「うふふ」
「楽しいですか?」
「楽しいですよ」
諦めきった声で、ミケはそう聞いたが、予想通りの答えに更にため息。
女王の私室ともなれば、軽々しく入れるものではない。当然入り口には見張りも立つし、警備も万全。彼女とその妹、そして乳母。着替えに女官が入るくらいか。
「……楽しいなら良いんですけれどね」
「やだ、あまり楽しそうじゃありませんね、侍従長」
「まぁ、僕は、あまり」
彼女のプライベートな空間。だから。
「…………はぁ」
「ミケさん?」
「いや、確かにあなたが寛ぐために、と思ったんですけれど、撤回したいんですが」
「どうしてですか?」
哀しそうな声に、一瞬罪悪感が沸くが、多分演技だと思う。
「居場所がないというか」
「別にソファに座っていたら良いんじゃないですか?」
「居心地我悪いというか。この、女の子女の子した空間が」
「違和感がないから大丈夫ですよ」
「いやっ、見た目はともかくね!?」
多分、一番居心地が悪いのは。
「もうちょっと……離れませんか……?」
「いやです」
猫であればごろごろと喉を鳴らしているのだろうか。座っている彼の腕に自分の腕を絡めてご機嫌にすり寄る少女に、ちょっと目が遠くなる。
「そりゃ、あなたの部屋なんですから、好きにして良いよとは言いましたが」
「ミケさんを好きにして良いなんて、豪勢ですねっ」
「そういう意味では」
警備は万全。うっかり何かしたらさっくりあっさり首が飛ぶ。
それでも、普段はスキンシップなんかあまり人目があるからしないせいか、人目を気にしない彼女の空間では、彼女自身がべたべたくっついてきて。
「うふふふ」
「……まぁ、ぬいぐるみにでもなったつもりで」
「普段はできない分、この部屋にいるときは。……人目を気にしてできないようなことをしましょうねー」

あ、なんか、外の兵士さんの固まった音が聞こえた気がした。

こういう空気だけは読めるミケは、遠い視線のまま虚ろに笑った。
もう、好きにしたらいいよ、うん。


後書き3
許可してやるぜ、好きにしな!(笑)
そう、言ったらどうするかなぁと思って(笑)

あれ、もしかしてミケに許されたことですか!?(笑)