「あ、おかえりなさい。どうだった?」
部屋に入ってきた連れに、笑顔を向けるリー。
「あー……ん、良かったよ」
ロッテは曖昧な表情で唇の端をつり上げた。
「……ロッテ?どうしたの?ミケとレティシアの結婚式だったんでしょう?手紙もらった時、喜んで楽しみにしてたじゃない」
訝しげに眉を寄せるリーに、ロッテは苦笑を返した。
「ん、ミケレティの結婚式は良かったよ。あのカプはホント、見てて和むよね。
懐かしい顔にも会えたし、楽しかった…かな」
言葉に反して楽しそうな顔をしていないロッテに、ますます訝るリー。
深く追求は出来ずに考えをめぐらせて…ふと、思い至る。
「…あ、あの人は来た?ええっと…ゼータ」
その名前を出した瞬間、ロッテの肩がぴくりと震えた。
思い出したことが嬉しかったのか、それには気付かず続けるリー。
「ずいぶん、あなたにアプローチしてたみたいじゃない。少し甲斐性には欠けるけど、誠実でいい人だったイメージがあるわ。あの慇懃無礼な魔族より、あたしは彼の方が……って」
そこまで言ってロッテに視線を移し、初めてぎょっとするリー。
「……ロッテ……?」
今まで見せたことのない愁いの表情を色濃く張りつけたロッテの顔を、心配そうに覗き込んで。
ロッテは、自嘲気味にふっと鼻を鳴らした。
「……死んだ、ってさ」
目を大きく見開いて絶句するリー。
「…ぇ………死んだ……って…っ、ゼータ、が…?」
おそるおそる、確認するように口にする。
ロッテはまた苦笑した。
「…アッシュく……あ、そっか、リーは知らないんだ…ゼータの、昔の仲間がね……来て、そう言ってた……」
そこで、ふっと表情を消す。
心配そうに見つめるリー。
彼女のこんな表情は……キルと対峙していた時にさえ、見たことが無かったから。
感情の一切を失くしてしまったかのような、そんな表情は。
「………はぁ……」
ゆっくりと、ため息をついて。
「リー……ちょっと、ゴメンね……」
そっと、リーの胸に額をつける。
それ以上、触れるでもなく、抱きしめるでもなく。
顔を伏せているために、ロッテの表情は見て取れない。
「……ロッテ…」
リーは痛ましげな表情で、そっとロッテの肩に手を乗せた。
顔を伏せたまま、再び自嘲気味に鼻を鳴らすロッテ。
「……こんなコトになるから、ヒトを遠ざけてたってのにさぁ……ざまぁないね……」
「…ロッテ…」
「…もーちょっと先だと思ってたんだけどなぁ……あっけないよね、ヒトなんてさ…」
その感情には覚えのあるリーが、表情を引き締める。
「……彼に…出会わなければ良かった、と思った……?」
ぴくり、とロッテの肩が震える。
長い沈黙。
リーは根気よく、ロッテの返事を待った。
「………わかんないな…」
掠れた声で、つぶやく。
「……ゼータと会わなかったボクってのが…なんか、想像つかないや……」
「ロッテ……」
リーは泣きそうな表情で微笑んだ。
「…きっと、その言葉を聞いて、ゼータも喜んでるわ」
「そかな……」
まだ顔を伏せたまま、へへ、と力無く笑って。
「リー…ゴメンね。もうちょっとだけ、このまま…いいかな」
「…ええ。今日は…ね」
まだ顔を伏せたままのロッテを、リーは優しく抱きしめた。

キミが生きてた証を、ボクに刻み付けられたら、ホントは良かったのかもしれない。
こんなカタチで終わっちゃったのが、やっぱりちょっとだけ悔しい、かな。

だから。

忘れないよ。
キミと過ごした一瞬の、何千倍もの時間を、これからボクは生きていく。
だけど、キミのことは絶対に忘れない。

絶対に、ね。

“Absolute”2006.6.27.KIRIKA thanks to TERU!

ということで、お返しです(笑)
てるさん的にロッテのリアクションは書けないっていうことで、ロッテがあんな感じで終わってますが、ロッテが書いてくれってうるさいので書きました(笑)
それなりに、それなりなんですよ?(笑)ゼータさんが求めるものとは違うかもしれませんが(笑)
「Absolute」は「絶対」の意味です。こんな小学生みたいな言葉、こんな曖昧なヤツがそうそう使う機会はありませんよー(笑)ということでvありがとうございましたー、お納めくださいませv