「せめて、ここまで堕ちてくればいいのに」
「あら」
きょとんと顔を覗き込まれて、うっかり口に出したことを知った。
「なんでもありませんっ!」
「きゃ、ミケさん、それはどういう意味ですか?ねぇねぇ」
「どんなって」
この、凄く嬉しそうな顔が、どれほどむかつくのか、自分の語彙で思いつく限りの言葉を並べても、説明できまい。
「ええと、魔法の腕がミケさんと同レベルまで堕ちれば良いんですか?」
「なんですか、その激しく腹の立つ表現」
「えー、違うんですか?」
「誰がそんなことを願いますかっ!」
それだけは反論できる。
「上にある物を引きずり下ろして何の意味があるんです。自分であなたを超えて立たない限り、あなたより上に立ったところで、何を誇れるんです?」
誰に恥じることなく、まっすぐに。
そんな風に生きられるように、努力している、つもりだ。
「……じゃあ、どういう意味で?」
「どういうって」
ん?と先を笑顔で促されて、口元が引きつった。
「内緒ですv」
「ミケさん、可愛くないですー」
「うるさい」
らしくないとは思ったが、目の前の人を真似て、玉砕した。……意味もなく、恥を増やした気がする。
「分かりました、ミケさんの頭のレベルに合わせてお話ししてあげます」
「もっと腹が立つんですけど!」
「じゃあ、私は何を堕とせば良いんですか?どこに堕ちれば良いんですか?」
ねぇ?と聞かれて、ため息。
「落とし穴?」
「別にミケさん、堕ちているように見えませんけどねぇ?まだ、魔法で埋めちゃったりもしていませんよ、今日は」
「じゃあ、そうなんでしょうよ」
「訳が分かりませんよー」
「僕だって、よく分かっていませんよ」
「はい?」

多分、表現としては堕ちるとか、はまるとか、溺れるとか。
落とし穴や底なし沼よりもすごくたちの悪い感情じゃあないかな、と。

そう思ってみたら、とても落ち込んだ。

「うう、こんなはずじゃ」
「ミケさん、つまんないです、もっとリリィに意識を向けて遊んでください」
「やかましいっ!帰れー!」

頭を抱えたミケに、リリィは酷く楽しそうにまとわりついて。
その苦悩を煽って遊んでいた。

普通にざらざらセリフが出てきました(笑)「同レベルまで堕ちてあげますよー」です(笑)
ぬおお、そんな低いレベルのことがしたいんじゃないんだー(泣)
一瞬で負けても良いから、手加減しないでくれー(泣)
ギャグにしかならないので、ちょっぴりラブを盛り込みました(笑)

「君のレベルに会わせて話をしよう」はすげぇ、侮辱だと思うんですが、どうですか