青い水の上に、開いた花は。

ミルカからフィズの元に手紙が届いた。
それはちょっと厚めの封筒に入ったもの。
その厚さを見て、苦笑する。
どうやら、また遠くへ出向いたらしい。

彼女は義母から頼まれて、または自分の意思でヴィーダを離れて遠くへ行くことがある。
そういうときの手紙は、ひどく、厚い。

「今回は、どんなところへ行ったんだろうね」
魔術師ギルドの配達で届いたその手紙を持って、公園の木陰で広げる。
小さいながらも噴水や池、遊歩道などがあるこの公園は、町外れにあってもなお、地方とは比べ物にならないほど整備されている。
夏の日差しを避けて、わざわざ池の近くを陣取ったものの、今日の日差しは強い。
眩しさに目を細めながら、丁寧に一枚一枚読んでいく。
……また、リュウキュウとは遠いところへいったものだ。
苦笑しながらフィズはその手紙を抱きしめる。
本当はそうしたい恋人の代わりに。

ふと、目に入ったのは、水の上に咲く白い花。
日差しを受け、いっそう鮮やかに白く、しろく。
その水の中でしっかりと根を張り、まっすぐにその身を天に伸ばしている。
空と水の間で、青をまとって揺れていて。
綺麗だと、思った。

ああ。
そっとフィズはため息を漏らし、そして思う。
恋人にそっくりだと。
折れそうに見えても、まっすぐ前を見詰めて目標に向かって伸びていく。
白い服と、空と水の青の少女に。

「……早く、会いたいね」
そうフィズは呟いて、立ち上がる。
「……しばらくは、手紙とこの花で我慢するから……」

それからしばらく。
天気のいい日には、公園の水辺で読書をするフィズの姿が見られたとか。

おしまい。

言い訳
えー。
思っていた花は、カラーです。
でも、見つからないので名前は挙げないことにします。
あの花、水の中に咲くわけじゃないと思ったな……(笑)
いいや。アバウト最高。

相川和泉

相川さんからずいぶん前にいただいていたまま載せていなかったフィズミルです。リュウキュウって書いてあるってことはニライカナイの頃ですね。今更ですが、水辺に咲くカラーっぽい花というと水芭蕉でしょうか。あれも水辺というか湿地ですが。そういう凛としたイメージを持っていただいていることは素直にうれしいですね(*´‐`) 相川さんありがとうございました!