それは、とある街での出来事。
「……まぁ」
「気に入ったみたいですね」
ミシェルに頼まれた荷物を届けた家に、大きなアフガンハウンドがいた。それは、リーを酷く気に入ったらしく、足下に擦り寄り、しっぽを振りたくっている。
「うふふ、可愛いわね」
わふ!と撫でられたアフガンハウンドは嬉しそうに一声鳴いて、リーの頬を舐める。
「……そろそろ、行きませんか?」
猫をかぶって……失礼に当たらないように、けれどきっぱりと帰ろうと促すエリーに、リーはきょとんとしながら、アフガンハウンドを抱きしめる。
「でも、もう少し」
「……駄目だ」
その一瞬だけ猫を脱いでそう言ったエリー。
その不機嫌な声にリーは仕方なく頷く。
「分かったわ。でも……どうしたの?」
「どうしたって」
「いーなー、懐かれてるじゃん、リー」
「きゃうん」
そんなロッテのところへ、ミニチュアダックスが走って飛びついてくる。楽しそうにロッテもそのダックスを抱きしめる。
「んー、いー手触りだねぇ!」
「でしょでしょ?なのに、エリーってば、もう帰ろうって」
「やだねぇ、心の狭いオトコは嫌われるよー?ほーら、こんなにかわい……いや、帰ろ?」
撫でていたロッテも急にそんな風に言い出して、リーは更に困惑する。
「ちょっと、二人ともどうしたの?」
「この犬は駄目」
「この犬に限らずだ」
ふん、と同じタイミングで鼻を鳴らした目の前の二人。
「?」
二人の視線が、犬に向いていることを見て取って、リーはまじまじとアフガンハウンドを見つめて。
「ぷ」
首輪には『ELLY』という文字が入っている。
「同じ名前で、同じようにリーにまとわりつくなんてさー」
ロッテはぶちっと文句を言う。リーはロッテの言葉には納得がいったが、エリーの方は分からず、彼を見やる。
エリーは肩を一つすくめただけで、行くぞ、と言ってリーの手を引っ張った。

「で、どうして駄目だったの?あの『エリー』は」
「あれに限った事じゃない」
エリーはリーを抱き寄せて……その手を自分に回させる。
「同じ『エリー』だろうが……駄目だ。お前が抱きしめるのは、『エリー(おれ)』だけでいいだろう?」
「……っふふふ……そうね、あの『エリー』も可愛かったけど……私にはこのエリーがいればいいもの」
ぎゅ、と抱きしめて……あのアフガンハウンドに似ているが、それ以上に愛しい金色の髪に指を絡めて。

犬(エリー)にはしなかった、甘いキスをした。


謹賀新年年賀状ネタ(笑)
いやー、あの後絶対にエリーさんがやきもち妬くような気がして(笑)

小ネタですが、どうぞ。

相川和泉

相川和泉さんからいただきましたv06年の年賀状のイラストから書いて下さいましたーvありがとうございますv → イラストはこちら
相川さんのエリリーはいつも甘々でうっとりいたしますvエリーがかっこ可愛くて(笑)そうですねえ、エリーはじぇらし魔ですから(笑)例え犬といえど、彼女に触れるのは許しません(笑)
ミニチュアダックスがロッテという名前だったとすれば、ロッテはアフガンハウンドを押しのけてミニチュアダックスをべっとり押し付けるに違いない(笑)そして自分もリーにべっとり(笑)でもリーは大型犬のほうが好きそうです、何となく(笑)

相川さん、どうもありがとうございましたv