
ルキシュはにこりと微笑んだ。
「所詮学校に行って魔法を『教えてもらっている』僕らとは違って、実戦で魔法を『使いこなしている』冒険者だ。そのお墨付きがもらえるなんて、なかなかのものだと思わないか?」
「なっ……し、信じるものか!」
言いくるめられようとしていることを感じたのか、リカルドは首を振って体勢を整えた。
「そんなどこの何者ともわからない小娘の言うことなんか、信用に値するか!兄さんの実力は僕だって知ってる!ろくな魔法も使いこなせないくせに…」
「じゃあ、こうしよう」
ぽん、と手を一つ打って。
ルキシュは落ち着いた様子で、リカルドに言った。
「これから魔術師ギルドに行って、僕と魔法勝負をする。ギルドなら周りに被害も及ばない、公平なジャッジを下せるし、記録にもなる。
僕が負けたら、お前の言う通り僕はフェアルーフに帰るよ。
でも、僕が勝ったら」
少し強い視線をリカルドに向けて。
「僕はフェアルーフの魔道学校を辞めて、マヒンダの学校に戻る。院に入る手続きはもう済んでるから」
「ルキシュ?!」
驚いてルキシュの方を向くレティシア。
ルキシュは少し得意そうにそちらを見返した。
「休暇と言ったけれどね。実はその調整をしに戻ってきていたんだ。フェアルーフの学校にもマヒンダの学校にも必要な手続きは出揃ったのだけど…どのみち、家の了承を得なければならなかったからね。ちょうど良かった」
「そう……だったんだ」
情報量の多さについていけず、気の抜けた返事を返すレティシア。
ルキシュはにこりと彼女に微笑みかけて、再びリカルドに向き直った。
「…それで?どうする?やるのか、やらないのか」
「もちろんやるさ!」
リカルドは意気揚々とルキシュに言い返す。
その様子が、ルキシュとのウォークラリーの初め、自分の実力をきちんと理解しようともせずに高得点を意気揚々と狙っていた姿と妙に重なって、レティシアはなんだかほのぼのとした気持ちになってしまった。

図らずも彼女自身が言った通り。ルキシュは全くもって、落ちこぼれなどではない、のだ。

ルキシュの挑発に流されるようにして店の出口へと歩いていくリカルドの背中を見送っていると、後ろからエリオットにとんと肩を叩かれた。
「エール兄ちゃん」
「お疲れ。ヒヤヒヤしたよ…不敬罪で捕まるかと思った」
「えー!そんなことがあるなら止めてよ!」
「あの勢いのレティを止められるもんか。全く、昔から猪突猛進なんだから…」
「うう……」
「ルキシュさんを持ち上げるのだって、すごい魔法、すごいコミュ力、とにかくすごい、って……そんなにすごいを連呼しなくても」
こらえきれないように思い出し笑いをするエリオットに思わず赤面する。
「しょ、しょうがないでしょ、語彙力ないんだから…」
むしろ、顔が良い、と言わなかったことを褒めてほしい。
「でも、よく頑張ったな」
ぽんぽんとレティシアの頭を撫でて、エリオットは嬉しそうに微笑んだ。
「あとは、ルキシュさんが勝つのを見届けておいで。冒険者のレティが胸を張って断言できる、すごい人なんだろう?」
「そうよ!あんな頭でっかちのおぼっちゃまになんか負けるもんですか!」
自分が戦うのでもないのにファイティングポーズをとってから、レティシアは一つ頷いて歩きだした。
「じゃあ、行ってくるね、エール兄ちゃん!」
「ああ。朗報を待ってるよ」
エリオットは笑顔で手を振って、レティシアを見送るのだった。

「どんな魔法を使ってもかまいません。相手の肩を地面につけた方の勝ちとします。ただし、致命傷となるダメージを与えないこと。いいですね?」
マヒンダの魔術師ギルド総本山。
あらかじめ手を回していたのか、到着するなり闘技場のような場所に案内され、ルキシュとリカルドの勝負はとんとん拍子に始まろうとしていた。
審判となるギルド員のルール説明を神妙な表情で聞き、ルキシュとリカルドはそれぞれに頷いた。
「わかりました」
「了解した」
一呼吸して、お互いに見つめ合い。

「はじめ!」

審判の一声で、双方が魔法の構成を編み上げる。
初めに仕掛けたのはリカルドだった。
「コールドスプラッシュ!」
呪文と共に水しぶきが散る。勢いを持った水は凶器となってまっすぐにルキシュに向かっていった。
だが。
「ウィンドウォール!」
最初からそれを見越していたのか、厚い空気の壁を展開させて水の勢いを逸らすルキシュ。
「なっ…」
彼が魔法を防いだことは、少なからずリカルドに衝撃を与えたようだった。
間髪入れずに、ルキシュが次の魔法を展開する。
「ストーム!」
壁となっていた風が、今度は竜巻のように形を変えてリカルドへと向かっていく。
その勢いは人一人を軽く飲み込みそうな大きさだった。
「くっ…!」
向かってきた竜巻から身を守るため、次の魔法を編み上げるリカルド。
「ウォーターバリア!」
彼を取り囲むように展開した水の膜が、がりがりと削り取ろうとする竜巻の勢いを中和している。
やがて、ふ、と竜巻の勢いが消え、リカルドも息をついてバリアを解いた。
だが。
「……っ、いない?!」
正面にいたはずのルキシュの姿がない。
慌ててあたりを見回すリカルド。しかしどこにもルキシュの姿はない。
「…っ、上か?!」
見上げると、ちょうど彼の斜め後ろの空中に、ルキシュが浮いていた。
リカルドに向かって、まるで銃を向けるように指先を向けている。
「ウィンドビット!」
びす。びすびすびすっ。
ルキシュの指から次々と放たれる空気の弾が、振り返りかけの不安定な体勢だったリカルドの右腕と左足に直撃した。
「うわぁっ?!」
完全にバランスを崩し、ぐらりと体を傾けるリカルド。
そこに。
「エア・ハンマー!」
最後にたたきつけるようなしぐさと共にルキシュの放った術が、上から容赦なくリカルドを打ち据える。
「ぐっ……!」
どさ。
あっけなく。
リカルドの体は地面に倒れ、当然肩も地面に着くこととなった。

「そこまで!」

審判の声と共に地面に降り立ったルキシュに、レティシアは急いで駆け寄った。
「やったね、ルキシュ!」
自分のことのように嬉しそうな彼女の表情に、ルキシュもまた嬉しそうに笑みを返す。
「そんな…まさか…聞いてない……兄さんがこんなに魔法が使えるなんて……」
痛そうに体を起こして、呆然と呟くリカルド。
ルキシュはそちらに複雑そうな表情を向けて、しかし淡々と言い放った。
「約束だ。僕はマヒンダに帰ってくるよ。母様への報告は任せる。手続きはすべて僕の方でやるから」
「兄さん…」
リカルドはルキシュによく似た綺麗な顔を不可解そうにしかめて、ルキシュを見上げた。
「フェアルーフで…何があったの?以前は本当に…兄さんは…」
「何があった……か」
ちらり、とレティシアを見て。
「……人生がひっくり返るような出会いがあったよ。僕のちっぽけなプライドも意地も、どうでもよくなってしまうほどのね」
ふ、と微笑して、リカルドに向き直る。
「そうしたら、今まで使えなかった魔法が、不思議なほど使えるようになってた。魔法を使うのが楽しくなった。楽しくなったらどんどん上達して、それもまた楽しかった」
「ルキシュ…!」
嬉しそうに表情を広げるレティシア。
彼があれほどコンプレックスに感じていた弟に勝てたことよりも、マヒンダに戻れることになったことよりも。
彼自身が、魔法を楽しいと感じてくれていることが、何より嬉しかった。
ルキシュはリカルドに向かって、続けた。
「家のことは、お前に任せるよ。母様が僕を排斥して、お前を当主に据えるよう動いているのだから、ここでまた僕が返り咲くのは混乱を招く」
「兄さんは…それでいいの?」
長子として、当主になりたかったのでは、と言外に問うリカルド。
ルキシュはゆっくりと首を振った。
「不思議だね。本当に…不思議なほど、興味がなくなってしまったんだ。今は、せっかく身に着けたこの魔法の力を、もっともっと育てていきたい。それだけだよ」
「兄さん…」
複雑そうな表情を向けるリカルドに、ふわりと笑みを向けて。
「言っただろう?お前の邪魔はしない。迷惑はかけない。だから、僕がすることも邪魔しないでくれないか」
「……わかった」
ルキシュの意思を理解したのか、リカルドは神妙な表情で頷いた。
「母様には、僕から報告しておくよ。父様にも、親戚にも…兄さんのやることには手出ししないように、計らう」
「助かるよ、ありがとう」
ルキシュが礼を言ったのがよほど意外だったのか、リカルドはきょとんとしてから…気まずそうに咳払いをした。
「その……兄さんが帰ってきて、嬉しくないわけじゃない…から」
(デレた!)
心の中でひそかにテンションを上げるレティシア。

複雑な貴族のしがらみで道を違えていた兄弟だが、これからは進む道が異なれど、互いに励ましあって歩いていければいい。
そんな期待を抱きながら、ぎこちない二人のやり取りを見守るのだった。

「…それで、明日からマヒンダの学校に通うの?」
「ああ。実家は遠くはないけれど…寮に入ることにしたよ」
まだお互い気まずいこともあるのか、ルキシュは実家に戻ることはしなかったようで。
それが少し寂しくはあったけれど、レティシアはマヒンダの学校に戻ることが出来たルキシュを素直に祝福した。
「そっか、おめでとう。魔道学校ならここからも近いから、またおなかすいた時には食べに来てね」
「言われなくてもそうするよ」
言葉の通り、今日も今日とて蒼月の館でランチタイムを過ごしているルキシュは、丁寧なしぐさで食後の祈りをささげると、ああ、と思い出したように言った。
「そういえば、リカルドがこないだ騒がせたお詫びをしてくれるそうだよ」
「お詫び?」
首をかしげるレティシア。
「うん。ルティアさんの病気を診てくれる打診を、王宮付の典医に取ってくれるって」
「お、王宮のお医者様?!」
驚いて声を上げるレティシア。
ルキシュは頷いた。
「そう。さすがは次期当主だね、王立研究院の魔法医よりも強力なコネだ。オメガといって、エルフの男性だそうだよ」
「エルフの男性…美形の白衣…!」
何か違う意味でテンションが上がってきたレティシアを半眼で睨むルキシュ。
「…残念だけど、人間の女性にはあまり興味はないようだよ」
「それって男性には興味あるってこと?!倍率ドンさらに倍じゃない!!」
オメガという名前も良くない。残念ながらアルファは女性ですが。
「…君の嗜好はよくわからないけど深く追求しないでおくよ…」
げっそりと嘆息するルキシュに、レティシアは急に我に返って眉を寄せた。
「で……でも、そんなえらいお医者様に診てもらえるようなお金なんてうちにあるかな…?」
「まあ、ある程度なら、僕個人の資産もあるし。君に貸しておくことはできるよ?」
「ええっ、そんな、そんな大金借りられないよ…!!」
ますます困ったように眉を寄せるレティシア。
とそこに、エリオットがニヤニヤしながらやってきて声をかける。
「こんなに持参金まで積まれたら、もう嫁に行くしかないな、レティ?」
「よ、よよよ嫁っ?!」
困ったような表情から一転、ぐわっと顔を赤くするレティシア。
「そ、そそんな、お金でなんて困るよ!」
「そうですよ、それとこれとは別です」
意外にも、ルキシュが真面目な表情で否定した。
「彼女にはお金じゃなくて、気持ちをもってお嫁に来てほしいですから」
「る、ルキシュまで何言ってるの!!」
「ふふ。それに、返す当てはあるんだろう?」
「返す当て…?」
何のことかわからず首をひねると。

「レティは将来、王立研究院で呪歌を研究するエリートになるんだよね?そうしたら、僕の貸した資産なんて軽く払えるよ」

ルキシュの言葉に、レティシアの傍にいたエリオットがぎょっとして声を上げる。
「王立研究院って…レティ、冒険者やっててそんな伝手が?!」
「つ、伝手はないわよ!あくまで希望!夢!そうなれたらいいなーって…」
「だけどレティ……王立研究院っていったらエリート中のエリートだぞ?多少魔法が使えるっていったってそんな…」
「できないって決めつけたら最初っからできないから!私は歌で、傷ついた人の癒しになりたいの!」
「そうか……」
壮大な夢を語る妹を、複雑な表情で見降ろして。
「ここにいて努力するって言うなら、応援するよ。店の手伝いもほどほどにな。レティは自分の目標があるんだから」
「そ、そうよね。いつの間にかウェイトレスに返り咲いてたけど…気を引き締めてギルドの依頼をこなしてかなきゃ!」
「はは、その意気だ。じゃあルキシュさん、ごゆっくり」
「ありがとうございます」
厨房に戻るエリオットを笑顔で見送って、ルキシュはレティシアに向き直った。
「僕も…魔道学校の院から王立研究院を目指そうと思うんだ」
「えっ、そうなの?」
意外そうな反応のレティシアに、ゆっくりと頷いて。
「研究院に行って…潜在能力を引き出すとか、そういった分野の研究がしたい。
僕みたいに、ちょっとしたつまずきで魔法が上手く使えない人たちの手助けになりたいんだ」
「ルキシュ…」
魔法をうまく使えなかった彼が、魔法が使えることに楽しさを感じ、そしてその喜びを他の人とも分かち合いたいと思っている。そのことが、たとえようもなく嬉しい。
ルキシュは懐かしむように遠くを見た。
「フェアルーフにいた頃は、すべてを諦めてた。魔法を使うことも、家族に認められることも。諦めてたくせに、認めたくなくて、ずっと苦しかった。
けど、君が諦めないでいいって教えてくれた。自分のために魔法を使うことを教えてくれた。
だから……僕はもう、何も諦めないよ」
す、とレティシアに視線を戻す。

「君がリカルドに怒ってくれた時に、やっぱり君のことを好きだと思った」

その視線には、真摯な熱が込められていて。不思議と目が逸らせない。
「だから…君の隣に立てるような自分になるために、僕は自分の力で結果を出す」
「ルキシュ……」
「それまで……君のことを諦めるつもりはないから。覚悟していて?」
にこり。
また破壊力の高い笑みを向けられて、どぎまぎしながら視線を逸らすレティシア。
「あー、じゃ、じゃあ、どっちが先に研究院に行けるか、競争だね!」
明らかに話の向きを逸らそうとするレティシアに、ルキシュがくすくすと笑いかける。
「そうだね。道のりは長いけど、お互い頑張ろう」

今はまだ。

今はまだ、彼の真摯な想いに正面から答えることはできないけれど。

いつか、胸の中にほのかに灯るこの想いに、名前を付けられる時が来るといい。

そんな予感を胸に、レティシアは明日から広がっていく未来に想いを馳せるのだった。

“The son of noble I refused has been doting” 2022.7.21.Nagi Kirikawa

開き直って、なろう小説みたいなタイトル…w
かりんさんのお誕生日祝いに書きました。ラスセレでルキシュの辞書に「レティシアさんはもう連絡できないって思ってると思いますが、ルキシュは「なんで?普通にするけど」と思ってる。マヒンダに帰ることもあるんだし、彼はあきらめないと思います。」と書いたところ、かりんさんに「ルキレティありかも…」と言っていただけて、そこから妄想を膨らめておりましたwやっと形に出来て感無量です。
ただの鼻持ちならないツンデレお坊ちゃんだったルキシュが、レティシアさんの愛に触れてこんなに立派に成長して…(ほろり)母としても嬉しい限りでございます。
ルキシュが猛攻撃をかける以外に、二人の関係が動くようなそんな事件があるといいなと考えて、これは母か弟かどっちかに出てきてもらうしかないでしょうと思い、順当に弟を出しました。弟の名前から考えたwあとマヒンダの首都の名前も考えたw名前つけるの苦手なんですよ…察して。
決してリケとは呼びたくないリカルドくん、いろいろな意味でルキシュそっくりですwあとぶちキレティシアさんが男前すぎて、ルキシュが「これ以上惚れさすなや…」と思ってますw
そんな感じで、かなり楽しく書けました。気に入ってくださるとうれしいです。
かりんさん、お誕生日おめでとうございます!