「……うー?」
ゆっくりと、ササは瞼を開ける。頭ははっきりとはせず、とても暖かい。仄かに朱い……炎を思わせる光に、目を閉じれば……意識がふっと揺らいだ。このまま、もう少し眠っていたい。そっと寝返りを打って、枕を寄せようとして。

「きゃあ!?」
「って、うわぁ!?」
悲鳴を上げられ、ササも驚いた。ベッドの端で座っていたその人の膝を枕にしていたようで、飛び退こうとした瞬間に、バランスを崩した。
「っと、危ないっ!」
がしっと肩と身体を掴んで乗せ直された。ついうっかりその腰に腕を回して落ちまいとしがみついてしまったのだが、途端に赤くなった。
「わわわ、悪い、オルーカ」
「いえ、落ちなくて良かったです。あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ」
普段の柄が悪いのチンピラだのなんのといわれるのもなんのその。借りてきた猫のごとくその膝の上でおとなしく……固まる。
なぜ、こんな事になったのだったか。

こんこん。
「んー、誰だ?」
「ササさーん!私です!あのっ!」
ガツッ!
ノックの音がして、扉を開けようとするより早く、ドアの方が勝手に開いた。しかも、思い切り。
取っ手は腹に。ドアは顔に。
「きゃあああ、ササさん!ササさーんっ!」

「って、アンタのせいかー!」
「あああ、すみません、思い出されましたね……」
申し訳なさそうに額に手を当てているオルーカは、素直に謝った。
「とりあえずベッドに運んで、回復魔法を……と」
「全く、アンタは!もっとそっとドアくらい開けろ!」
「本当に、すみませんでした……」
「…………で?」
「はい?」
ぼそりと聞かれてオルーカは首を傾げると、怒鳴られた。
「何の用事だったんだ!飛び込んでくるほどの用事だったんだろ!?」
「え。あ、あはは……」
オルーカは困ったように笑った。
「……いえ、その……特には」
「何ぃ!?」
「あの、そうじゃなくて、ササさんとお話ししたいなって、それでるんるん気分でいたら、その、ちょっと浮き足立っていて、その。……会ってお話するんだーと思ったらテンションが上がっちゃった、みたいな?」
「っ」
「それで、怪我なんかさせて……すみませんでした。あの、今後こういう事がないように気をつけますから。その……怪我を治したら、すぐ帰りますから」
「……ドアくらい、オレが開けるまで、待て。いいな?」
「はい……」
「それに、アンタ本当にもうちょっと回復魔法の腕を上げた方がいいんじゃないのか?ちっとも痛みが引かないじゃないか」
「そ、そんなに、酷くはないんですけども……うう……が、頑張ります」
「……もうしばらくかかるみたいだし、何か、話せよ。聞くくらい、聞いてやる。オレに面白い話は期待するなよ?」
ぼそぼそ、と赤い顔で言ったササに、オルーカは一瞬きょとんとして。
そして、嬉しそうに笑った。
「ああー、もしかしたら1刻くらいかかっちゃうかもしれませんね」
「おいっ」
「痛くなくなったら、言ってくださいね」
「分かってる」
「……じゃあ、何から話しましょう?ええと」
膝の上のササを、とても優しい顔で。とても嬉しそうな表情で見下ろしながら、オルーカは話し出す。
真っ赤になってそっぽを向き気味の彼の……言外の「もう少し、ここにいろ」という言葉を、しっかり受け止めて。

なんだか、とても心の奥が暖かくなる感情を抱えて。

「オルーカ、なんか話で聞くより膝枕って固い気が」
「…………ササさん?」
「な、なんでもない……」
「……ふふっ」
「って、おい!その凄んだ声まで冗談かよ!?」
「さーて、どうでしょうー?」
楽しそうに、嬉しそうに。2人は他愛のない話をするのだった。

膝枕祭をやるぜ!と言ったら、相川さんがヨネさんとこのササオルで描いてくださいましたv
いいですねえ、らぶらぶではないけれど、そこはかとなく香る「友達以上」の匂いが甘酸っぱい(笑)
オルーカさんの膝は硬いのか、とかそんなどうでもいいことが気になりつつ(笑)堪能させていただきました、相川さんありがとうございましたv