玖朗は、屋敷に訪ねてきて、開口一番に言った。
「……随分と、変わった香を焚いてるようだけど?」
「……放っておいてくださいよっ!」
「いや、いいんだよ?香っていうのは、文化で、個性を出すためのものだから。……で、何?通う女ができたの?でも、ちょっときついよね、もう少し考えて焚かないと」
「違います!」
ばん、と床を叩いて叫ぶ。
「まああ。いらっしゃいませ、お兄様v」
「ああ、うん、こんにちはv」
「お前に兄なんて呼ばれたくない、ってそんな拒否しないでくださいv」
「やだなぁ、そんなこと一言もいってないじゃない」
あはは、うふふ、となんだか怖い空気に、家主はそっと肩身を狭くした。
「で、どうしたの、この香り?」
「いえ、その」
「いいでしょーv」
「そう、なるほどね」
何もまだ、言っていませんが。
全てを悟った顔で頷いた玖朗に、みけは全力でそう突っ込んだ。
「たまに思うんだ……俺にも、お前の心が読める。そんな瞬間が」
「それが、私にもたまに聞こえる気がするんですよ。不思議ですね」
頷き合うこの2人、実は凄く仲が良いんじゃないか、お前らもう付き合っちゃえばいいのにとか、心の中で突っ込む。
「「今、実は凄く仲が良いんじゃないか、と思ったでしょう?」」

なんで、分かったんだろう。
みけはひっそりそう思ったが、それすら目の前の2人は読めているようだった。

「で、一応説明して欲しいな?」
「りりさんが、勝手に片っ端から人の衣に焚きしめやがりました」
「ええー、高貴な人はこうやって香を衣に焚きしめるんだって言うから、お世話になっていることもあってお手伝いしてあげているのにv」
「高貴じゃないんで結構です!」
「……宮仕えしてんじゃん、お前……」
首になったけど。
「まぁ、貴公子はそういうところにも気を遣うもんだよね。俺も、お前に通う姫君でもできたのかと、興味し……ほっとして」
「まぁ、そんなお話が!?りり、捨てられちゃうんですね、酷い、体だけの関係だったんですね!」
「こんな香の衣来たまま、どこの女性のところへ行けと!?」
この辺りでは、珍しい香りだ。玖朗はそっと考える。何の香りだろう……?
「桜の香りの香は、この辺りでは珍しいんですねぇ?」
「ああ、桜。……へぇ」
薄紅の衣の少女を見やって、心の中で軽く彼女に問いかけた。
「……そうですよ、お兄様v」
「個人的には君みたいな妹は怖いからいらない」
それが、答えかと玖朗は小さく笑う。
「兄上?」
「ううん、なんでもない。うちの弟はもてるなぁと思ってー?」
「あやかしにもてる人生……寂しすぎる」
「昔からじゃん……たぬきとか拾って帰ってくるしさ……。化け猫の式神とかすごい怖かったけど」
見て見て、兄上ーvと小さい弟が巨大な猫を出したときは、真剣にどうしようか悩んだものだ。
「ま、通う相手が屋敷の中っていうのも、いいんじゃないのー?」
「いい加減にしてください!」
「……元気そうで安心したよ。もう少し衣の香りが飛んだら、遊びにおいでよ」
「……す、すみません……」
音信不通の非礼を詫びる弟に、玖朗は苦笑した。
「じゃあ、りりちゃん。またね。何なら君にも香を贈ろうか?」
「じゃあ、流行りのを、お願いしますねv」
「はいはい。さよなら桜花の姫君」

ひら、と手を振って屋敷を出てから、一度振り返る。
『自分の香りでも、移したかったの?……自分のだって、言いたいの?』
「軽く、そうだって言ったな……。どう言うつもりなんだかね」
一つ肩をすくめて、自分の衣の袖を口元に寄せる。
「……流石に今日はどこかへ行くのは止めないとねぇ……」
少しいただけで移った香りに、弟も大変そうだな、と玖朗は思った。

毎年、バレンタインに相川さんからいただくもののお返しとしてホワイトデーに桜のお茶をお送りしているのですが、今年は別のところに買いに行ったらそこで桜のグッズフェアをやっていて、とても可愛らしいお香立てと桜の香りのお香があったので、それをお贈りしたんですよ。
そうしたらこんな素敵なものを頂きましたv相変わらず仕事が早い(笑)
確かメッセージに「私の香りで胸をいっぱいにしてくださいねvまあミケさんの胸が私でいっぱいなのは知ってますけどv」とか書いた記憶がありますが、まあお香は平安の文化ですよな…桜のお香は臭いがきつそうです(笑)お送りしたお香は、サンプルは割りとマイルドな香りだったと思うんですが…(笑)
つーかあれですね、なんかすっかり玖朗さんとりりが仲良くなってますね(笑)トラアゲでも是非ご一緒したいものです(笑)
相川さん、素敵なものをありがとうございましたvお香でリラックスしてください、できるかどうかわかりませんが(笑)