「……まさか、ね」
リーは微笑む。それとて、非常に引きつったものであり……目など全然笑っていないが。
目の前の、現実と戦わなければ。
そ、と右足を踏み出しかけて、やめる。
「……そう、まさかね」
思い切ってリーは一歩踏み出した。
「……リー、おなか痛い?」
「え、べ、別に?」
朝食にはちょっと重いかもしれないコロッケを挟んだサンドイッチを食べているロッテは首を傾げる。
……リーの箸の進み具合が悪い。
「あの日……な訳無いよね。確か前回触らせてくれなかった日が……もぐっ!」
「……い・わ・な・い・で!」
何故そんなことまで知っているんでしょう?(笑)
口に大きめのメンチカツをほうり込まれた。
「違う……それとも昨日ちょっと激しすぎ……むぐっ」
「だ・か・ら!心配しなくていいのっ」
今度は大きなトマトを突っ込んで、リーはため息をついた。
「はぁあ……」
「……だってリー、さっきからサラダとミルクしか食べてないし。油っこいもの避けてるし。気持ち悪いのかなーって?」
純粋に心配してくれているのだろう。
リーはちょっと口ごもると、その理由を口にする。
「あのね……最近、ちょっとこう、美容を気にしなくて、食べたいものを一緒に買い食いしたりとか、不規則な生活が続いてね……体調管理がうまくできなかったというか」
「あー、つまり太ったってこと?」
「言わないでぇぇーーーーーーーーッ!」
ばふっと机に突っ伏す。
「だって、だってほんとに針が凄いところを指すんだもの……」
元々スレンダーなリー。今まで気にしなくても平気だったのだが……それだけに『太った』という事がショックになったのだろう。
「さよなら、ミルクレープ。さよなら、デザートさん」
「ふーん。大変だね」
ぱく、とリーの残したミルクレープをつまむ。
「ロッテ……見せつけないでよっ」
「気にしなくたっていいじゃん。太ってないよ、全然」
「気休め言わないでよっ」
「むしろ、ボクとしてはもう少し肉厚な方が抱き締めたときにやーらかくて、抱き心地が良いと思うよ」
「だ……」
赤くなってがばっと顔を上げてロッテを見ると、にこにことしているロッテと目が合う。
「……リーは、リーじゃないの?」
太っても痩せても。
大事なパートナー。
「ロッテ……うん、ありがとう」
「どういたしまして。あ」
まじまじと自分を見つめてくるロッテにリーは戸惑ったように瞬きを繰り返す。
「な、なに……?」
「もしかしたら、さ?」
「うん」
真面目な顔で指を伸ばして。
「……胸が大きくなったんじゃない?あれだけ揉んでる訳だし……」
ぷに、とつついて見つめる。
「ンなわけないか……」
「そういうことにしておいて」
「ほら、やっぱり気休めは駄目だから……」
「意地悪ッ」
「きゃははは~、食事制限より運動しようよ!冒険したりとか……夜、もっとボクと遊ぶとか☆」
「ロッテぇっ!」
「ご飯は、一緒に食べようよ!一緒にいても……一人で食べているより一緒に食べた方がゼッタイ美味しいよ」
「う……」
どうやらリーの食事制限は一日だけになったようです。
その分どこで体重減らしているのかは、分かりませんが。
おしまい
おまけ
「リー、あのね、体に良い薬草集めて煎じてみたんだ!ダイエットに効果あるってヤツを、沢山探したんだよ」
「……ロッテ、ありがとう」
「飲んでみて!」
リー、沈黙。
「……ロッテ、今、どっち?」
「あー、酷い。大丈夫だよ。ほら」
こきゅこきゅこきゅ。
間。
ばたーん。
「きゃー、ロッテ!」
今現在、ファンブルの時期のようです。
相川和泉さまからお誕生日祝いに頂きましたv
リーとロッテが何だか微妙に微妙な…いや、そうなんですけどね実際(笑)ソフト百合です(笑)そう思ってください(笑)
体重を気にするリーというシチュエーションですが、キミは細い!安心するが良い!ふははは!(泣)
二人の何気ない日常のやり取りが生き生きと伝わってきますvどうもありがとうございましたーv