それは、いつか。
永遠にするための、約束。

「うーうーうー。ミリー先生の意地悪~」
泣きそうになりながらミルカはひたすらに手元の辞書を引きながら、課題をこなしていた。
『実技の補習よ?しっかりね?』
「うーうーうー、きっと何かあるのよ!お約束だわ」
そう、例えば。
よくわからないけれど、化粧品を売るとか。
そうでなければ、丸一日以上、部屋に閉じこもらせるようなこんな課題は出しっこない。
そう、例えば。
「……例えば、フィズが来ているとか?……ううん、それは無いわね。だって、フィズが教えてくれないわけないもの」
ほんの少しだけ、遠い海の向こうにいる恋人を思い出す。
一人前になって、彼に会いに行って。
そして。
「……頑張らなくっちゃね」
そして、一緒にいるために。努力家の彼に釣り合うような自分でいたいから。
だから、例え……裏があったとしても。この課題を終わらせないと。
気合いを入れ直し、ミルカは課題と格闘を始めた。

コンコン。
「……?おかしいな」
ルームメイトのカイに聞いてきたのだ。……今、ミルカは大量の課題を片づけるために部屋にいると。
邪魔はしないつもりだった。……けれど、一目会いたかったのもまた、事実。
ちょっと驚かせてみたくて、黙っていたのだし。
一息入れてもらうために、彼女の好きなロイヤルミルクティーを入れて来た。
……集中しているようならばお茶はここにおいて、帰ろう。そう思い、少しだけ扉を開けてみる。
「……ミルカ」
日の当たる窓の下。机に突っ伏し、ペンも持ったまま。
枕代わりの辞書を片手に眠る、恋人。
「くす」
ほんの少し、笑って歩み寄る。……目を覚ます気配もない。
「頑張ってるんだね」
いつも前向きに、笑って困難を乗り越えていくミルカを、フィズはほんの少し眩しく思う。
そっと手を伸ばし、髪をすく。
「無理は、程々にね」
「~~~~。ふぃずぅ……」
「夢の中でもいいけれど。本物はここにいるよ?……まぁ、いいか。一緒に、いるのなら」
とても、幸せそうに微笑んでいる恋人に微苦笑する。
「……一応、おみやげも持ってきたんだけれど……考えようによってはちょうど良かったかな」
取り出したのは、様々なリボン。
本当はこんなに買ってくるはずじゃなかったけれど、どれが似合うだろうかと考え始めたら、決めかねてしまって。
そっと、彼女の髪にリボンを合わせてみる。やっぱり、一番似合うものが贈りたい。後は、また今度に。……今度はちゃんと会って、渡したいから。
「…………」
どうしよう。
前以上に決めかねてしまう。
全部似合うと思うのは、きっと愛故の色眼鏡もあるのだろうけれど。
その中で、幅の広い真っ白なレースのリボンを選ぶ。……白は彼女によく似合うし……レースの模様が、綺麗だったから。
しゅる、とミルカの髪を結ぶリボンをほどいて、自分の持ってきたレースのリボンを結ぶ。……そういえば、彼女はくせっ毛だからまとめるのが大変だと言っていたけれど……こうして彼女の髪をいじるのは、不思議と楽しく、あまり気にならなかった。
「よし……と」
ほどく前以上に、綺麗にまとめられたと思う。……よく、似合う。そう思って少しだけ笑った。
「……ミルカ?」
……まだ、目は覚めそうにない。よほど疲れているのだろう。
手の中のたくさんのリボンと眠り姫状態の恋人を見比べて。
何かを思いついて笑んだ。

「じゃあね、ミルカ。時間だから、もう行くけれど。……君がしていたこのリボンは、くれるかな?」
返答はないけれど、フィズは手を振る。
「……またね」
そうして彼は踵を返した。

「……うー……ん?」
目を覚ますと、外が暗かった。
「ああああっ!やだ、わたしってば、寝ちゃったの!?うわーん、どうしよう、課題が……あれ?」
自分の手に、リボンが結んである。細い白と銀の糸で編まれたものだ。
「……ロイヤルミルクティー……?カイかな?」
首を傾げながらそれに手を伸ばす。皿の下に……手紙。
「……フィズ!?え、来てたの!?え、え、え?」

『よく眠っているみたいだから、帰ります。今度は話をしてね?約束。とりあえず、おみやげが気に入るといいんだけど。フィズ』

「わたしの馬鹿ぁぁぁぁっ!」
喚いても仕方がない。ぐすぐす泣きながら彼の残していった手のリボンを見る。みやげとは、これのことだろう。
「……あ」
かぁっと頬が熱くなる。
結ばれているのは、左手の薬指に巻かれたリボンは白と銀で指輪のよう。

『約束』

フィズの声が聞こえる気がした。
そこはもう、売約済みだと。
いつかのために、約束を。
「……もー……」
照れて赤くなった顔のまま、左手を胸の前で押さえる。
「うん、約束。ちゃんと会いに行けるように、頑張るから!」
冷めてしまったロイヤルミルクティーを飲んで、ミルカは握り拳を作る。
「頑張るわよっ!」

ちなみに、本命の髪のリボンに気がついたのはもっとずっと後。入浴時だったりする。

白いリボンで、君を縛る。
一生を束縛するほど強くはないけれど……それは約束。
いつか、ここに永遠を誓える日が来るように。
今は引っ張れば解けてしまうほど、儚い逢瀬でも。
いつか、ずっと側にいられるようにと。

永遠を誓った証が、marriage ring。
永遠を約束した証が、engage ring。

いつか、側にいられるように。
二人、また会えるように。
この思いが、永遠を望むほどに高まるように。

今はささやかに、二人を繋ぐもの。
「また、今度」
それを約束する証。
――――― engage ribbon。


言い訳。
げふ、恥ずかしくなってきました(汗)
夜ばい?(笑)
いや、まぁ。
とりあえず、行動用紙は次回は自分でどうにかいたします(汗)
ありがとうございました(汗)
生け贄に捧げておきます。

相川和泉

相川和泉さまから、あることをした御礼としてぶんどっ…もとい、いただいたものですv(笑)
遠恋状態の二人ですね。……遠恋になるんですよ、そのうち(笑)そう思ってください(笑)

昼なんだから、昼ばいじゃないですか?(笑)
いやぁ、フィズのはずかしっぷりがとてもいい感じです(笑)
あたしのなかでも、フィズは実は意外と嫉妬深いのではないかというのは固まっていて。
しかも気障だから、いかにもこういうことはしそうですけど(笑)
あたし的には、ミルカが寝ていたのはミリー先生が魔法をかけたか一服盛った説を主張(笑)
でなければ、彼女が簡単に二人を会わせるはずがないですからね(笑)

で、ちなみに行動用紙というのは、HPビルダーにまだ慣れない相川さんの変わりにあたしが手直しをしたフォームのことです(笑)
ビルダーは、タグが適切じゃないわ余計なことはするわで…使えん。